第15話:世界で唯一の究極のガイノイド。
マリアはガイテック・グローバル社の研究室に運び込まれた。
幸いにも体には傷一つなく異常も見られなかった。
しかし未だに昏睡状態が続いていて専門分野の人たちによって脳の検査が行われた。
その結果・・・マリアの脳は側頭部の一部に損傷が見られ、それが原因で自動的にAIを停止したみたいだった。
「自動的に?停止?・・・自分で止めたってことですか?」
「そうです、脳に損傷があった場合、基本的に自ら機能を一時停止するようになってるようです」
「普通のレンタルのガイノイドでしたら、損傷部分を交換すれば元どおりに
戻りますが、マリアさんの場合はそういうわけにはいきません」
「通常のガイノイドとは違う脳を持ってるようですね」
「しかも損傷した時、データを失わないようバックアップ機能も搭載されている
ようです。
つまり、このまま放っておいても、いずれ自分で修復して元に戻るかもしれないと言うことです」
「マリアは特別なんですか?」
「そうですね、我々のあずかり知らぬところで、改造されているようです」
「改造って・・・いったい誰が・・・」
「その件については、もしかしたら及川さんが知っているかもしれませんね」
「とにかくマリアさんの脳の一部を交換するのはリスクが大きいでしょう」
「もし、損傷部分を交換ってことになったら?・・・どうなるんです?」
「最悪の場合、あなたとの記憶は失われる可能性があると言うことです」
「あと感情を司る機能も失われるかもしれませんね」
「しかも感情機能は小野寺さんの担当ですし、そのことを会社が認めていない以上
復旧ということに関して許可はおりないでしょう 」
ってことで、マリアはいつ目を覚ますのか・・・それはマリア次第、
彼女の脳の修復力にかっかってるってことらしい。
いついつ目覚めます、ということははっきりとは言えないんだそうだ。
場合によってはこのまま目覚めない可能性もあるってことだった。
それにしてもマリアは通常のガイノイドとは違うって、どういうことなんだろう?
そのことについて俺は、及川さんに聞いてみた。
「そのことですか・・・」
「そのことは実は社外秘なんですが・・・ 」
「以前、この会社の研究室に某大学の基礎工学研究所アンドロイド学研究室って
ところに所属していた人に、中原博士という方がおりまして・・・。
当時マリアさんは中原博士のところに研究材料として預けられていたようです。
そこでマリアさんは新型ガイノイド開発のプロトタイプとして博士の研究の
粋を尽くした機能を身につけることになったのではないかと推測されます。
おそらくその時にマリアさんは他とは違うガイノイドに生まれ変わったんで
しょうね。
その後、中原博士が急遽お亡くなりになったことで、それ以上の研究は途中で
頓挫したようです。
残されたマリアさんはセクサロイドとしてガイテックの所有物となり、さらに
小野寺博士の研究によって感情を持つアンドロイドになった・・・と言うことは、
すでにご存知ですよね。
「え?及川さんはそのこと知ってたんですか?
「はい、一応研究者の動向は逐一監視してますから・・・」
「あまり厳しくすると研究の妨げにもなりますから、まあ特に治安を乱すような
研究でなければ多めに見ることもありますけど・・・」
「マリアの過去には、そんなことがあったんですね」
「それでかぎりなく人間に近いんだ・・・」
その後、マリアは会社の方針でセクサロイドとして レンタルされることに
なったらしい。
何人かの客のところで夜の世話と家政婦のようなことをしたあとモニター用に
回されてそれで俺と出会った。
だからはっきり言ってマリアはどのくらいのレベルに到達したガイノイドなのか、
中原博士亡き後、今となっては誰も知らない。
それにしてもマリアはどうなるんだろう?
このまま目覚めないのか・・・もし目覚めても俺のことを覚えていない可能性
だってある訳だろ?。
とりあえず俺は及川さんと小野寺さんに、もしマリアが目覚めたら連絡して
くれるように頼んで、マンションに帰ることにした。
ここでボ〜ッとマリアが目覚めるのを待っていても、研究所のみなさんの迷惑に
なるだけだと思った。
しかし、しかしこの時、マリアは全力で自分の損傷した箇所を修復していた。
このことは亡くなった中原博士しか知らないことだったが、
実はマリアの脳にはナノマシンが備わっていて常に自己増殖しながら、
バグがあればチェックし、損傷した部分があれば全力で修復していた。
まるで働きアリのように・・・。
ただ、誰もマリアをあなどってはいけない。
彼女は、限りなく人間に近くドジだけど愛情あふれた、すぐにエッチを
したがる世界で唯一の究極のセクサロイドなのだ。
つづく。
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