第10話:修平おやじの脛をかじる。

さて、マリアのバカ高い金額・・・頑張れば払えないこともなかったが、

それは何もトラブルやアクシデントが起きなかった場合のことであって、何か

あったら払えなくなる可能性がある。


そんなことが起きないって保障なんかないわけで・・・。

他にも光熱費や食費に着る服・・・マリアのパンツだって買わなきゃいけないし。


マリアのパンツなんか微々たる出費だけど・・・。


ベランダに干してある俺の服やマリアの服、俺のパンツにマリアのパンツ・・・。

毎日のように、なにげなく見てるけど・・・ふと思った。


人間じゃないガイノイドにパンツなんか履く必要あるのかって?

何か意味があって履いてるのか?

俺のため?・・・エッチの時の見せパン?・・・勝負パンツ?


俺の場合は汚れたりするし、汗かいたりするから洗ったり買い替えたりって

のは分かるんだけど・・・。

マリアはパンツなんか履く必要ないんじゃないか?


で、マリアに聞いてみた。

「マリア・・・君、普通にパンツ履いてるけど履く必要あるの? 」


「私にも生理機能ありますからね、それなりに・・・」

「ご飯食べたり飲み物飲んだり、そしたら人間と同じように排泄しますね、

だからね・・・履いてないと・・・ 」


「ああ、そういうことならね・・・排泄するって話、それは前に聞いた」


「それに夜は下着履いててくれた方がいいって人もいましたからね」

「そう言う趣味の人もいるんですよ」


「ん〜ま、それも分かるわ・・・俺も、どっちかって言うとそうだから」

「裸でいられるより、下着つけててくれたほうがいいもん」


「そうか・・・マリアのことは人間だと思えばいいんだ・・・」

「ガイノイドだってどこかで思ってるから、変なこと考えちゃうんだな」

「ドジなところもあるしな・・」


「ドジってなんですか・・・」

「私がなにかドジなことしました?」


「皿割ったり・・・トーストのブルーベリージャムの果実、ボロボロ

こぼしたり・・・

財布持たずに買い物に行ったり・・・ひどい時は君が作った昼の弁当、

楽しみに開けたら、からっぽだった時もあったな・・・ 」


「ああ・・・ありましたね・・・ 」


「だろ?・・・でも、そういう完璧じゃないところが人間的だって言うんだよ 」


「気をつけるね」


「いいんだ・・・逆に、俺はそういう完璧じゃないマリアが好きだから・・・」

「ドジってのは見方によっては可愛いってことでもあるんだよ」


「そうなんですか?・・・じゃ〜いっぱいお皿割っちゃお」


「ダメダメ・・・そう言うのはドジって言わないの・・・」

「だいたいさ・・・ドジなところがあるほうが可愛いでしょって、最初に

言ったのはマリアだぞ」


「あはは・・・そうでしたっけ?」


そんなたわいのない話をしてるとマリアを買おうってことを忘れそうになる。


なので、俺は次の日、あることを決行した。


俺の親父は外資系商社のCEO・・・つまり最高経営責任者。

俺は、その親父の息子・・・会社はいずれ俺の兄貴が継ぐことになってるから

俺は、蚊帳の外・・・。

兄貴は経営や営業には向いてるけど、俺はパソコンの前でちまちまやってる

ほうが性に合ってる・・・いわゆる職人肌。


コツコツやるタイプ。

だから、金を出してまで、人に習うってことが嫌い。

パソコンも独学で覚えた・・・要は、難題にひるまないこととやる気の問題。


そして、その最高責任者である親父に連絡してマリアのことを、説明して

借金の無心をした。


「ガイノイドだと?」

「ガイノイドなんか、普通レンタルだろう?」

「うちの会社にも何人かアンドロイドやガイノイドが働いてるが、みんな

レンタルだぞ 」


「それは分かるけど、マリアは特別なんだ・・・普通のガイノイドとは違うんだ」

「最初はローンで買おうと思ったんだけど・・・金額が金額だから・・・」


「いくらだ・・・」


「5,000万」


「その金を俺に出せって?」


「いや、貸して欲しいんだ・・・必ず毎月少しづつでも返すから・・・」


「お前の兄貴には、車を買ってやったり、なにかとねだられたがな・・・」

「お前は子供の頃から、なにかを俺にねだったことはなかったな」


「俺に頼み込んで来るってことは、よほどそのガイノイドが気に入ってるんだな」

「そのガイノイド、もしかしてセクサロイドか?」


「そうだよ・・・そこも特別・・・」


「なるほどな、忘れられない経験したわけか・・・分からんでもない」

「俺も若い頃、セクサロイドにハマったことあるからな・・・」

「もっとも俺の若い頃よりは今はもっと進歩してるんだろうがな?・・・」


「まあ、マリアの場合はそれだけじゃないけどね・・・」


「分かった・・・金は出してやる」


「まじで?・・・本当に?」

「ありがとう・・・かならず返すから・・・」


「もし、そう思うなら俺の会社に来ないか?」

「おまえ、大学を卒業する時、したいことがあるからって、勝手に出て

行っただろ? 」


「俺はおまえの席をちゃんと設けて待っててやったんだぞ・・・」


「今からでも俺の会社で働く気はないか? 」

「たぶん今の広告会社よりは高給取れると思うぞ」


「そしたら返済も楽になるだろ」

「今のマンションも、そのガイノイドと使ってくれていい・・・」


「どうなんだ?・・・すぐに返事をしろとは言わん・・・一度考えて

みたらどうだ・・・悪い話じゃないだろ?」

「そのマリア?・・・って子にとっても、いい話だと思うけどな・・・」


「分かった・・・会社のことは考えてみるよ」


「金は、そっくりおまえの口座に振り込んでおいてやるから、好きに使え」


「そのかわり一度、その特別って言うマリアさんに合わせろよ」

「捕って食ったりしないから・・・」


「ありがとう、父さん・・・感謝します」


ってことで、これでマリアが俺のパートナーになることがほぼ決まった。


親父には一生、頭があがらないな・・・。


で、その話をマリアにしたら、満面の笑顔で俺に飛びついてきた。


「お〜っとっと・・・待て待て待て・・・待てってば・・・」


でもって、そのまま俺はマリアを抱いたまま、ソファーごと後ろにずっこけた。


つづく。

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