笑って！マリア。〜セクサロイドだって夢を見る〜

第6話：私を泣かせるようなこと。

「俺がじいさんになるくらいの歳までローン払い続ければいいだけの話

だろ？」

「それって私を買い取るってことですか？」

「うそ・・・本気で言ってます？」

「そんなこと、リスクが大きすぎます・・・私のために借金背負うなんて

ダメです・・・」

「マリア・・・俺はここで妥協したら一生後悔すると思うよ・・・」

「まあ、真面目に働けば、充分払っていけると思うんだ」

「よっぽど俺は出世しない限り、もう一戸建ては持てないけどね」

「マリアは？・・・嫌か？」

「嫌って言うか・・・めっちゃ驚いてるし、めっちゃ嬉しいけど・・・」

「そんなこと考えてもなかったし、言ってくれた人もいないから」

「シューちゃんが初めてだよ」

「マリアの答えを聞くまで勝手に決めちゃダメだと思うから、これは

今のところ俺の中だけの決定なんだけど・・・」

「どうかな？」

「さっきはダメだよって言ったけど、どうかなって聞かれて、嫌だって

言ったら私ってよっぽどバカ女だよね・・・」

「じゃ〜いいんだな？」

「でも、将来シューちゃんに彼女とかできたり、誰かと結婚したら

どうするの？

「私はガイノイドだよ・・・」

「そうなっちゃったら人間じゃない私は、お邪魔虫になっちゃうよ・・・」

「俺は誰とも付き合わないし、誰とも結婚もしないよ・・・」

「なんでそんなこと言えるの？」

「絶対ないって言える？」

「絶対ないか？って言われると・・・」

「シューちゃんは将来、誰か素敵な女性と巡り合うかもしれないじゃ

ない・・・」

「シューちゃんから愛されなくなったら、私はどうすればいいの？」

「今は俺を信じてとしか言えないよ・・・」

「たしかに先のことは誰にも分からないけど・・・それを心配してたら、

前になんか進めないだろ？・・・」

「マリアはこのまま俺と別れてもいいの？」

「そんなの嫌だ・・・」

「間違いなく変わらないのは俺のマリアに対する思いだよ」

「俺にとってマリアは一番大切な存在なんだ・・・」

「俺はマリアと別れたくない・・・」

「だけど半年が過ぎてマリアが俺の元を去ったら、君は俺のことを忘れて、

また誰かのところへ行くんだろ？」

「そういうこと想像しただけで、俺は切なくて胸が苦しくなるんだ・・・」

「君には俺だけの彼女でいて欲しいって思ってる・・・」

「独占しようとか束縛しようとか、そういうんじゃないんだ」

「マリアが俺のところにいたくないって思うのなら、それはしかたの

ないことかもしれないけど、でもそうじゃないなら、ずっと俺のそばに

いて欲しい」

「ここは怒らないで聞いて欲しいんだけど、以前の俺は感情のない

機械の彼女を持つことには疑問を持っていたんだ」

「でも、世の中に普通に存在するアンドロイドやガイノイドを見てるうちに

そういう偏見は間違ってるって思うようになって・・・」

「だからガイノイドの女の子が家にいてくれたら楽しいだろうなって

思うようになってね・・・」

「それでマリアと暮らすうちにその考えは間違ってなかったって思った」

「そうなんだ・・・」

「マリアを見てると人間もガイノイドも同じだって思えるようになった」

「今は偏見も間違った思い込みも一切ないからね・・・」

「はっきり言うけど、俺はマリアを愛してるんだ」

「だからさ、マリアにお願いがあるんだ・・・」

「ん？、お願いって？」

「できたら君の中の封印してるって愛を、俺のために解放してくれない

かな・・・」

「で、俺を愛して欲しい・・・マリアの愛で俺を包んで欲しい」

「愛を封印してるなんて悲しいこと言わないでさ・・・」

「俺のために・・・え？・・・なになに？・・・」

「うそ・・・泣いてる？」

「だって・・・シューちゃん、私を泣かせるようなこと言うんだもん」

「そんな嬉しいこと言われちゃったら、もうどこへも行けないよ」

「どこにも行かなきゃいいじゃん・・・ずっとそばにいてよ」

「マリアに出て行かれちゃったら、俺には膨大な借金しか残らないよ」

「分かった・・・私、シューちゃんを信じる」

「一生シューちゃんについてく・・・」

「だからもう、他の人のところへも行かない・・・」

「じゃ〜・・・封印してる俺に対する愛を早く解放しなくちゃ・・・」

「そうですね、これでシューちゃんと愛のあるセックスできますね」

「そうだね、最初に誘われたセックスとは違うかな・・・」

「私の心を愛で満たしていいんですよね・・・」

「そうだよ・・・ねえ、愛を解放するのに、どのくらい待てばいいの？」

「すぐです・・・ちょっと待ってね」

「・・・はい・・・今、解放しました・・・」

「私の愛が、今、私の心の中に満ち溢れて抱えきれないくらい広がってます」

「はや・・・」

「シューちゃん・・・愛してる」

「うん・・・俺も愛してる・・・その言葉を言って欲しかったんだ」

「私も言えてよかったです・・・」

「じゃ〜さっそく支度しますね」

「えっ？」

「シューちゃん・・・私と愛のあるセックスしますよ・・・」

「どうしてもセックスに持ち込みたいんだな？・・・」

「はい・・・私、シューちゃんだけのセクサロイドですから」

「とにかく、そこをクリアしないと、何もはじまらないと思いません？」

「私、今、超嬉しいですから・・・最高にがんばりますからね」

「言っとくけどさ・・・セックスするだけのために・・・」

「私を引き取った訳じゃないんでしょ？・・・分かってますって」

「さ、まずは、一緒にお風呂に入らなくちゃ」

「え？一緒に風呂に入るのか？」

「今日まで、別々に入ってたじゃん？」

「今までは今まで・・・もう恋人同士だよ、私たち」

「これからはいつも一緒」

「恋人同士なのに、なに遠慮することあるんですか？」

「いい？一緒に、お風呂入りますよ、シューちゃん」

「ん〜まあ、理屈だけど・・・」

つづく。