第5話:愛は封印してるんです。
「だからね・・・したいって思ったら言ってくださいね」
「え?何を?」
「セックスですよ、セックス・・・」
「あ〜そこへ持っていくか・・・」
「でもそれは言っただろ?」
「うん、分かってる」
「私を汚したくないんでしょ?」
「私のこと大切に思ってくれてる気持ちはとっても嬉しい・・・」
「でも、私がシューちゃんに抱いて欲しいって思っても、シューちゃんが
私を抱いてくれないと、わたしがここにいる意味ないんですけど・・・」
私はあくまでセクサロイドですからね・・・」
「私がお願いしても、それでも私とセックスしたくないですか?」
「俺に抱いて欲しいって思ってるのか?」
「そうですよ・・・それってどういう意味か、分かる?」
「私がシューちゃんに好意を持ってるってこと・・・好きだってことだよ」
「私から求めてセックスしたいって思うこともあるんだよ」
「そうなんだ・・・」
「ほんとはね、オーナーさんに対して好意的感情は持っちゃいけない
ことになってるんですけどね・・・」
「私がシューちゃんを好きになっちゃったんだから、しょうがないんですけど
でも本気で愛しちゃったら不幸でしよ・・・」
「半年もしたら、別れちゃうからね・・・」
「でも一緒に暮らしてるかぎりは、完全に自分の気持ちを封印しちゃうのは
あまりに悲しいでしょ?
だから好きってくらいの好意は持ってもいいって思ってる、でも、それ以上の感情は封印してるの・・・」
「だから、愛って感情は持たないようにしてるんです・・・」
「封印って・・・ガイノイドに愛なんて感情あるんだ・・・」
「悲しいこと言うんですねシューちゃん・・・」
「ガイノイドにだって愛はあるよ・・・人間と同じ感情持ってるんだよ」
「昔のガイノイドとは違うんだよ・・・人を愛して胸が苦しくて、切なくなる、寝ても覚めても相手のことが愛しくてたまらない・・・」
「それって愛じゃないの?」
「私、本当は自分の感情を解放したくてしょうがないの・・・」
「本当の気持ちを言うと、私シューちゃんを愛しちゃってるからね」
「でも、がんばって愛するって感情は表に出さないように努力してる」
「そうなんだ・・・なんだか、少し寂しいな・・・」
「愛する感情を持ってるのに、愛し合ったら不幸になっちゃうって悲しいな」
「俺はマリアから愛されないのか?」
「そう言われちゃうと私も悲しくなっちゃう・・・」
「でもそれって私の一方的な感情だからね・・・」
「いくら私がシューちゃんを愛してるって言っても、シューちゃんが
私を愛してくれなかったら、私の片思いで終わっちゃうでしょ、そんなの余計
悲しくなっちゃうからね・・・」
「だから私は自分の感情をシューちゃんに押し付けたりしないです」
「もし、シューちゃんが私のこと迷惑だって思ったら、いつでも返品して
もらってもいいですから・・・」
「って言うか・・・して欲しくないけど・・・」
「いっぱい、しゃべったね・・・マリア・・・」
「え?」
「マリアの気持ちはよ〜く分かった・・・」
「分かった上で言うけど、マリアの俺への気持ち片思いで終わらせたくないな」
「俺はマリアから愛されなくても、俺はポスターの中のマリアを見た時から、
君にハマっちゃってるからね」
「寝ても覚めてもって言ったけど・・・今の俺がそうだから・・・」
「俺がマリアを好きでいたらいいだけの話だし・・・マリアを愛することは
俺の勝手・・・自由だろ?」
「だけどマリアの言う通り、お互い好き同士になっちゃったら別れる時辛いのは
確かだって俺も思うよ」
「だからさ・・・俺は半年後にマリアと別れなくちゃいけないことに
気持ちが折れそうなんだ・・・君がいなくなると思うとため息ばかりだよ」
「ごめんね・・・私が余計なこと言ったせいでシューちゃんを悩ませ
ちゃって・・・」
「いいんだよ・・・でも、これがきっかけで決心がついたよ・・・考えてること
がはっきりした」
「マリアと別れなくて済むようにするから・・」
「そんなことできるんですか?」
「俺がじいさんになるくらいの歳までローン払い続ければいいだけの話
だろ?」
「それって私を買い取るってことですか?」
「うそ・・・本気で言ってます?」
「そんなこと、リスクが大きすぎます・・・私のために借金背負うなんて
ダメです・・・」
「マリア・・・俺はここで妥協したら一生後悔すると思うよ・・・」
つづく。
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