第3話:心の渇きを潤して。
「ってことで支度しますね」
「え?なに支度って・・・飯でも作ってくれるの?」
「なに、言ってるんです・・・セックスですよ、セックス」
「そのために私を引き取ったんでしょ」
「ノルマ果たさないとモニターさん失格ですよ」
「まじで言ってる?」
「真っ昼間から?・・・」
「昼も夜も関係ないでしょ・・・」
「いやいや、いくらセックスに特化してるって言ってもいきなりってのは
どうかな・・・」
「僕の気持ちは無視してるよ、マリア」
「たしかに君は俺のタイプの子だけど、セックスだけが目的で君に来てもらった
わけじゃないからね」
「俺はさ・・・欲求不満の塊じゃないから・・・そういうの無理になくても
いいんだ」
「それより俺のために、飯作ってくれて、洗濯掃除・・・身の回りの世話」
「あとは話し相手・・・ふたりでテレビ見て笑って・・・マリアとの温もりのある
暖かい生活が欲しいだけなんだ・・・」
「どうしても君のプライドが許さないっていうのなら、まあハグとかキスくらいは
してくれていいから・・・」
「本当にいいんですか?・・・遠慮しなくていいんですよ」
「・・・もしかして私に気を使ってくれてます?」
「ん〜なんて言うかな・・・本当いうと俺は、君を汚したくないんだ。
「何、中学生みたいなこと言ってるんだって思うかもしれないけど、
男の欲求を満たすだけのために君が汚れていくのは見たくないから・・・」
「綺麗な体のままいてほしんだ」
「まあ、なんて人?」
「今時、そんなこと言う人いるんですね・・・男性はみんなセックスのこと
しか頭にないのかと思ってました・・・」
「・・・・・・え?」
「おいおい・・・なに?・・・どうした、なんで泣いてるんだよ」
「今まで、私のことなんか考えてくれる人なんていなかったです・・・」
「あんまり、いい人んちにいなかっただね・・・
「レンタルですし、私のこと電化製品かなんかだと思ってるんですよ、みんな」
「そうなんだ・・・、俺はマリアのこと電化製品だなんて思ってないからね」
「ありがとうございます」
「私、今までいろんな人のところで働いてたんですけど・・・」
「みんな君のことをセクサロイドとしてしか扱ってくれなかったんだ」
「そうです・・・私がセクサロイドだからしかないのかもしれませんけど・・・」
「でも、手荒く扱われたら、やっぱり嫌ですよね・・・」
「そうだね、人間もガイノイドも同じなのにな・・・」
「そうか・・・それで君は人間に慣れてるんだ・・・」
「じゃあ人生経験豊富だろうから、いろんな話聞かせてもらえそうだね」
「けどさ・・・なにも泣かなくても・・・」
「そうなんだ・・・君は泣くって感情まで持ってるんだ」
「俺はマリアに対する認識を改めなくちゃな・・・」
「君をすぐに抱きたいって思わない俺は変わってるのかもな・・・」
「マリアには体の欲求を満たすより、心の渇きを潤して欲しいって思ってる」
「及川さんには、ちゃんとセックスしてますって報告しとけばいいだろ?」
「分かりました・・・できるだけご希望にそえるようがんばります、私」
「うん、でも、がんばりすぎないようにね」
「ほら、おいで・・・」
そう言って俺は、マリアを抱きしめた。
「俺、ハグはいっぱいしてほしいかも・・・」
「はいっ」
「それとチューもですよね」
そう言ってマリアは俺の唇にチュッてキスした。
「それよりさ・・・俺、腹減ったんだけど・・・」
「あ・・・今すぐ昼食の支度します・・・なにか食べたいものあります?」
「特にはないけど・・・」
「じゃ〜適当に作りますね」
そう言うとマリアは小ぶりのトランクからエプロンを取り出した。
「大好きなシューちゃんのために腕を振るいますね」
まあ、美味いか不味いかは知らないけど、作ってくれるって言うんだから
俺としては、自炊しなくていいから大助かりだよ。
そしたらば、さっそくやらかした。
「きゃっ」って声がしたかと思うと、皿の割れる音がした。
「ごめんなさい・・・お皿割れちゃった」
「割れちゃったじゃなくて、割っちゃったんだろ?」
「あのさ・・・ガイノイドもそういうドジなことするんだね?」
「私、人間に限りなく近ずけて作られてますから・・・」
「ちょっとヌケてるところがあると思いますけど大目にみてくださいね」
「こび売ったり・・・ウソついたりもしますから・・・」
「それってガイノイドに必要なことなのか?・・・」
「人間みたいに感情的にならないで、失敗もしないところがウリなんだろ?」
「何もかも完璧ってつまんないじゃないですか?」
「少しくらいドジなほうが可愛いと思いません?」
「それを自分で言うか?」
「でも、そんなことも言えるんだ・・・君って、マリアって面白い・・・」
俺はガイノイドって生き物をバカにしていた。
まさか、ここまで人間に近いところまで進歩してるとは思わなかった。
俺の紳士的な?って言うか、彼女にとった態度でマリアは一気に俺を
好きになったみたいだった。
つづく。
近況ノートに3DCGのマリアが見れます。
https://kakuyomu.jp/users/amanotenshi/news/16817330653692235537
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