第4話 冬の大三角

 あくる日の早朝4時。

 私は待ち合わせ場所の駅で、オゼルと落ち合った。


「おはよう。急に呼び出してごめんね」

 と彼は申し訳なさそうに言った。


 私は首を振った。

「いいよ。でも珍しいね、オゼルが山登りに誘ってくれるなんて」


「そうだね。普段なら絶対、山なんかに登らず家でゆっくりしていたいんだけど」

 と彼は苦笑してから、イタズラっぽく目を輝かせた。

「今日は見せたいものがあるんだ」


 そんなわけで私は、何を見せてもらえるのかとワクワクしながら彼について行った。


 てっきり徒歩で山頂まで行くのかと思い込んでいたが、オゼルは途中までケーブルカーで行くつもりだった。


 考えてみれば当たり前だ。いくら近所の山とはいえ、この雪道を初心者二人が日の出までに踏破できるわけがない。


 ケーブルカーの車両から窓の外を覗く。空はまだ満点の星空だ。


「綺麗」

 とつぶやいた私。彼は「ホントだね」と吐息を漏らした。


 星空を見て何か思い出したらしく、オゼルは不意に私に尋ねた。

「そうだ、冬の大三角って知ってる?」


「うーん。知らないかも」

 私は素直に首を横に振った。


 彼は言った。

「地球から見える星座だよ。地球から見ると、シリウス、プロキオン、そして僕たちのが、大きな三角形に見えるんだ」


 アルザス人がいう「太陽」とは、もちろん毎日アルザスの地平線から昇ってくるベテルギウスのことだ。


 太陽が地球からどう見えるかなんて、考えたこともなかった。

 彼と話すといつも新しいことを知れる気がする。


「いつか地球に行って見てみたいね。冬の大三角」

 私は言った。


 心の底からそう思っていた。

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