第3話 まだ秘密

「山頂から朝日を見るなんて、きっといい思い出になるわ。ぜひ行ってきなさいな」

 リビングにいた母にオゼルの話をすると、彼女は予想に反して私の申し出を快諾した。


「え、いいの」

 私は父を振り返った。彼もまた、普段なら反対しそうなものなのに

「行ってみてもいいんじゃないか? せっかくの機会だし。それに、これで最後になるかもしれない」

 とただ穏やかに頷いた。


 思いがけず後押しされて戸惑った。


 それに、父の言葉が引っかかった。

「これで最後って?」

 私は聞き返した。


 しかし父は、うしろめたいような顔をするだけで答えてくれない。

 困って母に視線を向けると、彼女も同じ表情をしていた。


 私は二人の反応を不思議に思った。だけど、問いただそうとは思わなかった。

 訊いても答えてくれないような気がしたのだ。


 代わりに私は言った。

「ありがとう。じゃあ、行くって返信してくるね」

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