第三十六話 恋華と桐花
「ほんとに可愛いなー、ハルカくん! もー大好き! 一生推せる!」
クラン〈スターライト〉の事務所、休憩室にて。
〈スターライト〉のリーダーであり、
ここ最近の彼女は、ずっとこんな感じだ。
「ねぇ
「またその話ですか、
「あのクリスティナ・マクラウドが男だと言うのなら男なのでしょう。ですから顔を合わせることがあったとしても、抱きついたりキスしたりなんて絶対にダメですよ。わかっておられますか?」
「えー、抱きつくぐらいはよくない? いいでしょ?」
「よくないです!」
〈
A級の探索者で、クラスは〈魔導王〉。
チャンネル登録者数は雷電刀華を上回る五五〇万人で、四天王最強。
そこらのアイドルなど相手にもならない美貌を持っているが、活発な性格と堂々とした振る舞いのおかげで、どこかボーイッシュな印象を受ける。
配信者以前に、一人のアーティストとして老若男女から支持を受けており、それが五五〇万という登録者数に繋がっている。
そんな彼女がこの世でもっとも好きなものは、可愛い女の子である。
そして今夢中なのは〈ハルカ・ミクリヤ〉であった。
もっとも、ハルカは女の子ではなく男の娘なのだが。
「まったく・・・・・・厄介な奴です、ハルカ・・・・・・」
画面の中のハルカを切れ長の目で睨みつけながら、桐花は唇を噛む。
その結果、今では〈スターライト〉のナンバーツーとして
「刀華に
刀華の名が出たことで、
雷電刀華は
〈
それも、絶対に勝てない恋敵だ。
「あまり刀華さんに迷惑をかけてはダメですよ、
もっとも、刀華の人柄はよく知っている。
優しく穏やかで、
刀華になら
いやむしろ、刀華以上に
最近はそう思うようになった。
自分でも気づかないうちに、
だからこそ、そこに現れたハルカという少年の存在が許せない。
百合の間に挟まる男は死ぬべきである。
古事記にもそう書いてある。
「とにかく、見た目はどうあれハルカの中身は男性なんですから、不用意な行動は避けてくださいませ。女の子扱いしてべたべたするなんてもってのほかです」
「えー」
「えーじゃありません」
不満そうな顔をする
物怖じしない性格であり、圧倒的な体力と行動力で、思い立ったことは大抵実現させてしまう。
だからこそ、これほどの成功を手にしているのだが、そのバイタリティのせいで思わぬ方向に暴走してしまうこともある。
それを御するのが副官たる自分の役目だ、と
彼女が美少女に絡むノリでハルカに絡みに行ったら、自分がそれを止めなければならない。
「あんだけ可愛ければもう女の子扱いでいいと思うけどなー・・・・・・っと、なんだろ」
不意に、
見てみると、探索者協会からメールが来ている。
「なになに、Bランク
「応援要請ですか。行かれるおつもりで?」
「うーん、どうしよっかな。ちょっと遠いけど、協会が困ってるなら行ってあげようかな。配信のネタにもなりそうだし」
スマホで詳細な情報を確認しながら、
と、そこへさらに、もう一通のメッセージが届いた。
それを確認した
「
「どうしたのですか、突然」
「今、刀華から連絡来たの。刀華も〈ダーク・ネスト〉に来るんだって!」
「ああ・・・・・・承知しました。すぐに準備します」
親友の刀華と共闘できるとあれば、この喜びようも理解できる。
だが
「それでね、ハルカくんも一緒だって! やったね、ようやく生でハルカくんが見れるよ!」
「なんですって・・・・・・」
なんだか、嫌な予感がしてきた。
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