第十五話 〈ルーインド・キングダム〉について語るスレ
二人はクリスティナの前で一通りスキルを披露し、またそれ以外の特技や能力についてもいろいろと話し合った。
その結果──
「やはり料理配信、これしかないな。
特技は料理、という遼の自己申告に従い、記念すべき初配信の内容が決まった。
となると、次はシオンだが。
「お前の仕事は、しばらくは遼のサポートだ。
「了解です、ボス。料理なら任せてください」
「わかりました。でも、なんというか・・・・・・見切り発車ではないですか?」
往来能天気な性格であり、配信の内容が得意分野の料理ということもあって、遼は楽観的だ。
しかしシオンは、ほとんど計画らしい計画がないことが不安なようだった。
「最初に完璧な計画を立てたところで、その通りには絶対にいかん」
クリスティナはそう言った。
「配信者というのは、その場のアドリブやリスナーの反応に応じて配信を進めていくものだ。その予測不能さが、配信をする側にとってもリスナーにとっても楽しみなのだ」
「アドリブ・・・・・・あまり、自信がないです」
「そういらぬ心配をするな」
クリスティナはシオンの肩を叩き、ニヤリと笑った。
「仮に上手くいかず放送事故になったとしても、それはそれで面白いものだ!」
まったく慰めになっていなかった。
ところで、一方。放送事故と言えば──
〈ルーインド・キングダム〉での事件から命からがら生還した浅村正樹は、自宅でスマホを握りしめ、食い入るように画面を見つめていた。
表示されているのは、匿名掲示板の『ルーインド・キングダムについて語るスレ』だ。
XXX 名無しの探索者さん
この前の
XXX 名無しの探索者さん
マジ。ニュースにもなってるよ
XXX 名無しの探索者さん
俺現地にいた! すごい遠くからだけど二人が戦ってるとこ見た!
XXX 名無しの探索者さん
俺も。ボスがボーリングのピンみたいにオークの群れ吹っ飛ばしてて草生えたわ
XXX 名無しの探索者さん
陛下の技もヤバかったな。もうすぐ特級ってのも納得
XXX 名無しの探索者さん
裏山死刑。まさかCランク
XXX 名無しの探索者さん
誰か動画撮ってた奴いないの?
XXX 名無しの探索者さん
いないよ陛下は救援に来ただけで配信中じゃなかったし
XXX 名無しの探索者さん
現地に一人くらい配信者いなかったのか?
XXX 名無しの探索者さん
SEIGIが配信してたけど途中でドローンぶっ壊れてボスと陛下は映ってない
動画ももう削除されるし
XXX 名無しの探索者さん
SEIGIって誰? 有名な人? 聞いたこと無いけど
XXX 名無しの探索者さん
強気な感じのイケメンで女性人気ある配信者。だけどオークから逃げ回ってるシーン自分で放送しちゃってイメージ崩壊中
XXX 名無しの探索者さん
あーそりゃご愁傷様
XXX 名無しの探索者さん
今調べたが登録者五万人超えてたのに一気に三万まで落ちてて草
XXX 名無しの探索者さん
ざまぁwwwwwイケメンの不幸で飯が美味いwwwwwwwwww
XXX 名無しの探索者さん
SEIGIって高一らしいね。ちょっとかわいそう
XXX 名無しの探索者さん
調子乗ったガキが配信中に自分のマヌケ晒したわけか。よくある話だな
XXX 名無しの探索者さん
命があっただけめっけもんよ。これで身の程知ったろ
XXX 名無しの探索者さん
お前ら高一に厳しすぎだろwwwwwwww確かにざまぁだけどwwwwwwww
「・・・・・・くそっ、ふざけんなよ・・・・・・」
好き放題にコメントするネットの住人たちに、正樹は唸るように呟いた。
あの時、自動追従モードに設定していたドローンは、オークの群れから半狂乱で逃げる正樹の姿をしっかりと配信していた。
そして──
『だっ、誰か! 誰か助けて──ぐえっ!?』
正樹が無様に転び、オークに追いつかれそうになったところで、突如としてドローンが破壊され配信が終了している。
自分の目でしっかり見たわけではないが、何が起きたか推理するのは容易だった。
あの時自分を助けた、例のクラスメイトの男子(名前はまだ知らない)。
彼がオークに放った攻撃スキルが、ドローンを巻き込んで破壊したのだ。
おかげで〈SEIGI〉はそれ以上の無様を晒さずに済んだ。
もちろん、動画は削除済みだ。
命を助けられたことといい、本来なら感謝すべきところではあるが──
「絶対に許さねぇ・・・・・・」
あんな地味で目立たない陰キャに、明らかに自分より格下の男に、本来なら自分に対等な口を利く権利もない奴に助けられた。
その事実が正樹の心を屈辱と怒りで燃え上がらせた。
しかもそいつは、シオン・スプリングフィールドと二人で
状況的に考えて、彼らがパーティを組んでいたのは間違いない。
つまり自分が先に唾を付けていた少女を横からかっさらっていったのだ、あいつは。
それを考えると、感謝する気など一ミリも起きない。
さらにしばらくスレを読み進めると、件の男子生徒の目撃情報と思われる書き込みもあった。
XXX 名無しの探索者さん
そういやあそこにいた探索者に珍しい武器使ってる奴いなかった?
XXX 名無しの探索者さん
珍しいってどんなの?
XXX 名無しの探索者さん
なんかデカい包丁みたいなやつ
XXX 名無しの探索者さん
デカい包丁ってなんだよwwwwwどこのメーカーがそんなん作るんだwwwwwww
XXX 名無しの探索者さん
そりゃ〈虎ノ巣〉以外ありえんだろ
XXX 名無しの探索者さん
確かに〈虎ノ巣〉なら作りそうで草
XXX 名無しの探索者さん
いたいたなんかデカい包丁みたいな剣振り回してる男の子
横にいた女の子がスゲー美少女だったから覚えてるわ
XXX 名無しの探索者さん
俺も見た気がする。その二人ボスと陛下に声かけられてた
XXX 名無しの探索者さん
マジか。なんて声かけられてた? もちろん聞いてたんだよなお前? 早く吐けよ
XXX 名無しの探索者さん
食いつきエグくて草
XXX 名無しの探索者さん
俺もめっちゃ知りたい早く話せ
XXX 名無しの探索者さん
いやそんな近くにいたわけじゃないから聞こえなかったよ
でもたぶん危ないところだったねーみたいな話じゃない?
XXX 名無しの探索者さん
まあたぶんそんなとこだろ
XXX 名無しの探索者さん
それだけでもクッソ羨ましいわ
「マジかよ。あいつ、陛下に声かけられてたのか・・・・・・くそぉ」
屈辱と怒りに加えて、嫉妬の炎が正樹の中で燃え上がった。
自分もあの
きっとそうなっていただろう。
いや、それどころか、自分の実力と人気を考えれば、あの場でスカウトされていたかもしれない。
だが現実には、自分は二人の目にも入らなかった。
それを言うなら、シオン・スプリングフィールドにも相手にされなかった。
代わりに良い思いをしたのは、奴だ。
「絶対に許さねぇ・・・・・・!」
正樹は再びそう呟き、そして、月曜日に奴に会ったらどうやってこの屈辱を晴らすか、入念な計画を練り始めた。
────
あとがき
正樹をどれくらいヒドい目にあわせるか悩みます
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