第4話 決めた。
何を言ってるんだ?
神がいて人間の運命を決めてるってか? バカじゃね? そんなに他人に興味を持つ奴なんて、この宇宙にいるわけないだろ。神がいても、自分の幸せばかり考えてるよ! あれ食おーとか、酒のもーとか、恋しよーとか。
存在ってのは自分が1番大切なんだろ。だから、厚顔にもずっとこの世にいんだよ。まず自分を優先してそれから他人。ははっ、当たり前のことを哲人の言葉のようにいう世の中。可笑しいなー。
あ、明日、保健室登校か。ガッコどんくらい行ってねえっけ。かったり。
うお、あの女の足元にあるトランク、かっこよ。木製なのかな。うわ、いいもん持ってるなー。車輪がついてんな。ありゃ後付けだな。妙にそこだけ新しい。
よく見りゃ、あの女の喋りを聞いてる奴らそこそこいる。んー、10人ほどか? 調子こいてんだろなー。あたしは人気者! 井の中の蛙! 10人? は、寂しいね! オカアのツィッターのつぶやきのいいねでも、そんくらいいくぞ。あんなつまらん女でも人の集まるsnsは、社会がどれだけ寂しいかの縮図だね。
そうだ、ひとつこの女を論破してやろうか。言ってることを聞いて、つまんねーことだったら攻め立ててやろう。
そう思ってあたしは、聴衆の中に入り込み、1番前に出た。
そこで女と目が合ってしまう。そいつは無邪気に笑顔を作った。眩しすぎるかわいさ。けっ、何でも与えられた者はいいよね。それが運命だって、あんたは言うんでしょうよ。
まわりから大切に扱われるやつは、落ち着きをぶっこいてられる。余裕しゃくしゃくと世を渡っていくよね。
雑に相手されるやつは、懸命に相手の顔色を窺うんだよ。あたしの兄貴のようにな。そんなことしても、相手はますます増長するだけなのに。
くだらねえ、くだらねえ、世の中、くっだらねえ!
「コーヒーでもどうですか?」
女が、あたしの目の前に水筒のコップを差し出していた。あ? 何、その余裕。
「いらねえよ」
女は、そうですか、と手を引っ込めた。さっとしゃがみ込み、コップをトランクの上に乗せる。
あたしはイライラしてきた。
「さっさと続きを話せ」
女はまたこちらに笑顔を向けたが、あたしは睨み返してやった。微笑みかければそれが返ってくるとでも? ざまあみろ、そうそう思い通りになんかいかねえんだよ。
「みなさん、先のものとこれから語るいくつかの詩は、わたしがわたしなりに頑張って難しい言葉を使って考えた詩です。以前にわたしの詩を聞いてくださった方の中にはその雰囲気の違いに違和感を持たれる方もいるかもしれません。これもまた、わたしの一面なのです。無理していますが」
そう言って女が笑うと、聴衆の幾人かも笑った。ああ、常連とかいるわけ。
詩、ね。1番読まねえ本だな。明日、図書館の返却日か。ガッコ行かねーでおこか。
女が詩を詠みはじめた。
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