晴輝



~晴輝~



 神野ゆいの家のソファーで晴輝と二人、テレビを見ながらくつろいでいた。


「俺、明日から親父の政党に行ってくる」


 もうすぐ大学を卒業する晴輝は、政治家になるために上条太郎から色々と教わることになっているらしい。


「せっかく経済の勉強したからさ、本当は一回社会に出てみたかったんだけどね。まあ親父んとこで政治の勉強しながらゆっくり考えるよ」


「晴輝が政治家かぁ」


 ゆいは嬉しそうにしていた。


「まだわかんないよ。三十歳になるまでに決める」


「うん」


 晴輝がゆいの手を握る。


「ゆいは俺が政治家になるの嬉しいの?」


 晴輝が甘える。


「晴輝が何になろうが何しようが嬉しいよ。晴輝は晴輝だもん」


 晴輝がゆいの肩に顔をうずめる。


「はぁ~」


「ん? どうしたの?」


 ゆいが驚いて聞く。


「俺、ゆいのことめちゃくちゃ好きだなぁって思って」


「なに? 急に……」


「急にじゃないよ。いつも思ってる。毎日毎日、会うたびにどんどんどんどん好きが膨らんでくる。俺こんななのに、ゆいはいつも冷静でさ」


「冷静なんかじゃないよ」


 晴輝が顔をあげてゆいを見る。


 ゆいも晴輝の方を向く。


「頑張って冷静になろうとしてるの。晴輝といるとドキドキして自分が自分でなくなっちゃうみたいで……。こんな感じ初めてで、ただ晴輝に嫌われないようにって……」


 ゆいの顔が赤くなってゆく。


「……晴輝のことが好きすぎて怖いんです」


 晴輝はゆいを抱き締めた。


「何で怖いの?」


「晴輝と会えなくなったり、晴輝が離れていっちゃうこととか考えると怖いんです。自分の感情がおかしくなっちゃうんです」


「……あは」


 晴輝が笑った。


 ゆいは顔をあげて晴輝を見た。


「何で笑うんですか?」


「だってゆい、急に敬語になってんだもん。テンパったら敬語出ちゃうんだなぁって思って。あは、可愛いなぁって」


 ゆいはまた顔が真っ赤になった。


「む、無意識です」


「ほらっ」


「あっ」


 二人で顔を見合わせて笑った。


「あ~、ほんっとにもう。ゆい、俺言っただろ。ずっとそばにいるって。ゆいが嫌がっても俺ゆいのそばから離れないから。覚悟して」


 晴輝がゆいの顔を両手で包み込む。


「わかった?」


 ゆいは黙ってうなずく。


「俺のこと、好きすぎておかしくなるの?」


 またゆいがうなずく。


「じゃあさ、お互いにもっといっぱい好きって言うことにしよう。そしたら少しは楽になるかもしれな……」


「好きっ」


 ゆいが晴輝に抱きついた。


「好きっ。好きっ。晴輝が好き」


「あは。俺も好きだよゆい。大好き」


 晴輝もギュッとゆいを抱き締めた。





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