健太郎と佑斗



~健太郎と佑斗~



 日曜日の午前、「聞くだけ屋」に小学生の健太郎と佑斗が遊びに来ていた。


「ここに来る途中に拾いました」


 二人は公園の片隅で段ボールを見つけ、そのまま持ってきたと言う。


 神野ゆいが中を覗くと可愛らしい子犬がかまって欲しそうな顔でこちらを見ていた。


「まあ。かわいい」


 思わず顔が緩んでしまう。


「ボスが笑ってる」


「笑ったな」


 健太郎と佑斗も嬉しそうだった。


「どうするのですか、この子は」


 神野ゆいが子犬を抱きながら聞いた。


「俺んちはペットは無理です。マンションなんで」


 健太郎が言った。


「俺のとこも多分ダメです。お母さんがアレルギーなんで」


 佑斗も残念そうに言った。


「じゃあどうするつもりですか。当てはあるのですか」


 神野ゆいは子犬にベロベロと顔を舐められている。


 健太郎と佑斗は顔を見合わせる。


「こいつ、ボスを気に入ったみたいですね」


「気に入ってますね」


「えっ」


「ボスお願いします」


「ここで飼ってやって下さい」


 健太郎と佑斗が頭を下げた。


「無理ですね。このビルも動物は禁止だったはずです。私の家もマンションですし」


「そんなぁ」


「マジっすか」


 二人は肩を落とす。


「でも、もらってくれる人が現れるまで、ここに置いておきましょう。それでよろしいですか?」


「はい」


「よろしいです」


 二人は笑顔で喜んでいた。


「この子の名前は何にしますか」


 神野ゆいが二人に聞く。


「そうだなぁ。どうする? 佑斗」


「うーん。俺達二人で見つけたから……」


「ケン、ユウ、ケント、ユウ、タロウ……」


「ユウタロウ!」


「おう、ユウタロウだ」


「ユウタロウ、おいで」


 佑斗が呼び掛けるとユウタロウが駆け寄って行った。


「おお、ユウタロウ。お前も気に入ったのか」


「よかったな、ユウタロウ」


 二人は楽しそうにユウタロウと遊んでいる。


 ユウタロウの毛は短く尻尾の先まで真っ黒だった。


 つぶらな瞳が可愛らしく人懐っこいので、すぐ飼い主も見つかるだろうと神野ゆいは思った。





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