第5話

「とりあえず、中に入るか?」


 勇司がそう言うと三人は頷いた。


「荷解きが全然終わってなくて汚くて悪いけどな」


 三人をリビングに案内した。


☆☆☆


「そのために私たちが来たんだよ!」

「そうですよ。三人で頑張って終わらせて一緒にお風呂に入りましょう」

「うん。一緒に入る」

「ちょっと待て、なぜか三人で入ることになってないか?」

「だって、ルナちゃんだけ一緒に入るなんてズルいじゃないですか。私も一緒に勇司君と一緒にお風呂に入りたいです」

「一緒に入りたい」


 ルナのことを見ると「ごめん。言っちゃった」と舌を出した。


「別にいいんだけど……四人ではさすがに狭くないか?」

「それはそうですね。では、こうしませんか? 一人ずつ代わりばんこで勇司君と二人っきりでお風呂に入る。時間は十分くらいでどうでしょう?」

「賛成!」

「私もそれでいい」


 夢子の提案にルナと雫は大きく頷いた。


「勇司君もそれでいいですか?」

「三人がそれでいいなら俺もそれでいいよ」

「では、決まりですね」

「そうと決まれば、まず誰が勇司と一緒にお風呂に入るか決めるためにじゃんけんでもする?」

「そうね。相手がルナちゃんと雫ちゃんでもここは絶対に譲れないわ」

「私も負けない」


三人での勇司との一番風呂をかけての勝負が始まった。

三人での勝負だから何度かあいこになると思っていたが勝負は案外あっさりと決まった。


「ほんと夢子って大一番の勝負に強いよね」

「強すぎ。悔しい」


 じゃんけんに負けて悔しがるルナと雫。

 つまり勝利したのは……。


「私の勝ちですね。そういうことですので、私が一番最初に勇司君と一緒にお風呂に入ることになりました。よろしくお願いしますね」


 満面の笑みを浮かべた夢子だった。

 ちなみに、二番目が雫で、三番目がルナとなった。


「分かった。それにしても相変わらずじゃんけん強いな。夢子は」

「ね。こういう大事なじゃんけんで夢子に勝てた試しが一度もない」

「夢子。豪運すぎ。ズルい」


 夢子は昔からじゃんけんが強かった。

 特に勇司が関わるようなじゃんけんをする時は、ほとんど負けなしだった。


「日頃の行いかですかね。それから私が一番勇司君のことを好きだからかもしれません」

「勇司を好きな気持ちだったら絶対に私が一番だから」

「いや、私が一番勇君のことを好き」


 三人ともが私が一番勇司のことを好きと言い合って誰も一歩も引かない。

 挙句の果てに、三人が一個ずつ勇司の好きなところを言い始めて、それを聞いていた勇司はどうしていいのか分からず、ただただ顔を真っ赤にしていた。


「あの……その辺でやめてほしいんですけど……」

「今日の勇司なんてめっちゃカッコよかったんだから……」


 ルナは勇司のことを無視して話を続けた。 


「さっとパンチを交わして足を引っかけて相手をこけさせて、次にまた俺のルナに手を出したらこれくらいじゃ済まないからな、なんて言ってさ、もうキュンキュンしちゃったよね!」

「それはカッコいいですね。その話を聞いているだけで私もキュンキュンしてしまいます」

「私もそのセリフ言ってもらいたい」

「ちょっと待て! そんなこと一言も言ってないんだが!?」


 助けたのは事実だが、なぜか勝手にキザなセリフが追加されていた。


「あれ? そうだったっけ?」


 とぼけるルナ。


「変なセリフを追加するなよ」

「え~いいじゃん~。次もちゃんと守ってくれるんでしょ?」


 ルナは言いながら勇司に迫った。


「それは守るけど……」

「ちゃんと守ってね。私の王子様♡」


 そう言ったルナは勇司の頬にキスをした。


「これは今日助けてくれたお礼。次は唇にしてあげる」


 少し頬を赤くして恥ずかしそうにそう言ったルナは「お風呂に入る準備してくる」とリビングから出て行った。


「勇司君。私たちのこともちゃんと守ってくださいね?」

「守って」


 夢子と雫が勇司に一歩近づいて言った。


「言われるまでもなくそのつもりだよ」

「ありがとうございます。頼りにしてますね」


 微笑んだ夢子は「私もお風呂の準備をするために一度家に戻りますね」とルナの後を追いかけて行った。 

 雫もすぐに「私も準備してくる」と小走りに夢子の後を追いかけて行った。


☆☆☆

 

 

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