第3話 生の終焉
全ての生は何れ消える命と共に必然としての終焉を向かえるが魂である影は終わることのない変改を廻るのみである。生は有限の時の流れの中で活き影は無限の時の海で漂う。
影の器である生の終焉は3道と云われる。
一つ御定めとして向かえる『寿命』
一つ生が自らの感情で行う『終止符』
一つ影自らが行う責の捨棄『別離』
寿命は老衰、病死、自然死、殺人、事故死など他動による死であり終止符は感情の流溺により生自らが行う自動による死である。
別離は影が自らの責を捨棄し生との結びを絶ち切る死である。
影と生は常に同体であり互いの右手人指し指を黒き糸で結ばれている。この黒き糸を影自らが絶ち切ること即ち別離であり、黒き糸が切れしとき即ち生の死である。
別離は無論闇掟での禁定行為であり必ずや罰せられる。影の受罰は支配者である闇が定め闇が伝え闇が囁く。闇合のなか闇がより色濃く佇む処に罪という名の重い扉が音もなく開かれた。
『影4219よ罪の扉より中に進め』
闇にあの囁きが重く流れ無数の気配が頷き影4219が動く。不可視の無明の闇の中、影4219が罪の扉の中に消えた。
『闇掟を破りしもの罪の扉より入り再び重き生を負う』
あの囁きが流れる。闇に潜む無数の影が囁きを追い無音で唱和する。
影が担うべき責は同体としての生の寿命の全うである。影は魂として肉であり感情である生を操り終止符となる自動死を妨げ寿命を向かえることのみが必然の責である。
責の全うをできぬ影が受ける罰は『重罰』と『責罰』の区分がなされる。影が行う別離は闇の意思に背反する重きものであり重罰という。また生が行う終止符を止め得なかった影は責の全うを外避した責罰を受ける。
闇合により重罰を受けたのは影4219のみであり責罰を受けた影は影2491と影1942であった。
『影2491と影1942よ前に出でて罪の扉より中に進め』
再びあの囁きが流れ2体の影が罪の扉に消えていく。罪の扉の中に消えた3体の影が受ける罰など知るものはいない。闇以外は・・・・・
さらに寿命の責を全うした影たちは闇の囁きにより何処かに消えていく。
『皆、責の全う苦労であった』
闇に開いた罪の扉を通りし3体の影。重罰の影4219の罰とは何か。責罰の影2491と影1942はどこへ消えたのか?
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