第5話 到着
新幹線から降りてバスに乗り、坂を登った先。
二人の目の前には立派な旅館がある。
「ふぅ…やっと着きましたねぇ」
「ほんとだよ、というか道中色々ありすぎだ」
確かにそう頷いて思い返してみる
クレーマー騒ぎに偏頭痛で吐きそうになっていた紫月。
それに何故か子供に懐かれ道中ずっと遊んでやっていた。
「まあ、いいんじゃ無いんですか?たまには…こういう騒がしいのも」
坂の脇の紅葉を見ながら胡春が呟く。
その表情はどこかを懐かしむような表情だった。
「……俺は静かな方が好きだ」
「そうですか、私は賑やかなのも好きです」
どうでもいい、そう言って紫月は先に歩き出した。
「あ、待ってくださいよ〜!」
胡春も慌てて荷物を持ち紫月を追いかける。
そんな二人を真っ赤な紅葉が見下ろしていた。
とある作家と役者の事件簿 なつめオオカミ @natsumeookami
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