第4話 クレーマー

「おお〜美味しそうな駅弁ですね!」

「やけにテンション高いな……」

新幹線の車内で駅弁を開き思わず声を上げると隣から低い声が聞こえてくる。

隣に座っている紫月を見ると五月蝿そうに目を顰めていた。

「あ、低血圧なんでしたっけ?ふみましぇん」

「食べながらいうな」

一応謝罪をする。

駅弁を食べながらふと窓の外を見た。

「……せっかくの旅行なのにこうも天気が悪いと気分も上がりませんね」

「全くだ、お陰でこっちは頭痛だよ」

「片頭痛持ちでしたっけ大変ですね」

自分も片頭痛を持っているが強めの薬を飲んだお陰かあまり痛さは感じない。

彼も意地を張らずに病院に行けばいいのにそんなことを考えていると声が飛んできた。

「おい、そこは俺の席なんだが⁉︎何人の席に座ってるんだ!」

最近流行りのクレーマーとやらか?声の出所を探すと自分たちの後ろの席がターゲットになっているようだ。

子供連れの母親のみ……気が弱そうに見えるし狙いやすかったのだろう。

男の暴言を聞いているのも退屈凌ぎになるかも知れないけれど流石に親子が不憫だし隣の紫月の形相が鬼のようになっているので仲介することにした、

「あの〜すみません。そう当たり散らすよりもお手元のチケットを拝見した方が早いのでは?」

「ああ?なんだテメェ⁉︎」

この世にこれほどDQNのテンプレートのような人間がいるのだと軽く驚く。

「おや、これは失礼……私は探偵業を営んでいるものですよ」

「探偵ダァ?今時そんな奴らいるかよ⁉︎」

随分と頭の硬い人だなこの世も末か…

しかも、酒臭い…よっているなこれは

「いるんですよ。ここにね、それよりもチケット見てみたらどうです?早くすみますよ?」

「女が俺に指図すんじゃねぇよ!ふざけてんのか?」

自分は男なのですが…と半ばキレそうになりながら言い返そうとした時、また、別の声がかかった。

「それはないんじゃないんですか?」

「ああ?」

声の主を見るとそこにはガタイが良い男性がいる。

「その方は男性ですし、仮に女性だったとしても今の発言はどうかと思います。冷静になってチケットを確認してはどうでしょうか?」

一発で自分の性別だと見抜いた男は務めて冷静にキレている男に忠告する。

流石に若くてガタイの良い男に言われては反抗できないのか不満げにチケットを見せびらかした。

そろそろ後ろを向いている体が限界になってきたので早く終わらせてほしい……

「どうだ!ここは俺の席d「ぶっふ…」

思わず吹き出してしまった。

「ふふっ……ふふ……貴方それ隣の車両ですよ……?ふふ…」

「は、はぁ?そ、そんなはず」

「隣の車両ですね、そのチケットは」

「………ッチ!」

散々怒鳴った挙句、間違えたのが余程恥ずかしかったのか赤面しながら隣の車両に行こうとした手をガタイの良い男が掴んだ。

「ちょっと待ってください!あれだけ言っておいて謝罪もないんですか⁉︎」

「……っち!悪かったよ!これで良いだろ⁈」

そう言い捨てて隣に行こうとした男に一応声をかけておく

「貴方のチケットここの後ろの車両ですよ〜!前ではないです!今度は席を間違えないでくださいね〜!」

大きめの声で言ったせいか車両のあちこちから控えめな笑い声が聞こえた。

さらに赤くなって男は早足に後ろの車両へと去っていった。

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