第3話 招待状
「それは?」
ある日の昼下がり相談所にある休憩ブースで紫月が声をかけた。
「招待状ですよご丁寧に本名で…これは貴方の分です」
「ん…」
何処か鬱鬱とした雰囲気を感じさせながら封筒を渡す胡春。
渡された封筒は古びた茶色で少し湿っている。
表面には篤捻紫月様。椛館御招待状と書かれている。
中を見てみると日時と旅館の場所が書いてあったが手書きなのか名前だけ掠れて読めなかった。
「椛館…?聞いたことない旅館だな…」
「石川県の能登島にある旅館ですよ。旅館街とは外れたところにあり静かで人気らしいです」
そう言った胡春の手には携帯があり椛館について調べていたようだ。
「へぇ…」
「あ、こんな噂もあるみたいですね」
「どれ?」
差し出された画面を見ると何処かのサイトのようだ
「復讐の館?なんでまた見る限り評判は良さそうだが…営業妨害か?」
「いえ…昔ここに泊まった10人のツアー参加団体が一人を残して全員死んだ事件があったみたいですね。それから暫くはツアー自体は無かったんですがここ最近は再開したみたいです」
引き続きサイトを見ながら話す胡春。ミステリーツアーみたいですよと少し楽しげだ。
「お前ミステリー好きだしよかったじゃないか」
「それはそうですよ。何たってミステリー作家ですから」
得意げに言う胡春を流し目に見て紫月は再び招待状を見た。
よくあるコピー用紙に書かれたそれは必要以上のことは書かずに椛館にてお待ちしております。としか書かれない。
「せっかく雰囲気ありそうなのにコピー用紙っていうのが勿体無いですよねぇこの招待状」
「言ってやるなよ、お前は参加するのか?」
勿論と言いカレンダーへ目をやる胡春、スケジュールの調整をするためにどこかへ電話をかけ始めた。
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