第9話

 私は笑う。

 少年と母親に。

 店内を訪れた姿に。

 データにある一番の笑顔を向ける。

 店員と話す母親を横目に少年は私に手を振る。


 私は買われる。

 私は生体認証を行う。

 私の新しい主を登録する。

 母親と少年の声紋を主と認める。

 主以外の命令に従う必要がないと入力する。


 私は連れ出される。

 少年の左腕に巻かれる。

 少年の生体電流を記憶する。

 15歳のお祝いなのと母親は言う。

 母親と少年の早口の言葉は理解が難しい。

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