第8話

 私は手を振る。

 3週間ぶりの少年。

 ショーケースの前に座る。

 少年は私に何か小声で語りかける。

 厚い防音強化ガラスが少年の声を遮断する。


 私は困惑する。

 ショーケース前の人集り。

 少年の姿を見ないまま90日が経過。

 私の中に穴が開いたような異常状態を感知。

 エラーを発見すべくデータチェックを行うが原因不明。


 私は沈思黙考する。

 生物はいつか死を迎える。

 少年は既に生存していない可能性。

 人間の平均寿命から考えれば可能性は低い。

 正解が導けないまま円周率の計算は1000京桁を超える。

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