第7話

 私は笑顔を浮かべる。

 500日目の犬と少年。

 犬の健康状態悪化を観測。

 電光掲示板で少年に伝える。

 防音ガラスの向こう側で少年が何か呟く。


 私は困惑する。

 犬と少年がいない。

 571日通い続けた犬と少年。

 毎日飽きずに何時間も座っていた。

 昨日も一昨日も一昨昨日も姿がなかった。


 私は沈思黙考する。

 人間は飽きる生物である。

 飽きるという状態は理解不能。

 しかし少年は飽きて来なくなった。

 私はそう結論付けて円周率の計算を再開する。

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