第27話 しばらく1人で考えたいんだ
母から昔の話を聞いていて一つ疑問に思っていたことがわかった。
「東京のおばあちゃんが椎名姓ってことは、本当の父親のお母さんってことなんだよね?」
「ええ。
東京のおばあちゃんの家が、あなたの本当のお父さんの実家なの」
「おれ、入院した時におばあちゃんが来てくれて、その時に聞いたんだ。
『成瀬さんとの関係について、何か知ってない?』
って。
だってただの施設へ寄付してくれるだけの関係でこんなにしてくれるわけないからさ。
そしたらおばあちゃん、こう言ったんだ。
『おばあちゃんが聞いてるのは、かいちゃんのお父さんが創新会の人にとって、とても大切な人だったらしくて、それで今でも仲良くて、繋がってるって聞いてる』
って。
それは父さん、落合のことだと思って聞いてた。あれは、椎名の本当の父親のことだったんだね。
よくおばあちゃんが入学式とか来てくれるたびに、墓参りしてからきたとか言ってたのは、僕の父親に報告してくれてたんだね。
…………………
へー、そうだったんだ。
そしてそれを知らないのは俺だけだったんだね」
「海斗、海斗あのね?」
母が話しかけてきたが俺は遮った
「雄一郎さん、この家は僕がいつ来てもいいように借りてくれてるって言ってたよね?ならしばらく僕、ここに住んでもいいよね?
頭が混乱してる。
しばらく1人でかんがえたいんだ。
いいよね?」
「あぁ、お前が居たいだけここに住めばいいよ」
「というわけだから母さん、帰って。
今はひとりで考えたい。
今はただただほっといて欲しい」
俺は立ち上がり、奥の部屋へ入ると扉を閉め、そこにあったベッドに横たわった。
そしていつのまにか眠ってしまっていた。
いい匂いがして目を覚ます。
台所へ向かうと、雄一郎がかわいい花柄のエプロンをしてオムライスを作っていた。
「お!海斗おきたか!もうすぐ夕飯だからな!お前の好きなオムライス、練習したんだぞ!うまそうだろ!ほら座れ、一緒に食おうぜ!」
俺は周りを見渡す
「あー、佐和子さんなら帰ったよ。
しばらく海斗をお願いしますって言ってな」
俺は椅子に座り、オムライスを食べ始める
「おい!俺が座るまで待てよ!あとちょっとだから、な!?待てよー?」
雄一郎の反応が面白くて俺は笑った。
「笑ったな?ヨシヨシ。それでいい。
考えることたくさんあるだろうけど、とりあえず笑っとけ!そしたら幸せがやってくるから。な」
「雄一郎さん、雄一郎さんはあの時からずっと俺を守ってくれようとしてたんだね」
俺は子供の頃の雄一郎が言った約束を思い出していた。
『俺はお前のヒーローだから、
つらい時や悲しいとき、
ここぞって時は助けに行くよ。』
「当たり前だ!俺は決めたことは有言実行する男なんだよ。カッコいいだろ?惚れるなよ」
俺は笑った。そして思い出し、カバンの中を探し始める。
「もう惚れてるよ。
そうだ雄一郎さんこれ。
良かった。まだ日付けは変わってないな。
お誕生日おめでとうございます。
俺からのプレゼント!」
「俺に?海斗から?嬉しいなー、なんだ?開けてみるよ」
雄一郎は包みを開け、箱を開いた。
中にはネックレスが入っている。
「あの日、僕を助けてくれたあの日、
雄一郎さんの首に光るものが見えたんだ。そのキラキラしたものがずっと印象に残ってて。だからまたつけて欲しいなと思って……。どう?気に入った?」
雄一郎さんは、僕を抱きしめて
「ありがとう、ずっとつけるよ!ありがとう!」
そして、首からさげてみせてくれたのでした。
「ずっとって、手術とかでは外してよ。
ていうか雄一郎さん、帰らないの?」
「帰る?どこに?」
「え?家にだよ。あるでしょ?」
「実家か?あぁ、あるよ。
けど俺はお前を守らないといけないからな。
だからお前がここに住んでる間は俺もここに住むよ」
「え……おれ1人がいいんだけど……」
「え?そんなこと言われてもな、それはダメだな。俺が心配で夜も眠れない」
「いやいやいやいや……」
「いやいやいやいや……」
そう言って2人で笑った。
この夜から、俺たちは、入院以来の2人の同居生活が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます