第22話 真実を知るものの訪問

 どれくらいの時間泣いたのだろう。

 泣き疲れ、放心状態となった俺は、雄一郎の車に乗り近くのマンションへと連れてこられた。


「ホットミルクでも飲むか?」


 雄一郎がマグカップを渡してきた。


「ありがとう。ここは?」


「俺の家だ。病院に近くて便利だからここに部屋を借りてたんだ。

 別に家が遠いわけじゃないけど、いつお前がきても休めるようにと思ってな、借りてたんだよ」


「おれのために?」


「あぁ。お前は危なっかしいからな。いつまた入院するかわかんないだろ?

 それに……」


「それに?」


「いつでもお前がこの地に帰って来ても良いように、休める場所を作っときたくてな……」


「…………

 雄一郎さんはやっぱり何か知ってるんだね、俺のこと。俺のなにを知ってるの?

 

 そもそも雄一郎さんは何者なの?

 雄一郎さんがやっぱりあの時の、迷子の俺を救ってくれたヒーローなの?


 俺はずっと、ずっとさがしてたんだ。子どもの時に困ってる俺を連れて交番まで連れてってくれたヒーローを探してたんだ。あの時のお礼が言いたくて、また会いたくて。

 雄一郎さんと会ってから、あの時のヒーローが雄一郎さんなんじゃないかってずっと思ってた。

 だからそうならそうと言ってくれよ、そして教えてくれよ、あの日、あのときあの場所に、雄一郎さんはなんでいたの?俺もなんであそこにいたの?何か知ってるなら教えてよ」


「ヒーロー……かぁ

 嬉しいなぁ、そんなふうに俺を思ってたなんて。

 海斗、確かに迷子のお前を助けたのは俺だ。

 それは間違いない。

 なぜあそこに俺とお前がいたのか……その説明は俺から話すよりも適任者がいるんだ。その人はもうすぐここにくる。だからそれまでもう少しだけ待ってくれ」


「ここに?誰が?」


 質問への答えはなく、静かな時間だけが過ぎた。

 マンションへきて、1時間が経過したとき呼び鈴が鳴った。


ピンポーン……


 雄一郎は玄関へ迎えに行く。

 心臓がうるさいほど鳴っている。ドキドキが止まらない。


   誰が……誰が来たんだ?

   その人は何者で、俺の何を知ってるんだ?




「海斗!海斗!」


 母の佐和子が入ってきた。

 母は俺を抱きしめてきた。


「母さん?なんで?なんでここに?」


「雄一郎さんからあなたが交番に着いたと連絡もらって……。

 もうあなたにはちゃんと話さないと行けないと思って母さん、急いできたのよ」


「どういうこと?

 そう、そうなんだよ、俺、子どもの時に行った交番が見つけれたんだ。けど、俺は東京に住んでたこともないのに、しかも東京のこんなところで、何が何なのかさっぱりわかんないんだ……

 それに、変な光景も今日はみたんだ。車の事故のような……。

 母さんわかる?知ってる?ねぇ、どう言うことなのか教えてよ」


「海斗、とりあえず座って落ち着いて話したらどうだい?佐和子さんもどうぞ」



おれたち3人はソファへ座った。


「雄一郎さん、この度は約束を守ってくれてありがとうございます。

 おかげで真実を話す覚悟が十分に出来ました。海斗へ私の口からきちんと本当のことを話すことができます。

 今まで約束通り待ってくれてありがとう。


 海斗……

 これから話すことは事実です。

 お母さんがずっと、ずっと隠していたことを話すわ。

 いつかは言わないといけないのはわかってた、けど今日の今日まで言えなくてごめんなさい。

 けどわかって欲しい、話すには勇気が必要だった。だからこんなにも時間がかかってしまった。けどそれはあなたを失いたくないからで、あなたを悲しませたくなかったから。

 お母さん、あなたに嫌われたくなかったの。

 だから……ごめんなさい。


 わかって欲しいなんてそれは傲慢ね……。

 これから話すことを聞いて、あなたが今後誰とどう生きるのかはあなたに任せます。

 お母さんは、何も言えない……。言う権利なんてないから……


 そのかわり、話すと決めたからには真実を全て話すわ。だからしっかりと聞いて欲しい。

 覚悟はいい?」


 俺は大きく頷いた。

 大きく深呼吸を一つしてから、母はゆっくりと話し始めた。

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