第19話 関係性?

「まちなさーい!アキラくーん!」


 母の叫び声で目が覚めた。

 今日もみんな元気そうだ。


「行ってきます」


 俺は身支度を済ませ、用事を頼まれないようにそそくさと家を出て駅に向かう。


 朝の駅は通勤通学の人たちでごった返している。

 家から雄一郎のいる病院まで、どんなに急いでも電車を乗り継ぎ片道約2時間。


「やっぱ乗り継ぎ時間がロスだよな。車……いるかな……」


 車で通えば高速道路を使うと1時間半もかからず病院までつく。

 車窓を眺め想像する。

 

   突然の訪問をどんな風に驚くかな?

   どんな風に喜んでくれるだろうか

   あぁ、早く会いたい!




「あのぅ外科の成瀬雄一郎先生は今どこにいますか?」


総合受付けで聞いてみる。


「成瀬医師ですか?

 申し訳ありません、成瀬は本日手術日となっていますので、外来の受付はしていません」


「そうですか。手術日かぁ……

 いまも手術室ですか?それとも医局?」


「?申し訳ありません、そこまではこちらでは把握できていません。もしよろしければ外科に連絡してみましょうか」


「あ、いやいいですいいです。すみません」


 外科に聞いたりなんかしたら自分が今ここにいるのがバレてしまう。

 そそくさと総合受付から離れる。が、行くあてなどない。雄一郎のスケジュールも医局にバレずに聞く手段もない。

 どうしようかとここで考えていても、その間に知り合いの看護師が通らないとも限らない。もし会ってしまったら、やはりせっかくのサプライズが台無しになってしまう。


   さて、どうしようかな……



 総合受付ならきっと教えてくれて大丈夫と思っていた俺は一気に途方に暮れた。



「海斗……くん?」


後ろの方から声がしたので、恐る恐る振りかえる。



「あ、会長!」


 そこには、創新会会長、成瀬伸次郎とその秘書らしき人たちがいた。


「やはり海斗くん本人でしたね。

 どうしたんですか?今日はまたどこか具合でも?」


「いえいえ、具合はいいですよ、大丈夫です」


「ん?もしかして、今日が7月21日だから来てくれたのかな?」


「はい……そうです」


「それはそれはありがたいね。

 それで雄一郎さんに会えたのかい?約束はしてるのかな?」


「驚かせようと思って約束はしてなくて……突然きた自分が悪いんですが、手術日みたいでどうしようかと」


「なるほど。それはそれは困りましたね。

 それじゃ雄一郎さんの予定を調べてもらおうかね。

 どうかな、雄一郎さんの時間がわかって会えるようになるまでよければ、僕の部屋に来ませんか?

 海斗くんとはまたお茶したりご飯など一緒にしたいとおもってたんだ。どうかな?」


「お邪魔じゃないですか?」


「なーに、私の用事など何とでもなるから大丈夫ですよ。それよりもなかなか会えない海斗くんの方が優先です」


「それではよろしくおねがいします。僕も助かります」


 願ったり叶ったりだ。

 俺たちは伸次郎の部屋へと向かった。


 伸次郎の部屋つまりは会長室は緑がたくさんあって日当たりもよく、とても清々しい部屋だ。


「お母さま、佐和子さんだったかな?お元気ですか?

 そういえば施設は満員なのにまた新しい方を迎え入れてるとか?」


「はい、おかげさまで母は元気です。今朝もその新しい子を怒鳴りながら追っかけていました。

 アキラっていうんですけどね……13歳の元気な奴で今までは他の施設にいたんだけど、ま、そこでは手におえなくて追い出されたところを母が引き取ったんです。その子の家庭にはどうやら本当の両親はいないらしくて……母曰く、甘えたいけど甘えられなかったからその反動だろうと。しかし今までにないほどかなり手を焼いてます」


「……そうですか。本当の両親かぁ……

 そのアキラくん?はでも、施設に来て甘えられてるんですね。

 落合さんの力で家庭の幸せというのを感じてもらえるようになるといいですね。


 ところで海斗くん、その……ずっと聞きたかったことがあるんだけど聞いてもいいかな?

 海斗くんから見て雄一郎さんってどんな人?

 海斗くんの前ではどんな人なのかな?」


「え??」


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