第3話 11月の暖かい日に……
高校2年の夏休み
京介は学生でありながら開業した。父親の遺産を使って資産運用というのをしていたらしいのだが、それが跳ね上がってとうとうマンションを購入したというのだ。同じ歳の京介から聞いたそんな話は、なんだか次元が違いすぎて現実味を俺はしなかった。
俺はと言うと、家の施設でアルバイトとして働いていたが、やはり家ということもあってかサボることも多かった。だが、京介の仕事に対する思いを聞き、自分なりに向き合い、仕事を自分も頑張ろうという思いがやっと芽生え、嫌だった苦手な仕事へも挑戦するようになっていた。
一緒にいつもいる京介の影響でどんどん自分が進化していくのがわかっていた。
このままこうやって
どんどん大人になっていくんだろうな。
俺たち
ずっと一緒にいれるよな?
俺たち
そんな俺たちの関係を脅かす存在が現れた
11月
木枯らしが吹き、寒くなってきたこの季節。
寒い日が続いていたがこの日は珍しく晴れていた。
学校が終わり、いつものように京介と駅まで一緒に帰ろうと話しかけた。
「帰ろうぜ」
「海斗、今日は先に帰ってていいよ。俺ちょっと用事あるから」
用事…?
おれは何か嫌な予感がした。
もちろん京介にだって用事がある日だってある。だが、毎回なんの用事があるのかちゃんと話してくれるのだが、今日は、何も言わなかった。
ひとり駅まで歩きはじめる
嫌な予感がした胸がざわつく
一歩、また一歩あしを運ぶが、いつもより何倍も重く感じる
帰ろう!
何度も思うが、足が思うように動かない
そして、
ついに足が止まった。
うつむき、考える。
どうしたらいいのかを
考える
振り返る
校舎が見える
俺は校舎に向かって走り出した
教室に戻るも、そこに京介はいなかった。
窓の外の見える範囲を探す
が、京介はいない…………
焦っていた
なぜだかわからないけど、焦っていた
ひとけのないところを考えて、京介を探し始める
走る
走る
ひたすら走って探した
あまり使われない階段を通ってみる
声が聞こえた
京介の声だ!
俺はそっと近づいた……
「若林くん、だから付き合ってください」
案の定だ。
隣のクラスの女子から告白をされてる
興味ないだろうから断るよな?
今までだって、告白されたことはあったがいつも断っているのを知っている。
だから今回も京介はきっと断る
「いいよ。わかった。じゃ付き合おう」
!!!!!
え………?
京介からその女子のことなど一回も聞いたことがない。だから、今回も絶対断ると思っていた……。
なんで?なんで??
なんで告白をOKしてるんだ?
京介、何言った?いま
わかってるのか?そんなこと言ったら
その女子と付き合うことになるんだぞ?
お前、その女子のこと好きだったのか?
そもそも知ってたのか?その子のこと
お前は女子に興味ないんじゃないのか?
俺は目の前が真っ暗になるのを感じた。
寂しさに襲われ、悲しくなったきた。
そして、その日から俺と京介の2人の時間は変わるのだった…………。
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