第33話 無言な危険な男

「すみません。せっかくの家族団欒が僕のせいで……すみません……」


「いいんだよ、気にしない気にしない。

 僕たちはトーイの味方だよ。

 ただ、僕たちのせいで君が責められるのは、申し訳ない。

 すまないね、トーイくん」


「十維さん、私たちの滞在は1週間しかないけど、協力はなんでもするからね。

 イギリスに帰ってからも、できることは何でもやってあげるからね」


誠母もとても優しい。


「そうだ、トーイ!

 Maxと2人でイギリスに来ませんか?イギリスでは同性婚は認められています。

 2人で移住しませんか?」


「ダディ、僕たちはまだ始まったばかりなんだよ。

 将来のととか、そういうことは2人で考えていくよ。

 それに……彼らも十維の大切な家族だ。しっかりと向き合っていくよ」



   なんていい家族なんだろう……

   高柳の家もこんなならよかったのに……



  僕たちは食事を済ませ、マルコを出る。


「トーイ、家はどこですか?」


「僕たちは同じマンションだよ。向かいの部屋だ。」


 誠が答える。


「じゃ一緒に帰りましょう。」


「一緒にって、ダディたちは自分たちの家に帰るんじゃないの?」


「そのつもりだったけど、Maxもブンもマンションに帰るなら僕たちもマンションに泊まりたいな。それに、トーイとまだまだ話したいしね」


「じゃ僕の部屋でみんなで寝ようよ!

 兄貴たちは、まだ予定があるらしいからさ。

 今夜は僕と一緒に寝ようよ。ね?ダディ、マミィ」


ブンが気を遣ってくれた


「じゃそうしようか……

 もう少しトーイと話したいけど今夜はブンと3人で仲良く川の字で寝ましょう!」


父、母、文は先に帰って行った。



「乗ってください。」


3人を笑顔で見送った後、誠が十維を誘導する。

顔がとても険しく、声もいつもより低い。


  怒っているのか?

  うちの家族にあんな扱いをされたからか?

  そうだよな…… 怒るよな、普通……


 車は走り出す。

 無言の車内……

 誠はこっちを見ようともしない……


 気まずく重い空気が流れた。



   誠は怒っている……

   こんなとき

   なんと声をかけたらいいのだろうか……


 車は突然地下駐車場に入った。



「降りてください」


 車を降り、誠が行く方へと歩いていく。

 ホテルの地下駐車場だ。


「待っててください。」


 誠はさらっとフロントへいき鍵を受け取る。


「行きましょうか」


 エレベーターに乗る。

 押された回数は高層階。


 エレベーターの中でも何も言わない誠……。

 ロイヤルスイートを、用意されていた。部屋に入っても何も言わない。

 俺はソファへ座る。誠がシャンパンを開けて持って来た。


   謝るべきか?感謝を述べるべきか?

   どうする?オレ!



 対応に困り、外を見る。

 この部屋からレインボーブリッジがよく見えた。


「誠!見て!夜景がすごい綺麗だ。

 この部屋はすごいな。ベッドまでも距離が物凄いある。

 こんな大きな部屋、高かっただろ?そんなとらなくてもよかったのに。どうしたんだ?でもありがとう。

 とても綺麗だ」


 窓際へと向かった。


 明かりが消され、ダウンライトだけにされた。


「お、おぅ……ありがとう。

 こうすると益々夜景が綺麗だな。ほら誠も見ろよ!すごいぞ!」


 大きな窓の外にレインボーブリッジが綺麗に輝いて見えた。


 誠はゆっくりと俺に近づいてきた。


 そして


 オレの左手をもち、片膝をついて座った。



   ん?なんだ?



「十維さん……」


   !!!!

   こ……これは……!!


「ま、まこと……あの……えっと……」


「十維さん!」


「は、はい!」


  なんだ?なんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る