第30話 『誠』の意味
平日のローテーションとは異なり金曜、土曜、日曜は、誠は出勤するも、問題なければブンに店を任せ、すぐに帰ってくる。
そして俺たちは誰もいない、誰も来ない誠の家で2人きりの時間を満喫する。
新婚生活か?といわんばかりの甘い時間をすごす。
深夜、俺は目が覚めた。
誠が俺を強く抱き寄せ、頭にキスをしては緩め、また強く抱き寄せ頭にキスをすることを繰り返していたのだ。
「んーー… 誠、どした?悩み?ん?どした?」
「あぁごめんなさい。起こしちゃいました?
すみません、ちょっとシュミレーションをしていたんです。」
「シュミレーション?なんの?」
「今度、父と母が帰国するので、十維を紹介するシュミレーションをやってたんですよ。」
!!!!! 初耳だ!
誠はイギリス人の父と日本人の母から生まれた。子供の頃は両国を行き来して生活していたが、母方の祖母が調子悪くなり、仕事のある父以外は、誠が中学生の時から日本で生活をしたと言う。
その後、祖母が亡くなり文が大学生になるタイミングで母は、父のいるイギリスへと帰ったと聞いていた。
「お父さんとお母さん日本に来るのか!? いつ?」
「来週の日曜です。大丈夫ですよ。十維には迷惑をかけないから」
「迷惑ってなんだよ……そんなこと言うなよ。お前の家族だろ。
で、どういう風に紹介するつもりなんだ?」
「僕の名前の"誠"はね、誠実の誠ですよね?
僕が生まれた時、父は母に対する誠実な愛の証として、この名をつけたのだと聞いています。
そして、これはきっとその後に思いついた、ついでだとおもうんですけど、
『僕自身にも誠実に愛せる人を見つけて欲しい』
という意味もあると聞いてきました。
だから、
『僕が生涯をかけて誠実に愛する人です』
って紹介しようかなと思ってます」
「恥ずかしい……けど嬉しいよ。
誠実な愛の証か……。綺麗だな。
じゃ、文は?どういう意味?」
「あぁ、ブンはですね響と、頭いい人になって欲しかったって聞いてますが、きっと安易ですよ。
ところで十維、十維ってとても珍しい名前ですよね?十維にはどういう意味があるんですか?」
「俺か?俺の名前の意味、それはな……」
俺は静かに話し始めた。
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