第26話 危険な男の彼氏とは?

 十維はいつも通り起きる時間に目が覚めた。だが、今日はいつもと違う。

 ベッドが違う、1人でも無い。十維の腕や足には誠が絡みまくっている。


-- 幸せ……。


 十維は照れ笑いをしながらも自分から誠に抱きつく。誠はまだ、寝ぼけながらもさらに抱きしめ返してくれる。


   幸せ……。俺はついに誠の恋人になった。

   幸せ……。恋人。誠はオレのモノ。

   恋人……コイビト……誠のこいびと……

   こ……い……び……と……


 十維の頭の中に、1人の男の顔が浮かんだ。

 いつもこの家に泊まっている金髪の男だ。

 クラブシルキーの店長をつとめ、誠のそばにいつもいる男だ。

 時刻は5時。いつもこの時間に彼がこの家を訪ねてくる。不安がよぎった……


「誠、Max!

 お前の彼氏にはなんて説明する?いつ別れてくれる?おい、誠ってば!」


誠をゆすって起こそうとするがなかなか起きない。


「んーー?彼氏?僕の彼氏は十維さんじゃないですか……昨日話したでしょ?」


 誠は寝ぼけたまま答え、さらに十維を抱きしめる。


「だから、オレのことじゃなくて、だからー」


その時である。誠の部屋のドアが開いた……


背後に誰かが入ってきた……


「Max、昨日夜はどしたんだよ…… て、あー……

 えっとお邪魔しましたー。ごゆっくり。

 シャワー借りまーす。」


    声でわかる……

    金髪の男だ……修羅場になるのか?

    俺はこのあとどうしたらいいんだ?

    なんて説明する?

    もしかすると、もしかして

    この一晩だけで、

    俺の彼氏時代は終わるのか?


一気に不安がよぎる。

仕事柄、多くの夫婦やカップルの修羅場を見てきたが自分のは経験がない……震えてきた……


「ん?ブン?あいつ今日は来るなと言ったのに……

 まぁいいや。

 十維、おはようございます。

 よかった!昨日のことが夢じゃなくて」


 起きた誠は十維を自分の上に座らせ包み込むように抱きしめキスをしてきた。

 大きい体格の誠。十維だって大きめなのにすっぽりと包み込まれる。


「誠、いやだから、そうじゃなくて……」


   もう!

   金髪くんがきてる……

   どうしよう?どうしたらいい?



相談したかったのに、誠の下半身はギンギンになっており、さらにキスも激しくなっていく。

そして誠の右手の指がオレの蕾を刺激してくる……


「あ、ダメだって…… あーー… うふ…… んー…」


   上手い……

   テクニックがうますぎて何も考えられない……

   ダメなのに……

   金髪くんが部屋の外にいるのに……


「トーイ……好き……トーイ……」




 俺と誠はまたここで、この状況でSEXをしてしまった……。 





「十維。トーイ。もう呼び捨てにしていいですか?

 ごめんなさい。あまりに嬉しくて、僕、朝から頑張りすぎましたよね?大丈夫ですか?

 立てますか?

 そろそろ朝ごはんができてると思うので、ダイニングまで行こうかとおもうんですが、あ、立てないならこの部屋まで持って来ましょうか?

 それとも抱っこしてダイニングまで行きましょうか?」


ニコニコ顔の誠はオレの背中や肩にキスをしながら言ってきた。


「呼び捨てでいいよ、俺も誠って呼ぶし。

 それから1人で歩けるよ。ていうかそんなに気をつかうくらいなら起き抜けでこんなに激しくやるなよー。昨日もやりまくって今朝も……どんだけお前は体力あるんだよ!俺だって鍛えてるけどお前にはさすがに負けるわ……

 それに、ずっと思ってたんだけど、お前の方が年上だろ?だから言葉遣い気をつけるべきなのは俺じゃね?」


「いいんですよ!言葉遣いなんて。十維は弁護士先生なんだから」


「いや、コイビトなんだろ?だから丁寧語はやめて欲しい」


「そんなこと言われても……ほら、昨日話したように、僕にとってはあなたは憧れの人なわけで……そんな人にタメ口とか、なんか出来ないじゃないですか。

 でもじゃ、これからは出来る限り丁寧語をやめていけようにしますね。

 急には抜けられないと思うので、徐々にタメ口にできるようにしていきます。

 では早速、練習を。

 ゴホンッ、十維、朝ごはん出来てる頃だから一緒に食べに行かないか?

 あー……なんか照れちゃいますね」


「うん、そんな感じで喋ってくれたほうが嬉しい。

 ………………

 ん?ちょっと待って……

 朝ごはんが出てきてる頃って言ったよな……?

 誰が作ったの?え?出来てる頃ってことは、まさか、金髪くんが作ってる?」


「金髪くん……?確かに金髪だな。ハハハッ」


 誠は俺に満面の笑顔でスリスリキスキスしまくってくる。


「『ハハハッ』じゃねーよ!

 おい、えっと、いや、えっとーえー?どうするよ!」


「ん?なにがですか?」


「金髪くん、店長だろ?店の、あの人にこの状況をどう説明するんだよ!」


「どう説明って、十維が昨日オープンな付き合いをするって言ったんじゃないですか、覚悟はできてるって」


俺は頷いた。

「言ったよ、言った!」


「じゃ、そうゆうことで、堂々と宣言しにいきましょう」


誠は俺の手を引き、立ち上がらせ、色違いのバスローブを俺に着させ、一緒に手を繋いで部屋を出た。


   部屋の外には金髪くんがいる

   修羅場か?別れ話か?涙か?




 昨晩、食べっぱなしで食卓の片付けもしていなかったが、それも全てキレイに片付けてあり、さらには和風の朝食が三人分並べられていた。


「ちょうど良かった。今味噌汁も出来たよ。さぁ食べようよ」

 

金髪くんが、笑顔でご飯を並べていく。誠が椅子を引き俺を座らせる。

俺はオロオロオロオロ……



「あ……あの……店長さん俺……」


「高柳先生、おはようございます。

 さぁ、とりあえずご飯にしましょう。話はそれからで。時間はたっっぷりありますから」


    はなし……

    時間はたっぷり……こえーよ!



「いただきます!」


嵐の前の?3人での朝食がスタートした。

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