第25話 危険な男と、甘えん坊の覚悟

「ねぇMax、そんなに前から俺のことが好きだった?

 もしかして、一目惚れとか?」


「すみません、紛らわしいかもですが、一目惚れ……ではないかな……

 好きというのではなく、憧れたんです。

 あぁ、こんな男性になりたい、こんなカッコよくなりたいなって」


「じゃいつから好きになってくれてたの?」


「それは……ヒミツにしましょうか」


「なんで?」


「いつか話しますよ。ネタバラシは一気ではなく小出しがいいかと思います。少しくらい秘密があるほうが……ね?

 それより、もっと僕にキスをください。もっともっとあなたとひとつになっていたいんです」


 Maxのキスだけでとろけてしまう。

 吸い付き、絡み合うキス。あなたを欲してると言わんばかりの求めるキス。

これだけで十維の尻はキュンキュン締まり、Maxの肉棒の来訪を待ってしまう。



「っと先生、あのぅ、これからのことなんですが……

 先生と僕の関係のことですが、やはり周囲には秘密で行こうかと思うんです。

 どう思いますか?」



「ん?ヒミツで?どういうこと?

 まさか……今日のことを無かったことにする気じゃないよな?」


「無かったことになんてしませんよ。

 ただ僕たちの関係を、これからどうしたらいいかと考えてみたんです。

 お見合いをぶち壊しておいて言うのも何ですが、僕は先生を困らせる存在にはなりたくないんです。重荷に、弱点になりたくないんです。


 先生の立場などを考えると、僕は影の人でいいのではないかと思っています。誰も知らない関係で。お互いだけが知っていればいい関係で。

 だからこのまま、今のまま会える時に会って、愛を確かめ合う、そんな関係でいいのではないかと思うんです」


   それはいまこの家に来ている人たちと

   同じになるってことか?


   公に、俺と付き合ってるとは言わない

   俺は『彼氏』と紹介してもらえない存在


   けど、時間が合えば泊まりに来て愛し合う


   そんなの、いまこの家に出入りしている

   他の奴らと一緒じゃないか!

   俺も彼らと同じ存在になれってことか?!


   せっかく心から結ばれたと思ったのに……



「ただ、僕にだって独占欲はあります。

 だから、彼女は作ってほしくない、結婚もして欲しくないです」


「そうやっていつも言ってきたのか?

 そう言って多くの人たちと関係をもってきたのか?

 この家に出入りしている奴らみんなに、言ってきたのか!?

 俺はお前の何人目の愛人になるんだ?


 そしてお前は、今後も多くの人たちと関係を持っていくってわけか?

 俺の知らないところで……」


俺は怒りと同時に、涙まで浮かんできた。



「そんな他の人となんて、何もありませんよ。何もしませんよ!あなたという人がいるのに。

 あなたを悲しませるようなことは絶対にしません!

 僕はただ、先生を困らせる存在に本当になりたくないんです。ただそれだけです」


「それをどう信じればいいんだ?俺のためって?何だよそれ!」


「では言いますが、先生の周りに僕とのことをオープンになんて出来ないでしょう?

 職場で、家で、僕とのことをどう説明するつもりですか?

 家柄から、独身で居続けるのが難しいということはわかってます。だから今回みたいなお見合いだって、これからも何度もさせられるでしょう。

 たとえお見合いをしたとしても、僕は文句を言いません!言えません!立場をわかってるから。

 そして、あなたの許可なしに、あなたの恋人だと名乗りを上げることもしません。

 あなたのために。

 すべては、あなたのために。

 だから僕は影の人でいるしかないと理解しています。わかっていますと言ってるんです」


「Max……俺は!

 俺は恋人がいい。ちゃんとした恋人がいい!

 この前の、若林社長と康太さんみたいに、みんなの前で堂々と恋人だって伝えられる関係でありたい!

 俺は嫉妬深いから、Maxを独占したい!Maxの全てを俺のものにしたい!他の誰にも触れさせたくない!」


「だからそんなこと出来ないでしょ?と言ってるんです」


「俺は堂々と言うよ。

 俺は、覚悟を決めてこの部屋に来たんだ。

 『覚悟してきてください。独占してしまう』

 と言ったのはMaxだろ?

 だから俺は、みんなに公表することも、それで反対にあい茨の道になったとしても戦うことを、覚悟してここに来たんだ!


 俺はずっと探してた。

 俺が好きになれる人を!

 俺のことを好きになってくれる人を!!


 たくさんの人と会ってきたさ。お前が言うように、今日みたいなお見合いだって山ほどしてきたさ。

 けどどの人と会っても違った。なにも響かなかった。好きになれるとは思えなかったんだ。

  

 ……あの日、ここに挨拶に来たあの日、俺はわかったんだ。

 あ、この人なんだって、俺が会いたかった人は、探してたのはこの人なんだって。わかったんだ。


 だから俺は、お前と、Maxと付き合いたい!

 それは!恋人として、誰にも隠さずに付き合っていきたい。

 やっとお前のこと手に入れたのに、陰でコソコソなんて嫌だよ。そんなことをしてる間に、他の人に取られるなんてゴメンだね!

 いいか!俺は生涯おまえだけだ!

 だからお前も覚悟を決めろ!俺だけのモノになれ!他のやつとは全部、全部切れ!

 俺と堂々と付き合え!

 俺の周囲に遠慮なんてするなよ、そんなMaxに惚れたんじゃない。男らしく堂々としてるお前に惚れたんだ。

『どうだ?俺が十維の彼氏だ!』

 って堂々と言ってくれよ。

 変なこと言って俺を不安になんかさせないでくれ、頼むよ……Max」


 言葉に力が入れば入るほど、荒々しく話してしまった。どさくさに紛れて、"お前"呼ばわりしてしまった。

 しかし、Maxは怒るわけではなく優しく十維を抱きしめた。そして


「ありがとう。ありがとう。そしてごめんなさい。

 そうですね。僕だって悪い仕事をしてるわけじゃない。悪い恋愛をするわけじゃないですよね。

 僕も堂々と付き合いたいです。みんなに恋人だと紹介したいです。

  

 十維、どうか僕と付き合ってください。

 僕はいい彼氏になれるかわかりませんが、精一杯あなたのために努力します。約束します。

 だからオープンなおつきあいをしましょう」


 十維の目にはついに涙がほろりと流れた。

 Maxはその涙をキスで受け止め、抱きしめる。


「これから俺たちは幸せな恋人同士になるんだからな……2人で幸せになるんだ」


「はい、そうしましょうね。僕の十維」


 晴れてここにカップルが誕生したのでした。



「にしても、やっと十維って呼んでくれた」


「え?いってませんでした?」


「あぁ。ベッドの上以外、ずっと先生か、あなただった!」


「それを言うなら、十維だって僕のことをMaxって……」


「え?だってMaxじゃないか?」


「誠……まことがいいです。十維からは、誠がいいです。あなたにだけは名前で呼ばれたい」


「誠……」


「十維……」


「この続きはベッドの上に行ってからにしましょうか」

 2人はまた誠のベッドルームへ行ったのだった。


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