第12話 無変換キー

「おはよー☆ ナイアルラちゃんだよ☆」


 深夜だよ。

 なんなら2時だよ。


「カップ麺の瘴気を吸いながら~、今日のナイアルラちゃんの解説だよ☆」


 いつにもましてテンションが高い。

 こんないやなハイテンションあるんだ。


「今日はね~☆ これ! 【無変換キー】!」


 念話で送りつけられてきたのはパソコンのキーボードだった。

 印字が英語のもので、英語圏で使われていたもののように見える。


「これは……っていうか、キーボードじゃなくて、この無変換のキーだけなんだけどね☆」


 無変換。

 日本語キーボードについてるキーで、スペースキーの隣あたりにあるやつ。

 そしていつ押されるのかわからないキーでもある。


「なんと一回押すと……何も起こらない!」


 だいたいわかった。

 2回押すといらんことになるんだな?


「せいかーい! 二回押すと……変換されるの☆」


 なにそれ怖い。

 変換ってなに!?

 変換ってなに!?


「変換されるとね……別のものになるんだよ☆」


 怖い怖い怖い。

 本当に何になるんだよ。


「なんと~ラ・ン・ダ・ム☆」


 うわうざ。


「押された時点で……なんと対象もランダム!」


 変換されるのは押した本人じゃないのかよ。


「周囲100km以内の誰かが変換されるよ☆」


 恐ろしい代物過ぎる。


「でー変換先は……当然ランダム☆」


 はいはい。


「うっかり超神話生物に変換されちゃって、都市が一つめちゃくちゃになっちゃったよ☆」


 下振れしたときに大変な目にあうと思っていたが。

 上振れしたときもやべえのかよ。

 むしろ下振れしてダニあたりに変換されたほうが被害が少ないのかもしれない。


「でー、欲しい?」


 欲しいわけないでしょ。

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