第3話 1時間に1個ずつ増えるロールケーキ

「きゃほきゃほー☆ ナイアルラちゃんだよ☆」


 うわ出た。


「今日はね~、ナイアルラちゃんの失敗について聞いてほしいな☆」


 いきなりだなおい。

 というかこいつでも失敗とかするのか。

 いや、存在自体が失敗みたいなものか。


「矮小なる人間、不敬だぞ~☆」


 はいはい不敬不敬。


「むぅ、適当になってない? まあいっか!」


 いいのか……。


「矮小なる人間とナイアルラちゃんの仲だからね♡ 今日紹介するのは~」


 うっせ!

 脳に直でドラムロールを流すなァ!


「じゃん! 【1時間に1個ずつ増えるロールケーキ】!」


 おい、どっかで聞いたことあるやつだぞ。

 どうせ食べ続けないと指数関数的に増殖して世界がケーキで埋め尽くされるやつだぞ。


「ちーがーいーまーすー。なにがあっても1時間毎に1個増えるからナイアルラちゃんのオリジナルだよ☆」


 は?


「食べようが壊そうが焼こうが踏み潰そうが、ロールケーキ総体の数が1時間毎に1個ずつ増えるんだぞ♡」


 それはまあ……お優しいことで……。

 その短い説明からして、消費はできる。

 ナイアルラのことだから、どうせ0個からでも1個増えるから無限に湧いてくる資源のようなものだ。

 増えるだけのただのロールケーキだが。


「やっぱりケーキの数だけ増えるようにするべきだったかなー☆」


 それこそパクリだろそれ。


「だよねー☆ でねー、失敗っていうのはね~」


 これを迂闊に作ったことじゃないのか。


「別の世界にプレゼントしたんだけど~、物質変換発電機の燃料にされちゃったんだよね☆」


 わーお。

 その世界の人間はガッツがある。

 ナイアルラの嫌がらせに対抗するとは。


「怒ったから、新しいロールケーキの出現位置をランダムにしちゃった☆」


 わーお。

 やっぱ下手に怒らせちゃダメなやつだわ。


「そしたらランダムにおやつが湧くだけになっちゃったんだよー☆」


 でしょうね。


「で、このロールケーキ、欲しい?」


 いるわけねえだろ。

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