第2話



尊い……!もう死にたくなるくらい尊い……!

推しというものは目の前の世界を変えてくれるくらいキラキラ輝いていてこんな一般市民のなんの魅力もない僕達に生きる意味をくれる。


「毎日、拝ましていただきます!」


美しい莉羽のインストを隅々まで見ていた時のことだった。


【速水莉羽さんがあなたをフォローしました】


誰だそれ、莉羽の画像眺めてたんだから邪魔しないで――


「はあ!? いやいやそんなわけない。同じ名前なだけかもしれないし、そうそう」


フォローをされたアカウントをタップして確認してみても、


「本人……本人……え、なんで……ムリムリ怖い怖い」


正真正銘、莉羽だった。

フォローしているのはしかも僕一人。

いやただの間違いだ。絶対に。

だって僕のこと向こうは知っているはずもないんだし。


これは事務所に連絡すべきか?いやなんてだよ。

DMしてみるか……?いやでもなんか恥ずかしい。

こうしよう、握手会に参加する。そしてその時に言おう。


* * * * * *


「はあ……」

「朝からため息うるせえよ。何があったんだよ」

「凛太郎〜 助けてよ〜」

「くっつくな!気持ち悪い!」


僕は昨日あったことを凛太郎に話した。

でも凛太郎は「寧ろラッキーじゃね?」なんて言ってきて、そうじゃないんだよ!!

推しという生き物は推しのままでいんだよ!!

夢を与えてくれるだけでいいんだってば!!!


「はあ……凛太郎はわかってない」

「そんなもん知るかよ!」

「推しの世界に僕達みたいなのが踏み込んじゃダメなんだってば!!」

「はいはい。握手会行くんだろ?じゃあいいじゃん、購買部行くぞー」


僕達、本当なんで友達でいれてるんだ?

そうか!凛太郎も握手会に連れていけばオタク世界の気持ちがわかるかもしれない!


「凛太郎!」

「ブフォ……ゲボッ……な、なんだよ」

「汚いな」

「お前が急に大声出すからだろうが!で、なに?」

「握手会!凛太郎も付いてきてよ!」

「はあ?なんで俺が興味ないのに行かなきゃならないんだよ」

「いいから!ね?お願い!親友が頼んでんだからさ?お、ね、が、い、!」


最終的には渋々、頷いてくれた凛太郎と握手会に行くことになった。

よっしゃー!莉羽に会えるしオシャレして行くぞー!


「よし!握手会も行くことになったしペンライト買いに行こ!」

「はあ?握手会行くだけならいらねーだろ」

「ッチッチッチ!握手会の方が面と向かって話せるんだから覚えてもらえるチャンスなの!学校なんてサボっちゃえー!」

「……お前ほんとバカだ」


この後、握手会で莉羽といっぱい話すためにCDを買い込んだのは母さんには内緒にしとかないと……

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