第22話 念願?の奴隷ちゃん?

 奴隷商館に入った俺達は、部屋へ案内され、恰幅の良い奴隷商人と向かい合っていた。


「お客さま、どのような奴隷をご所望で?」


「そうですね。女性で家事と護衛が出来る人がいいですね」


「家事と護衛ですか。年齢などの希望はございますか?」


「特にないですね。しっかり働いてくれればいいですよ」


「なるほど。では、少々お待ちください」


 そう言って奴隷商人は部屋から出ていった。

 しばらく待っていると、女性の奴隷を連れて戻ってきた。


 10代の女性で、種族は人間だった。

 皆、貫頭衣を着ていて、スタイルがよくわかる。


「こちらが家事と護衛が出来る奴隷でございます。大変失礼なのですが、お客様の職業をお聞かせ願えますか?」


「あ、自分は錬金術師をしております」


「おぉ! それは素晴らしい!」


 俺の職業を聞いた瞬間から、連れてこられた奴隷の目がギラギラしだした気がした。


 その後の奴隷の自己紹介という名のアピールは、なかなかに酷かった。

 夜の奉仕も喜んで致しますとか、借金が返し終わってからもご主人様にお仕え致しますとか。

 もうね、アイギスさんと話していた内容がよく分かったよ。

 この子は、どうにもお金目当てな気がするな。


「うーん、なかなか素敵な人ですが、少し考えさせて頂きたいと思います。他にはいませんか?」


「そうですね……錬金術師様とお聞きしたので、欠損がある奴隷でもよろしいでしょうか?」


「構いませんよ。連れてきてもらってもいいですか? もし連れてこられないようなら自分が行きますが」


「それには及びません。ここの従業員に運ばせますので、しばしお待ちください」


 奴隷商人は、連れてきた奴隷を連れて、部屋を出ていった。

 しばらく待っていると、数人のガタイの良い従業員が、欠損奴隷を支えながらやってきた。


 年齢は、20代から30代の欠損奴隷だと奴隷商人が説明してくれた。

 人数は、3人だ。


 1人目は、右腕欠損の狐人族、25歳、女性。

 2人目は、左脚欠損の猫人族、22歳、女性。

 3人目は、右腕と右脚欠損の狼人族、30歳、女性。


 言葉数少なめだったが、話を聞くことが出来た。

 皆、性格は良さそうだ。

 全員雇ってもいいが、年齢的にも30歳の女性は、このままだと娼館へ行くことになると奴隷商人が言った。

 そこで交渉することにした。


「では、狼人族の女性を購入したいと思いますが、他の2人の欠損を治しますので、割引してもらえますか?」


「なんと! それはそれは! こちらとしましても願ってもないことです。それにしてもよろしいのですか? 狼人族とはいえ30歳でございますが」


「そこは大丈夫ですよ。俺も35ですからね。ゆっくりした余生を過ごしたいんですよ」


「そうでございますか。でしたら、金貨5枚のところを金貨1枚でいかがでしょうか?」


「こちらは、それでいいですよ。では、この錠剤が欠損を治す薬となりますので、3人に飲ませてもらえますか?」


「えぇ、えぇ。承知しました。さ、お前達、これを飲みなさい」


 3人は、錠剤を飲んだ。


「効果はすぐには出ませんが、今日中には回復するでしょう」


「承知しました。疑うわけではありませんが、回復を確認させていただきたいので、また明日ご来店していただいてもよろしいでしょうか?」


「えぇ、分かりました。では、また明日来ますね」


 こうして、この日は、宿へ向かい、就寝した。


 

 次の日、奴隷商館に行くと、五体満足になった狼人族の女性と奴隷商人が昨日と同じ部屋で待っていた。


 他の2人も回復したようで、奴隷商人からサービスでメイド服も付けてくれた。

 狼人族の女性はイリアという名前で、スタイルが良く、黒髪ロングで金色の瞳をしていて、スタイルが良い! 大事なことは何回でも言おう。何とは言わないが大きい!


 イリアと奴隷商人から、どういった経緯で奴隷になったのか話を聞いた。



 イリアは元商人の娘で、両親と3人で行商をやっていたらしい。

 それが、10年前に行商に出た時に、山賊に襲われ、両親はその時に亡くなった。

 イリアも山賊に囚われ、いつ犯されてもおかしくない状況に陥ったらしい。

 運が良かったのか、冒険者達が丁度山賊のアジトを発見し、救助され、町に戻れた。

 しかし、山賊に囚われたということを町の住人に知れ渡ってしまった。

 そのため恋人すら出来ずに、両親の跡を継いで行商をして行くことになった。

 悪いことは続き、行商の際に護衛を頼んだ冒険者が、オークを前にして逃げ出してしまうという事態に陥った。

 狼人族は、多少は戦闘も出来る種族だったため、命懸けでオークを倒すことが出来たが、その時に、右腕と右脚を負傷した。

 荷物を全て諦め、なんとか町まで辿り着き意識を失ったという。

 その時にはもうポーションや回復魔法では治せないほどの状態となっていたらしく、目が覚めたら欠損状態となっていたようだ。

 その後は、冒険者ギルドへ抗議を行い、逃げ出した冒険者は資格を剥奪され鉱山奴隷になり、賠償もされたが、ギリギリで行商を行っていたため、借金が残ってしまい、もう行商も出来なくなり、借金奴隷になってしまったという。


「どうしても欠損があることがネックとなりましてね。うちでも数年もの間、買い手が付かず売れ残ってしまい、そろそろ娼館に安く売るしかないかと思っていたところなんです」


「そういう経緯だったんですね。お話ありがとうございます。それにメイド服までつけて頂いて」


「いえいえ、素晴らしい薬をいただいて、うちの奴隷を治して頂きましたので、そのくらいは」


「イリアさんも、辛い過去を聞いてしまい、すみません」


「いえ、過去はどうにもなりませんし、どういった奴隷かを確認するのは当たり前ですので。それにこうして治して頂きました。絶望しかなかった私には、ご主人様が神様のように見えました」


「神様なんて大袈裟ですよ。イリアさん、これからよろしくお願いしますね」


「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します。それと、私のことは呼び捨てで、敬語もおやめになってくださいませ」


「分かりました……あ、わ、分かった」


 うーん、慣れるまで時間かかりそうだ。

 俺が、内心ドキドキしていると、奴隷商人に声をかけられた。


「それでは、奴隷契約をしますので、お客様の髪の毛を頂けますか?」


「髪の毛ですか?」


「えぇ。昔は血でやっていたようですが、今では主人となる者の魔力が宿っていれば契約魔法の触媒になると分かったので、髪の毛で十分なんです」


「そうなんですね」


 そう俺が答えると、奴隷商人は、鉄で出来たハサミを渡してくれた。

 俺は、適当なところの髪の毛を切り奴隷商人に渡す。


 そして、【奴隷契約】と唱えると、イリアの胸の中央辺りと俺の左手の甲が青白く光った。

 左手の甲には、魔法陣が出来ていた。

 これで契約は完了らしい。

 

 借金としては金貨5枚となるとのこと。

 その分が主人に返済されたら、勝手に奴隷契約は解消されるらしい。

 不正も何も出来ないとは、魔法って凄いな。


 こうして、俺は奴隷を購入した。


 アイギスさんは、イリアとも長い付き合いになるとのことで、凛とした対応はしないようだ。

 ま、旅の間は、アイギスさんとイリアは同じ部屋に泊まるからね。


 俺は就寝のために宿の部屋に入った。 

 テマリもイリアもアイギスさんのところだ。


 あれ?

 俺って一応、主人だよな?

 うーん?

 




 

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