第20話 スタンピード終息まで

 ハイポーションの錠剤を作り終えしばらくすると、獣人の冒険者達に背負われた人達が運び込まれた。

 運び込まれた人達は、大森林側の防壁を魔法で修復し、魔力が尽きてしまったらしい。

 冒険者は老人に、北側の様子を報告している。

 どうやら、老人は町長だったようだ。


「町長、まだ救援は来ないのか?」


「……どんなに早くても明日の朝じゃろうな」


「そうか……上位種は先行してきたやつら以外は今の所出てきていないが、防壁があちこち壊されちまってる。町ん中に入り込んだ魔物は粗方片付いた様だが、みんな魔力も体力も限界に近いんだ。状況はあんま良くないな」



 聞こえてきた状況は悪いようだ。

 俺は、町長と呼ばれた老人に声をかける。


「町長さんだったんですね。魔力ポーションがあればどうでしょうか?」


「そうじゃの……それでも五分五分と言ったところかの」


「そうですか。状況はあまり良くないんですね」


「そのようじゃ。この町にいたAランクの冒険者達は、このスタンピードの元凶を倒しにいっておっての。ここにいる負傷者達もBランクの者達なんじゃが、先行してきたオークジェネラルや上位種と相討ちになる形で負傷してしもうたのじゃ」


「そうだったんですね」


「錬金術師殿のおかげで、負傷者は回復してきておるが、元凶を倒すまで持ち堪えられる体力が皆にあるかどうか……」


 なるほどね。

 体力か……魔力についてはマジックポーションで何とかなるとしてもなぁ。

 なんか素材ないだろうか。

 もしかしたら食材のほうになんかないかな?


「町長、食材を見せてもらってもいいですか? もしかしたら何か錬金術の素材になるものが有るかもしれませんし」


「うむ。食材は、あの天幕の下じゃ。何か必要なものがあれば使ってくれて構わんからの」


「了解です」


 俺は、食材を確認しに向かった。

 食材も、種類ごとに木箱に入れられていた。

 米に小麦、タマネギや人参、ジャガイモ、ゴボウもあった。

 ただゴボウの木箱の中に、あきらかに太いモノが紛れ込んでいた。

 なんだコレ?

 異世界だし、ゴボウがデカくなったのか?


 俺は、その太いゴボウ?を調べてみた。


===========

名前:ヤマイモ


ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。

自然薯ともよばれ、とろろは粘性が非常に高い。

根茎(芋)とされる担根体は、滋養強壮がつくとして食用・薬用に利用されている。

(wikiより)

===========


 マジか!

 これがあれば体力も回復するかもしれない!


 俺は他にもヤマイモがないか、町長に確認しにいった。


「町長さん! この芋って他にないですか!?」


「い、芋? それはゴボウじゃろ?」


「いえ、コレはヤマイモと呼ばれる物です。これには滋養強壮の効果があるんですよ!」


「なんと! しかし、ワシには詳しいことはわからんのじゃ」


「そうですか……」


 俺と町長が悩んでいると、町長に報告していた先程の冒険者が声をかけてきた。


「それなら芋爺に聞いてみればいいんじゃねーか?」


「そうじゃ! あやつなら知っておるかもしれんの! すまんが呼んできてくれんか」


「あいよ!」


 そう言って冒険者は走っていった。

 しばらく待っていると、ずんぐりむっくりな髭もじゃの男性を背負って冒険者が帰ってきた。


「ふぅ。連れてきたぜ!」


「なんやらワシに話があるらしいな」


「そうなんじゃ。このヤマイモ?なるものを知っておるか?」


「お! それがヤマイモってよくわかったな! そりゃワシが作ったんもんだ」


 おぉ! この人が作ったのか!

 俺は、話に割り込んだ。


「すみません。自分は錬金術師のジョージと言います。急で申し訳ないのですが、ヤマイモって他にはないですか?」


「おう、ワシはドワーフのガモイだ。ヤマイモならあるぞ。ただ畑にだがな」


「畑ですか。それは町の中です?」


「あぁ。ウチの庭で育ててるやつだ」


 それならなんとかなるか?

 しかし、まだ畑にあるなら、ムカゴもあったりするかもな。


「町長、すみませんが、ヤマイモの収穫に人員をくれませんか?」


「む。しかし、この現状で人員を割くのは……」


「ヤマイモってやつが必要なら俺が護衛につくぜ」


 そう冒険者が言ってくれた。


「ワシも行こう。掘り起こすのにコツがいるからな。ま、ワシは土魔法が少し使えるからすぐに収穫出来るはずだ」


「わかった。錬金術師殿、少数じゃがよろしいか?」


「十分です! みなさんありがとうございます!」


 こうして、俺達3人はガモイさんの家に向かった。

 道中の魔物は、冒険者さんが倒してくれた。

 ヤマイモの収穫をガモイさんが行っている間に、ムカゴを探してみた。

 ツルの部分や地面に、かなりの量があるのがわかったので、俺はムカゴを拾い集めた。


 ヤマイモとムカゴの収穫が出来たので、急いで町の中央まで帰還する。

 帰還したら、料理だ。


 各種調味料はあったので、手の空いているご婦人方に協力をお願いして、ムカゴご飯、とろろ、オーク肉を使った豚汁を大量に作った。

 豚汁には、魔力茸の出汁(マジックポーション)を使用している。


 それを、交代で冒険者達に食べてもらい、負傷者や魔力切れの人達にも食べてもらった。

 食べた人達は、体力と魔力が回復し、戦闘や防壁の修復へと向かっていった。


 こうして、Aランクの冒険者が帰ってくるまで持ち堪えることが出来、朝日が昇る頃にスタンピードは終息した。

 

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