第17話 獣人領

 ようやく王国と獣人領の境にある砦までやってきた。

 ここまで2週間くらいだったかな。

 アイギスさんと子狼のテマリと一緒にワイワイ楽しくやってたから、そこまで大変だと思うことはなかったな。


 道中では、錬金術の素材をいくつか採取することも出来た。

 魔力茸も、栽培しつつ、成長したものは乾燥させてまとめてある。


 さて、獣人領に入った訳だが、勇者召喚のことを伝えて、これから避難してくる人がいるかもしれないことを伝えておきたいな。

 それなりに重要なことだと思うから、師匠達がここを通る時に多少便宜を図ってくれるだろうと下心があるんだけどね。


「という訳で、アイギスさん、勇者のことを誰かに伝えたほうがいいかな?」


「うーん、便宜って言ってもねぇ。何も伝えなくても大丈夫だと思うよ」


「そうなんだ?」


「うん。錬金術師って色々な薬作れるから。逆に勇者のことを伝えると私達が身動き取れなくなるかも」


「あー、なるほど」


 そういうもんか。

 この砦もかなりデカいし、見た人達は皆んな笑顔だったし。

 それに、綺麗なんだよなぁ。

 臭くない!

 どうやら、獣人は鼻が良いから、下水道があるらしい。

 下水道は最終的に川へつながっているらしいが、川に流す前に、スライムを使った浄化システムがあるってアイギスさんから聞いた。

 動物の糞にかんしても、砦内を浄化する専門の人達がいるんだって。

 

 王国って余程酷い場所なんだなって思うけど、なんでアイギスさん達は居たんだろう?って思って聞いてみたら、『噂に聞いていたけど一度自分でも見てみたいと思ったから』と言われた。

 さすが冒険者だわ。


 さてさて、この砦にもギルドはあるみたいだから、ポーションや少量の魔力茸を卸して旅の資金としますかね。

 あ、あとテマリの従魔登録もしなきゃいけなかったんだ。


 俺達は、商業ギルドへ行き、売却と従魔の手続きを行った。

 商業ギルドから、従魔に首輪やスカーフなどでテイムされていることが分かるようにしたほうが良いと言われた。

 うーん、まだまだ大きくなるだろうから、首輪は微妙だよな。

 スカーフなら、調整もしやすいから、スカーフにしよう。


 そう思って、アイギスさんに声をかけようと思ったら、すでにテマリに自分の瞳の色と同じような紺色のスカーフを着けて、ニヤニヤしていました。

 行動早すぎだわ。

 ま、いいけどね。


 その後は、従魔も大丈夫な宿で休み、次の日には、食料などを購入して、宿で食事をしながら次の目的地を考えた。

 ここまで来れば大丈夫だろうから、あとはのんびり観光しながら進みたい。

 せっかくの異世界、そして残りの人生、楽しみたい!


「アイギスさん、獣人領って観光名所みたいな場所ってあるかな?」


「そうね……まずは、獣人領の王都にある闘技場ね。熱い闘いが観れるわ!」


「獣人のイメージ通りな場所だね」


「獣人領の王を決める時も、そこで王になるための闘いが行われるそうよ」


「そうなんだ」


 うーん、俺にはあまり魅力的には思えないな。

 平和な日本から来たせいなのか、俺の性分なのか。 

 もっと美味しいものとか綺麗な場所がいいな。


「獣人領の美味しい食べ物や綺麗な場所とかは?」


「うーん……食べ物は、肉と魚ね。場所は、大きな湖かなぁ」


「いいね! そういうのが良い!」


「なら、次の目的地はイールレイクね」


「道中の危険って何かある?」


「獣人たちは、みんな強いから賊になるような人も居ないわ。居てもすぐ倒されちゃうし。魔物は、出てもオークくらいかしら。それにしたって、オーク肉は美味しいから、出会えたらラッキーくらいね」


「そっか。じゃあ、問題なさそうだし、準備が整い次第出発しようか」


「了解よ」


 こうして、次の日には、イールレイクに向かって出発した。

 オーク肉はまだ食べたことがないし、淡水魚もまだだな。

 獣人領は、商業の国と取引があるおかげで、調味料も豊富で宿の食事も美味しかったし、食べ物には期待出来るな。

 砦でも、調味料が色々売っていたから買ってある。

 ここからの野営時の食事も美味しく作れそうだ。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る