第13話 旅立ち
忙しい日々を過ごし、旅立つ日となった。
なんとか馬車を操れるようになったし、あとは旅をしながら上手くなっていけばいいかな。
エスちゃん、メイちゃんに別れの挨拶を済ませ、最後に師匠に挨拶をして商業ギルドへと向かおうとしたが、師匠にとめられた。
「お前さん、ちょっとお待ち」
「師匠?」
「これ持っていきな」
「革のショルダーバッグですか?」
「ただのバッグじゃないよ。マジックポーチってやつさ」
「え! それって凄く高価なんじゃ」
「まぁ安くはないね。でもあたしは錬金術師様だよ? 作れるに決まってるじゃないか」
「さすが師匠! でも俺教わってないですが」
「当たり前だよ! なんでもかんでも教えられると思わないことだね!」
「そうですよね。すみませんこれほど良い物を。ありがとうございます」
「ま、東の島国についたら、教えてやってもいいけどね! その時は、なにかご馳走してもらおうかね」
「はい! お任せください! いつ師匠達が来ても良いように準備しておきますよ!」
「あはは、楽しみにしておくよ。そうだ、そのマジックポーチは容量のみ拡大してあるからね。木箱なら6つは入るはずだよ」
「分かりました! 師匠ありがとうございます! 向こうでお待ちしてますね」
「あぁ、気をつけてお行き」
「はい、師匠もお気をつけて。では、行ってきます」
俺は、優しい微笑みの師匠に手を振って商業ギルドへと向かった。
商業ギルドの外には、新しい幌馬車と栗毛の馬がいた。
ギルドの中へ入り、職員さんに声をかけた。
そのまま受付へ案内され、先ほど見た幌馬車と馬の確認と、手続きを済ませた。
サービスで、ブラシと木箱1つ分の干草をくれた。
これで俺も旅する錬金術師だな。
職員さんにお礼を行って、馬をブラッシングしながらアイギスさんを待つことにした。
しばらく馬と戯れていると、アイギスさんがやってきた。
アイギスさんは、フルプレートアーマーではなく、ハーフプレートと盾と剣という、いかにも冒険者というスタイルだ。髪はポニーテールにしている。
「すまない待たせたか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。今日からよろしくお願いしますね。荷物は馬車の中に入れてください」
「あぁ、ありがとう」
「今日は、ここから近い南の村までの予定です。まだ御者としては未熟なので、ゆっくり進みますね」
「わかった。私も御者台に乗っていても良いだろうか?」
「えぇ構いませんよ。いざという時に疲れていたから、なんて笑えないですからね」
「理解してもらって感謝する。警戒は常にしておくので安心してくれ」
「了解です。では、行きましょうか」
俺達は、御者台に乗り、ゆっくり馬車を進ませ、門で手続きをして、城下町の外へと出た。
これで、ここに戻ってくることはないだろう。
というか、改めて考えると結構やばい国に召喚されてたんだな。
ま、勇者くん達がどんなことをするか気になるが、俺に関係しなければ、どうぞご自由にと思ってしまうね。
そういえば、獣人領とも戦争してた訳だけど、人族に対して嫌悪してたりするのかな?
俺は、馬車を進ませながら、アイギスさんに聞いてみた。
「アイギスさん、獣人は人族に嫌悪感とか持っていたりしますか?」
「嫌悪感か……そこまでのものは持っていないかもしれないな」
「そうなんですか?」
「あぁ、この国は負け続けたからな。獣人が酷い目にあうことも少なかったはずだから、そこまで気にする必要はないと思う。それに魔族領にも獣人領にも人族はいるからな」
「そうなんですね。それでも戦争してたんですね」
「あぁ、それはこの国の王のせいだな。今も昔も民衆は大迷惑だと話していたよ」
「それはなんとも……旅自体は大丈夫そうでなによりですが、出来る限り早めにこの国を出たほうが良さそうですね」
「それは間違いないな」
俺は苦笑いしながら、遠くを見つめた。
昼頃になったので、馬車を邪魔にならない場所に停めて昼飯を食べることにした。
今日は、パンとベーコンと水だな。
パンとベーコンはナイフで切って、ベーコンは着火で炙って、ベーコンサンドにして完成。
ま、パッと食べれるからいいよね。
アイギスさんも、とくに何も言わなかったから大丈夫かな。
心配でじーっと見過ぎたのか、アイギスさんに何か?と尋ねられてしまった。
俺は、食事はこんな感じで大丈夫か心配だったと正直に話した。
するとアイギスさんは笑いながら、こんなもんだと言ってくれた。
でも、異世界に来たからには、食事を良いものにしていきたいね。
今はまだ簡単な物しか作れないけど、料理のスキルとか取得出来たら、もっと美味しくなるかな?
そういえば、錬金術のスキル検証もやって無かったな。
この世界のルールと違う可能性があるなら道具無しでも錬金術使えるかもしれないし。
ま、それは宿について時間があれば試してみよう。
昼食を食べ終わり、草の上に座り、辺りを見ると、薬草が生えていたので、採取しておいた。
そして、夕方には村の宿屋に着くことが出来た。
部屋を2つとって、夕食を済ませ、俺達はそれぞれの部屋へと入った。
夕食は、うっすいスープと固いパンだった。
宿の女将さんの話では、国からの食糧の徴収が厳しくなっているらしい。
女将さんの、そろそろ潮時かねぇって言葉が印象に残った。
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