第9話 魔力茸の使い道

 朝起きて、食事中に魔力茸の使い道を聞いてみる。


「師匠、魔力茸って何に使うんですか?」


「そうだねぇ。まずは魔力茸を煮出してマジックポーションになるね。あとは、魔力茸と薬草を煮出してハイポーションだね」


「うーん、なんか味がとんでもないことになりそうですね」


「良薬口に苦しって昔の勇者は言ってたそうだよ。だから、そういうもんさ」


「へぇ……いっそ錠剤にしても良いような気がしますがね」


「じょうざい? なんだいそれは」


「あー、丸薬ってこっちにもあります?」


「丸薬かい……暗部の兵糧丸ってのなら聞いたことがあるけどね」


「兵糧丸はあるんですね。錠剤は、それの小さいやつって感じですかね」


「ほぉ、そんなに小さくなっても効果があるのかね?」


「さぁ? 作ってみますか?」


「ま、今日はとくに何をするか決めてなかったし、良いんじゃないかい」


「じゃあ、準備が整い次第やってみますね。あ、乾燥したものを粉状にしたいんですが、すり鉢か薬研ってありますか?」


「薬研とはまた古い道具を言ってくれるね。ま、あたしくらいの錬金術師は、そう言ったもんも持ってるけどね」


「おぉ、言ってみるもんですね。では、乾燥させて薬研で粉状にして、少量のポーションで水分を含ませて固めてみましょうか」


「わかったよ」


 お互い、諸々の準備を終えて、錬金部屋に集まり、試行錯誤を開始した。


 ハイポーションの効果は、欠損が回復するほどの効果があるらしく、自分達で試すのは無理があったので、スラム(北区)に欠損している人を探しに行った。


 老人、老人、子供、老人、死体……なかなか悲惨な所だね。

 遠くを見つめ座ったままの子供がいたので、話を聞いてみる。


「こんにちわ。君の周りに、身体のどこかに欠損がある人いないかな?」


「……」


「あー、もし教えてくれたら、パンとスープをあげるからさ。いいですよね師匠?」


「ま、そのくらいなら問題ないよ」


「ってことだけど、どうかな?」


「……母ちゃんは腕無かったけど先月死んだ。姉ちゃんは……たぶんもうすぐ死ぬ。両目を貴族に取られたんだ。それからどんどん弱っていって……」


「そうなんだ。お姉さんの所まで連れてってくれるかな?」


「……なんで」


「えっと、試してみたい薬があってね。もし上手く行けば、欠損した箇所も回復すると思うんだ」


「ッ!? でも……うちにそんなお金ない……」


「あ、そこは大丈夫。正直、本当に治るか分からないんだ。だから実験みたいな感じになっちゃうから、協力してくれればお金はいらないよ」


「……姉ちゃん死んじゃうの?」


「うーん、そんなに危険な薬じゃないから、死ぬことはないよ? いざとなれば、普通のハイポーションもあるから、死ぬことだけはないよ」


「あぁそうだね。そこは北区を任されている錬金術師のあたしが責任を持つよ」


「……わかった。着いてきて」


 こうして、交渉が成立した子供の後をついて、ボロ小屋へと辿り着いた。

 中には、両目を覆うように赤黒い汚れた布が巻かれた少女が横たわっていた。

 状況をみるに、瀕死って感じだな。


「師匠、今にも死にそうなんで、急いで連れて帰りましょう!」


「そうだね、おいガキンチョ! お前も一緒に来な! ジョージはその女の子を丁寧に運びな!」


「了解です!」


 俺は、少女に浄化をかけて、お姫様抱っこで師匠の家まで運んだ。

 店舗に入り、カウンターの所に少女を寝かせた。

 師匠は、このままでは危険と判断したようで、急ぎポーションを作成し、少女に飲ませた。

 すると、なんとか安心出来る状態となったようなので、俺達はハイポーション錠剤の開発に入った。

 話を聞いた子供には、スープとパンを出して、ゆっくり食べてもらう。

 その間に、薬草と魔力茸を乾燥させ、薬研で粉状にする。

 配合を変えながら、3種類の錠剤が完成した。

 1つは薬草多め、1つは魔力茸多め、1つは同じ分量。

 錠剤にしたことで、それぞれ3錠ずつ出来た。


 普通のハイポーションでは分量が同じになるように作るので、有力なのは同じ分量の錠剤だな。


 まだ弱々しい女の子に、それぞれを1錠飲んでもらい効果を確かめる。

 最初は、薬草が多めの錠剤から。

 飲んでから数時間は経過観察をする。

 しばらく様子をみていると、だいぶ容体が安定してきたようだ。

 目を覆っている布をそっと外してみる。

 残念ながら、回復していないようだ。

 次に試してみた魔力茸多めのほうも同様だった。


 最後に、ハイポーションと同じ分量の物を飲んでもらった。

 この時点で、夕方を過ぎていたので、少女以外の3人で食事を済ませて、確認は明日する事にした。

 さすがにカウンターに寝かせておくわけにもいかないので、俺の部屋に連れて行き、2人を寝かせることにした。

 俺は、しょうがないので、店舗のカウンターの裏で就寝した。

 寒いし、痛いし、寝付けないしと、なかなかな状態での就寝となった。

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