第8話 キノコとポーション

 次の日、師匠にお願いして、魔力茸のカサが開いてない1本を頂戴して実験することにした。

 ついでに、銅貨5枚お借りして、原木とおがくずについても聞いてみた。

 木材を加工しているところならあるということで、家具や薪などを作っているところを紹介してもらった。


「すみませーん。原木とおがくずが欲しいんですけど」


 紹介してもらった店で声をかけると、青年が出てきた。


「はいはーい。原木とおがくずね。まぁおがくずなんて捨てるだけだから好きに持っていっていいですよ。原木はどんなのが欲しいんです?」


 俺は、椎茸の原木栽培に使えそうな太さと長さを伝え、いくつか穴をあけてもらった。

 銅貨3枚だった。 

 おがくずも、袋に入れてもらって、袋代銅貨1枚だった。


 家に持ち帰り、さぁ実験! とはいかずにポーション作成。

 師匠の手伝いをしながら、ポーションを作成していく。

 良品質を2本実験用に確保して、残りをギルドに納品。

 台車で持って行けるから、今回はだいぶ楽だ。

 この納品で、朝借りた銅貨5枚は返済で良いと言われた。

 帰り道で、食材を購入して帰宅。


 さて、実験してみますか。


 貰ってきたおがくずを瓶に半分程詰めて、浄化をかけて殺菌。殺菌になるか分からんけど。

 そして、ポーションを入れて、おがくずを湿らせて、椎茸じゃない、魔力茸をいれて様子をみる。

 回復の効果があるなら菌にも何かいい感じに作用しないかと思いやってみたが、どうだろ。

 様子を見ていると、カサが開き始めた。

 そのまま観察を続けると、菌糸がおがくずへと広がって行った。

 ポーションには菌の培養効果もあるみたい?

 いい感じに菌糸がおがくず全体に広がったので、原木に浄化をかけて、飲み水生成で湿らせて、菌糸がついたおがくずを穴に詰めていく。

 詰めたら、またポーションを詰めた菌糸に垂らしておく。


 これで、そのうちキノコが出てくればいいけど……。

 裏口からでて、トイレと反対側に廃材で目隠しを作り浄化を満遍なくかけて、原木をその中に立てかけておく。


 この日は、日に日に良くなっていく夕飯を頂戴して、就寝。


 次の日、原木を確認しに行くと、キノコが生え始めていた。

 おぉ! さすが異世界! 良く分からんがもう生えてきた!

 普通なら数年かかるはずなのに。


 早速師匠に報告。


「師匠ー! 魔力茸栽培出来ましたー!」


「ッ!? なんだって!! どこだい!!」


「裏のゴミ捨て場に———」


「そんなとこに置きっぱなしにするんじゃなーーーい!!」


 師匠が物凄い勢いで原木を回収してきた。


「はぁ、はぁ……ふぅ……。ほ、本当に魔力茸じゃないかい。ど、どうやったんだい!?」


「あぁ、それはカクカクシカジカ……」


「まさか、そんな方法が……これが全部生えたら3年は遊んで暮らせるねぇ!」


「いやいや師匠、それは食べるために栽培したんで売りませんよ?」


「ハァ? 食べる!?」


「それを乾燥させて出汁を取るんですよ。あとは焼いて醤油垂らせば、そうりゃもう!」


「はぁ……伝承通りだねぇ」


「伝承ですか?」


「あぁ、要約しちまえば、異世界から来た者は、食や生活の向上を最優先にする傾向があり、また規格外の力を持ち世界を変えるってやつさ」


「へぇ、そんな伝承があるんですね」


「そうさ。さっきお前さんが言ってた醤油もあるよ。あとは味噌や酢とかもね。100年前くらいに東の島国に召喚された勇者様が開発したって話さ」


「おぉ! ここだと醤油とかってやっぱ高いですか?」


「あぁ高いね。魔力茸1本と同じくらいさ」


「それなら、1本売って、醤油買って食べてみませんか?」


「な、なんて贅沢なことを言う小僧だろうね……はぁ、まぁこれはお前さんがやった事だし好きにしな」


「おぉ! ありがとうございます! じゃあちょっとその原木お借りして」


 原木に生え始めた魔力茸に少量のポーションを垂らす。

 すると少しずつ魔力茸が成長して、カサが開くまでに大きくなった。

 それを採取する。合計で10本になった。

 原木は外に置いておくと大変なことになるというので、俺の部屋に。

 部屋に入れる前に、部屋の中を満遍なく浄化してから部屋の中に入れておく。


 師匠に、醤油の売っているお店を教えてもらい、ギルドで魔力茸を売却。

 金貨1枚になった。おぉ……高い。

 しかし、醤油が欲しい!

 そして、師匠の教えてくれたお店へ。

 そこには、一抱えほどの壺が大量に置いてあった。

 1つで結構な量の醤油が入ってるな。

 醤油の壺と少量の味噌も合わせて金貨1枚にしてくれた。やったね。


 早速家に持って帰る。

 心なしか、それほど重さを感じることなく持って帰ることが出来た。

 

 家に着いたので、師匠に言って魔力茸を焼くことにした。


 食べるのはカサの部分として、柄の部分は錬金術に回して……。

 醤油は壺から、小さい木皿に少し移して、木のスプーンですくってかける準備をする。

 木の長い串があったので、それに刺して火で炙る。

 ヒダの部分にふつふつと水が出てきたので、醤油をスプーンでかけて……よし、良い感じかな。


 串から外して、木皿に1つずつ。

 師匠を呼んで、試食する。


「うーん! 久しぶりに食べたけど美味しい」


「ッ!! 美味い! 魔力茸がこんなに美味い物だとは……醤油も合うね!」


「これからは、いくらでもってのは言い過ぎかもですが、魔力茸食べれますよ」


「贅沢だねぇ……」


 どのくらい数が採れるか分からないけどね。

 まぁカサが開く前のを1本確保して、おがくずに菌糸を移しておけばいいかな。

 そういえば、魔力茸って錬金術では何に使うのか。

 明日、教えてもらおう。

 今日の夕飯のスープに3本の魔力茸を切って乾燥、根菜も乾燥させて、塩の代わりに味噌を使い味噌汁にしてもらった。

 味噌汁も良い感じだね!

 パンも少し柔らかい良いパンになったし、食事が美味しくなるのは良いね。

 しかし、パンと味噌汁は微妙な食べ合わせだな。

 師匠は問題ないみたいだけど。

 そういえば師匠も、血色が良くなり、美人さんになって来たな。

 歳はいくつか聞けないけどね。まぁ、今までの言動を考えれば人族では無さそうだけど。


 この日も、自分に浄化をかけて、就寝した。



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