第6話 ポーション
師匠が、ヨモギ茶を飲み干した。
「……なんだいコレは!!」
「ヒっ! す、すみません! ヨモギ茶です!」
「薬草だって言ってるじゃないかい! そうじゃない! これはポーションだよ!」
「そ、そうですね」
「あたしが作ってる品質は、粗悪なんだよ! これはどう考えても粗悪じゃない。まさかこんな簡単に……しかも下働きの小僧に……」
「いや、俺もう35なんですけど」
「あたしからすりゃ十分小僧だよ! あたしの師匠はね、ポーションなんて粗悪で良い、とにかく数を作ってスキルを獲得しろって人だったんだよ。スキルを獲得したら効果の高い薬や万能薬やらをずっと作らされてたんだよ……ポーションの品質を改善するなんて考えもしなかったよ」
「確かに、そっちの方がポーションより単価が高そうで、儲けられそうですね」
「あぁそうさ。天と地ほど差があったよ。でもそんなもん貴族様くらいしか買わないんだよ。特別な依頼がギルドから回ってきた時だけ頼りにされて、そのお金でどうにか生きてるって訳さ」
「そうだったんですね」
師匠の過去色々ありそうだけど、踏み込んでいいのか悩むな。
まぁ、本人が話してくれるまで待ったほうが良さそうだけど。
「はぁ……これで日銭が稼げそうだよ。よし! 分量変えながら試すよ! 手伝いな!」
「了解です!」
その後、俺は、薬草を乾燥させたり、浄化してから乾燥させたりと色々手伝った。
結果としては、浄化してもしなくても効果は変わらなかったが、浄化したほうが雑味が少なく飲みやすくなった。
効果は、師匠しか分からないから鑑定みたいなのもってるのかも。
いやもしかしたら、長年の知識からくるものかもしれないな。
こうして、この日は適量を調べて、夜まで作業していた。
そのおかげもあって、適量が分かり、明日ギルドへ納品に行くことになった。
タンポポの根は乾燥させてから就寝した。
次の日、朝の諸々を終え、昨日作った木箱一杯のポーションを持ってギルドへと向かった。
いや、重い。台車か荷車欲しい。
中肉中背のアラフォー舐めんなよってくらい大変。
ちょっと歩いて休憩、ちょっと歩いて休憩だよ。
さすがに師匠も重いのがわかってるから、文句は言われなかったけどね。
そうして、なんとかギルドまで辿り着いた。たぶん2時間くらいかかったと思う。
師匠が受付で話をして、ギルドの屈強な職員さんが肩に担いで奥に持っていった。
しばらく待っていると、結果が出たようだ。
ホクホク顔の師匠が戻ってきたので聞いてみると、粗悪が30本、良品質が30本で、銀貨15枚と銅貨30枚になったようだ。
粗悪安いなぁ。
帰り道で、中古の小さな荷車や中古のノコギリ、野菜とパンも購入した。
俺は荷車を引きながら帰宅した。
師匠は、荷車にルンルンしながら乗っていたよ。
「いやぁ、お前さんが来てくれて良かったよ。これでマシな生活が送れるよ」
「それは良かったです。あ、俺昨日採ったナズナと根っこ試すので、ちょっとキッチン借りますね」
「あぁ今日は気分が良いから好きに使いな」
よしよし、じゃあ、ナズナを茹でて塩ちょっと振って食べてみようかな。
師匠にひとつまみの塩を使うことを伝え、了解をとって、火を起こして、小さな鍋で茹でる。その間に、タンポポの根を細かく切っておく。
茹で上がったナズナは絞って木皿に。
茹で汁を捨てて、弱火になるように鍋を調整しながら根を煎る。
香ばしい匂いがしてきて、色も変わってきた。
本当はもっと細かく、それこそ粉砕しないとなんだけど、今はそんなこと出来ないから、ここに水を少しずつ入れてコーヒーっぽい色になるように調整する。
コップ2杯くらいになったところで良い感じになったと思う。
木のコップを2つ借りて、ハンカチで濾しながら入れる。
おぉ、見た目コーヒーだ。
早速飲んでみる。
うーん、可もなく不可もなくな感じだ。
言うなら、苦味があるうっすい何かだな。
師匠もチラチラみてるので、どうぞ。
一口飲んで、ニガッと言ってるね。まぁ、身体に良いみたいなことを聞いた気がするから、飲んでみてくださいな。
ナズナのほうは、ほんの少し塩を振って食べてみる。
あぁ、懐かしい味。
かつお節と醤油で食べたい。
これを食べると春だなぁって気分になる。
師匠も食べるます? どうぞ。
うんうん言ってる。食べられないことはないみたいだ。
少し食べただけなんだけど、師匠の血色が良くなった気がする。
ヨモギがポーションって不思議アイテムに変わるくらいだから、何かしらの効果が出てるのかもしれない。
「師匠、鑑定みたいなスキルってあるんですか?」
「ん? あー、あるよ。ただ色んな物をじっくり見なきゃ取れないよ」
「そうなんですね。常に気にしながら色々見てみます」
「はは、気長に頑張りな」
夕食では、野菜のスープだったけど、根野菜は全部切ってから乾燥させてスープを作ってもらった。なんとなく旨味が増したような気がした。
師匠は、いつもより美味しくなったと喜んでいた。
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