第5話 簡易トイレと薬草
起きた。身体が痛い。
バキバキと体をほぐして、キッチンに行く。
師匠はすでに起きていたようだ。
「おはようございます」
「おはようさん。もうすぐ出来るから座ってな」
「はい、ありがとうございます」
今日も、くず野菜と黒パンだね。
朝食を食べ終わった後、今日の仕事内容を確認した。
「今日は、何をすれば良いですか?」
「ん? そうだねぇ、薬草でも取りに行くかね」
「薬草ですか。それって町の外ですよね?」
「そんなの当たり前じゃないか。町の中に生えてる訳ないさ」
「そうですよね……あの身分証みたいなのって必要ですか?」
「ギルドの登録証があれば問題無いよ。あー、お前さんはまだ登録証もないのかい?」
「はい、お金が無くて……」
「ま、あたしと一緒に出入りする分には問題ないよ。一応うちの下働きってことにしとくさ」
「一応なんですね。あ、ゴミ捨て場にトイレ作ってからでも良いですか?」
「そんなもん作ってどうするんだい」
「あった方が周りを気にしなくて良いじゃないですか」
「んー、そんなもんかね」
「そんなもんですよ。浄化は俺がするんで、穴は深めに掘っておきます」
「はいはい、好きにしな」
師匠の許しも出たし、早速ゴミ捨て場へ向かった。
場所は、裏口の横でいいか。
師匠の家の壁に、木材を立てかけていけば、まぁ簡易の目隠しになるでしょ。
とりあえず、適当な木材使って穴掘って……うん、この辺は使用済みだったのかな。
思いの外、簡単に掘れますね。ちょっと臭いが……浄化浄化!
ふぅ……50センチくらいは掘れたかな。
直径は20センチくらいか? ま、外れても浄化あるし良いでしょう。
あとは長い廃材を立てかけて、隙間が気になるけど、全開放よりマシだな。
いつかボロの布でもいいから入り口側も隠したいね。
おぉぉ、食べるもの食べれば、出るものも出るというもので、早速使用感を試す時が!
……浄化!
ま、こんなもんで大丈夫でしょ。
しかし浄化だけっての慣れないなぁ。
さて、これでこっちはいいから、師匠と薬草採取だな。
俺は、師匠にトイレの完成を告げて、いつでも出発できることを伝えた。
師匠は、すでに準備出来ていたようで、そのまま出発することになった。
1時間かけ城下町の入り口へ。
門番に声をかけ、俺が下働きだと伝えてくれた。
そして、草原へと向かった。
「師匠、どの辺に薬草あるんですか?」
「ん? その辺さ」
「外ならどこでもある感じですか?」
「採られてなきゃね。お、コレがそうだよ」
師匠が見せてくれたのは、ヨモギだった。
「ヨモギですか?」
「よもぎ? なんだいそれは。これは薬草だよ。ちゃんと覚えな!」
「はい! すみません!」
「あと採取する時は、根っこさら取るんじゃなくて、新芽から数枚葉がついてる部分から摘み取りな」
「了解です!」
こちらでは、ヨモギに見えるのが薬草なんだね。
摘み取り方も、ヨモギ採る時と一緒だな。
ま、分かりやすくていいけど。
俺は、教えてもらったヨモギ改めて薬草を探し始めた。
すぐに片手がいっぱいになった。近くに結構あるもんだな。
集まったら師匠に確認してもらい、師匠が持っている袋へ入れていく。
今の時期が春なのかどうかは分からないが、ナズナやタンポポも生えていた。
「師匠、ナズナやタンポポの根っこって食べたことあります?」
「なんだいそりゃ……そんなもんただの雑草じゃないか」
「そうなんですけどね。取っていっても良いですか?」
「あたしは雑草なんて食べないよ。お前さんが食べるなら好きにしな」
「はい! ありがとうございます」
とりあえず、片手いっぱいのナズナと、いくつも失敗しながら、どうにか抜けたタンポポの根2本を手に入れた。ついでに浄化をかけたら、都合のいいことに土とか汚れが落ちた。
薬草もナズナもタンポポの根も集まったので、師匠のお家に帰宅。
良い運動になるね。アラフォーには十分な運動量だな。
ナズナと根っこは俺の部屋(物置)に置いて、師匠の錬金部屋へと入った。
棚には少ないながらも、乾燥させた植物や液体が入った瓶などがあった。
机の上に、カセットコンロのような物と真っ黒な鍋のような物が置いてあった。
「これからポーションを作るよ。お前さんは、邪魔にならないところで見てな」
「了解です!」
師匠は採ってきた薬草を鷲掴みして、鍋の中へ。
生活魔法の飲み水生成を発動し、鍋の半分くらいまで水を入れ、カセットコンロのようなものに手を当て火をつけた。
火加減は、中火くらいかな。
しばらくすると、沸騰してきて、ヨモギの良い香りがしてきた。
師匠は、鍋をかき混ぜながら、様子を見ている。
すると、火を止めて、ふぅと息を吐いた。
「あとは、冷めたあら薬草を絞って完成だよ」
「案外簡単なんですね」
「そう見えるだろうね。でも色々と気をつけなきゃいけないことがあるんだよ」
「この方法以外のポーションの作り方ってあるんですか?」
「さぁね。あたしはこの方法しか教えてもらってないから知らないよ」
「そうなんですね……」
うーん……お茶みたいに、乾燥させて粉末状にして抽出したほうが楽な気がする。
布があれば……あ、ハンカチあったな。
ちょっと試させてもらおう。
「あの師匠、試してみたいんですがやってみても良いですか?」
「はっ下働きがポーションを作れる訳ないじゃないか。まぁ、どうせうちのポーションなんてギルドに売っても二束三文なんだ。やってみな」
「ありがとうございます!」
師匠のポーションが完成した後に挑戦することになったので、とりあえずハンカチを持ってきて浄化かけたり、薬草を浄化し乾燥をしたり、下準備しておいた。
カセットコンロのようなものは、魔道コンロと言うらしい。
これは小さな魔石が入っていて、魔力を流すと一定の火力を維持する魔道具らしい。
真っ黒な鍋は、小さいながらも錬金釜というとのこと。ま、俺の中では鍋ってことで。
師匠のポーションは濃い緑色をしていた。
味は、まんまヨモギ汁で苦味があった。
これ効果あるのかな……まぁ師匠があるって言ってるからあるんだろうね。
さて、やってみようか。
まず、鍋に水をいれて、火をつけて沸騰させる。
沸騰したら乾燥させた薬草を手で揉み、パラパラと入れていく。
分量は師匠が鷲掴みにしたくらいの量を乾燥させて入れてみた。
入れたら、弱火にしてかき混ぜ、様子をみる。
するとすぐに師匠が作った薬草を絞る前と同じ色になったので火を止める。
冷めるのを待って、瓶の口にハンカチを置いて、薬草の葉っぱを濾しながら入れる。
見た目の色は、お茶だな。
飲んでみると、美味しいヨモギ茶だった。
どうなんだこれ?
出来たのかわかんねぇ。
師匠を見ると、ヨモギ茶を飲むところだった。
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