第3話 教会と錬金術師訪問

 教会は、各ギルドが並ぶ場所の近くにあった。

 教会の入り口にはシスターが立っていた。


「すみません。田舎から出てきたのでお祈りしたいのですが」


「はい、どうぞお入りください」


「お布施が出来ず申し訳ありません」


「いえいえ、神は皆に平等でございます。それでもお気になるようでしたら、いつの日かまたお祈りに来た際にお願いいたします」


「ありがとうございます。稼いだら感謝とお布施をしに来ますね!」


 微笑むシスターに頭を下げ、俺は教会の中へと入っていった。

 中は、長椅子が両サイドにいくつか並んでおり、正面には女神の像が立っていた。

 あ、なんて名前の女神様か聞くの忘れた。

 まぁ、次来るときはちゃんと確認してこよう。


 俺は、女神像の前に跪き、手を組んでお祈りする。

 この方法があってるかは知らないが。

 気持ちが大事よな。


 女神様、唐突にこちらに召喚され追放された無職の譲司という者です。

 なんとか生きていきたいので、せめて生活魔法をください。

 生活が安定したらお布施も感謝もたくさんしに来ますので。

 どうか!なにとぞぉぉ!!


『え、なに? わ! 巻き込まれた人だ。なになに……あちゃー、追放されちゃったかぁ。ステータスは……あらら、悲惨だねぇ。しかも35歳か。こっちの人族の平均寿命って確か……50くらいだっけ? うーん、すぐ死なれて怨まれたら嫌だし、加護とかあげちゃおうかな? 私のせいではないけどっ。よし!えいッ!』


 何かめちゃくちゃなこと言われてるね。


『あ! こっちの声聞こえてるの? さすが異世界の子だねぇ! ならなら、いつか異世界のお菓子作ったらお供えしてよ!』


 はぁ、簡単なものしか出来ませんがね。

 加護とかなんかありがたい気がするので、安定したら持ってきますね。

 お供えってどこにすればいいんでしょうか?


『それは、どこの教会でもいいから、私の像の前に置いて祈ってくれれば貰ってくよ!』


 承知しました。

 わざわざありがとうございます。


『いえいえー! じゃ、死なないように頑張ってね!』


 はい、努力します。



 俺は目を開けると、少しざわざわしていた。

 どうやら、女神像から俺に向かって光が降り注いでいたらしい。

 あまり見ることのない現象のようで、神父さんやシスターさんにまたぜひいらしてくださいと熱い視線を送られながら、教会をあとにした。


 教会からある程度離れたところで、ステータスを確認する。


=========

名前:麦蔵 譲司 (ムギクラ ジョウジ)

年齢:35

職業:無職

レベル:1

魔法:生活魔法

スキル:なし

加護:プルメリア神の加護

=========


 あ、女神様はプルメリアって名前なんだね。

 加護ってそもそもなんだ? 内容とか分からないかな?


 俺は、指で色々ステータスウインドウを触ってみた。

 すると、生活魔法と加護の部分で詳細が確認出来た。


===========

生活魔法(浄化、着火、飲み水生成、乾燥)

プルメリア神の加護(スキルの取得がしやすくなり、魔力も向上する)

===========


 加護ありがてぇ!

 やっぱ安全面や衛生面で、平均寿命が50くらいになってるのかな?

 錬金術極めたら若返りとか不老不死とかの薬作れたりしない?

 まぁ何はともあれ、これで錬金術師の弟子入りさえ出来れば、とりあえずはなんとかなるでしょ!


 俺は意気揚々と錬金術師のもとへ向かった。



「はぁ? オッサンその歳で弟子入りとか舐めてんの?」


「えっと」


「えっとじゃなくて、ここみて分かるでしょ? 俺達で十分間に合ってるし、そもそも金貨1枚払えるのかよ」


「はい、すみませんでした失礼します」


 これ、入り口近くの錬金術師のところだと思うでしょ。

 東西南で同じこと言われたんだよね。

 オジサンに世間の風当たりが辛いです。

 残すは北のスラムか……。


 入り口から北までは、外周に沿って歩いていくので1時間程かかった。

 こっちは、日当たりが悪い。

 まぁ城やら貴族街の壁やらがあるからしょうがないんだろうけど。

 しかも、臭いし汚い。

 北に住む人達は、生活魔法とか使えないのかもしれないな。

 建物もなんかボロボロだし、地面に座ってる老人や子供もいる。

 みんな痩せてるな。

 そんなに仕事ないのかね。無いんだろうなぁ。

 夢破れた者達の溜まり場になっているのが北側なのかもしれない。


 そんな薄暗い北側でも1日中日の当たらない場所に錬金術師の店があった。

 周りと同じようにボロボロで木製の建物、雨漏りもしそうだし、風通しも良さそうですね。


 傾いているドアをノックし、声をかける。


「すみませーん、こちらに錬金術師の方いらっしゃいませんかー?」


 反応なし。

 ノックを続け、声をかけていたが、反応がないので、入ってみることにした。


 ドアを引くと、ギィーっと音が鳴り、バタンッと外れてしまった。


 あれ、もしかして俺がやっちゃいました?

 やばいやばい! どうしよ!


 俺が焦っていると、店の奥からコツコツと足音が聞こえてきた。


「誰だい? うちの店を壊すやつは」


「え、す、すみません! ドアあけたら壊れちゃって……」


 反射的に謝り、目にしたのは、ボサボサで艶のない銀髪ロングの疲れた顔をした20歳くらいの女性だった。


「なにボーっと突っ立ってるんだい? 何も用がないなら扉直して帰りな」


「す、すみません。扉は直しますが、俺、錬金術師になりたくて弟子入りに来たんです」


「弟子入りだぁ? あぁよく見りゃお前さんだいぶ歳いってるねぇ。東も西も南も門前払いだったからウチに来たんだね?」


「えぇ、よくお分かりで……」


「まぁここも長いからね。アンタみたいなやつは何人も見たよ。でも誰も弟子にしたことなんてないけどね」


「そ、そうなんですか……あの下働きで良いので雇ってくれませんか?」


「そう言う奴もいたが、すぐ辞めちまうんだよなぁ。どうせお前さんも一緒だろ」


「じ、自分もう行く場所ないんで、ここで住み込みで働かせていただきたい所存です!」


「また図々しいやつが来たもんだねぇ。しかも変な格好ときたもんだ。よく追い剥ぎにあわなかったねぇ」


 俺の今の格好が変か。

 確かに黒のトレーナーにジーンズ、スニーカー、ショルダーバックだからな。

 追い剥ぎって、ここにそんな元気のありそうな奴いなかったからなぁ。

 あ、もしかしたら女神様の加護のおかげもあるかもだけど。


「ど、どうでしょうか? なんでもしますので置いて貰えませんか?」


「はぁ……しょうがないね。こんなボロ屋で良ければ寝起きくらいさせてやるよ。ただし、こき使ってやるから覚悟しな」


「はい! そうれはもう! ありがとうございます!」


 こうして俺はなんとか寝起きする場所を手に入れることが出来た。

 ボロボロで埃もいっぱいで汚いけど。

 この女性もちゃんとすれば美人だと思うし、やる気が出てくるね!

 さすがにこの状況で下心なんて無いけどね。

 とにかく生きていけるようにやれる事をしよう! 


 

 





_____________________

いくつか質問頂きましたので、寿命の件やらを、あくまで平均寿命としてって感じに変更してあります。

主人公も50で死ぬみたいな考えも修正しました。



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