第2話 ギルド

 デンジャーゾーンを抜け出し、ようやくお店が並ぶエリアに入った。

 この辺りは、そこまで臭くない……そう、そこまで。

 まぁ、食品とかも売っているようだし、流石に気をつけるのかも。

 やはり、この城下町の入り口付近に、それぞれのギルドがあった。

 

 それぞれギルドには看板があり、冒険者ギルドは剣が交差している看板、商業ギルドは硬貨が入った袋の看板、魔道士ギルドは本が開いた看板が、建物の入り口に掲げてあった。


 俺は、商業ギルドに入った。

 中は、受付が3つあり、待合に長椅子がいくつかあった。

 病院とか薬の処方箋受付けている薬局のようだな。

 

 入ってすぐのところに、商業ギルドの制服を着た女性が立っていた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「えっと、田舎から来たもので、常識とか色々が分からないのですが、ここで教えてもらうことは出来ますか?」


「そうですね。そういった方はよくいらっしゃいますので大丈夫ですよ」


「良かった。すみませんがお願いします」


「承知しました。ではこちらの番号札を持って、お待ちください」


 そう言って渡されたのは、木製の番号札で3番と書かれていた。

 今更だけど、見たこともない文字だけど全部読めるな。

 何も持ってない俺だけど、転移特典なのかなんなのか、まぁせめて言葉も文字も理解できて良かったわ。


 俺は、番号札を持って椅子に腰掛けて、呼ばれるまで待つ。

 しばらくすると、呼ばれたので、受付に向かう。

 受付の所にも椅子があったので、それに腰掛け、受付の女性と向かい合う。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「あ、はい。田舎から出てきたもので、色々な常識が分からないんです。教えてください」


「承知しました。ではまず——————」


 教えてもらったことを要約すると……

 時間と曜日は日本と一緒。

 12カ月で1年。1月は30日固定。

 硬貨については、銅貨、銀貨、金貨、白金貨がある。

 商売について、お店を持つ、露店で商売する、行商するには、商業ギルドに登録が必要。

 魔物や賊を討伐して稼ぐなら冒険者ギルドへ登録。

 魔法が使えるなら、魔道士ギルドへ登録が必要。

 錬金術や薬師なら商業ギルドで登録しておけば、個人で取引しても良く、ギルドに薬を卸してくれればランクの査定にも反映される。

 また新製品を調薬または錬金した場合もギルドへ登録が必要。

 魔法については、後天的に取得することは難しいが、生活魔法なら教会で祈りを捧げることで取得できる。

 スキルは、後天的に取得するのが当たり前で、取得したいスキルを持つ人に弟子入りする必要があり、お金が必要。

 また取得するには数年かかり、スキルを使用しても光ってパッと出来る物ではないらしい。品質や手際が良くなる程度とのこと。

 週末には生活魔法が使える人達を集めて、道の浄化をするが、魔力量が多く無いので、商店やギルドを優先し、奥までは綺麗にならないらしい。

 

 こんなところかな。

 俺がこの世界の人間と同じなのかどうかは分からないが、とりあえずギルドへの登録と錬金術師への弟子入りを優先せねば。


「説明ありがとうございました。商業ギルドへの登録と錬金術師への弟子入りをしたいのですが、いくらあればいいですか?」


「そうですね、登録料は銀貨5枚、弟子入りはその師匠になる人次第ですね」


「銀貨5枚……あの、俺お金持ってないんですがどうすれば……」


「そうでしたか。そういう事でしたら、先に弟子入りのために下働きをして少しづつお金を貯めてはどうでしょうか?」


「なるほど。あのたぶんこの辺ではあまり見ない珍しいものを持っているのですが、それは買ってもらったり出来ますか?」


「珍しいものでございますか? どのような?」


 俺は財布に入っていたピン札の千円札を取り出した。


「コレです。異国のお金? 芸術品? のようなものです」


「ほぉ……綺麗ですね。人物画でしょうか」


「透かしも入っているんですよ」


「これは凄いですね。これなら金貨を出しても欲しい方がいそうですね」


「そんなに……買い取っていただけませんか?」


「承知しました。しかし芸術品となりますとオークションにかける必要があります。そのため今お支払いをすることは出来ません。オークションでの販売額の8割が貴方の取り分となりますので……」


「あ、そうなんですね。いつ頃になりますか?」


「オークションは基本的に月に2回開かれます。第2土曜日と月末ですね。次は月末のオークションとなりますので、来週には、お支払い出来ると思います」


「わかりました。それまでは師匠を探して、下働きしておけば良さそうですね」


「そうですね。この城下町には錬金術師は3名……いえ4名ですね。それぞれ東西南北にお店を構えていますので訪ねてみてください」


「どのような人か教えて頂いてもよろしいですか?」


「そうですね……この城下町の外への出入り口は1つしかありません。入り口に近い人の方が優秀と言えますね。ですので、南の錬金術師さんが1番多くの弟子をお持ちですね。東と西もそれなりに弟子をとっているようです。ですが北は……あまりこう言うのはなんですが、立地も良くありませんし、ほぼスラムですので、あまりオススメは出来ませんね」


「そうなんですね……。とりあえず、全部訪ねてみますね。あ、あと教会はお布施とか必要ですかね?」


「いえ、最初はお布施の必要はないと思いますよ。田舎から出てきたばかりですと、皆様お金がないですからね」


「それは助かりますね。早速行ってみようと思います」


「はい、ではお気をつけて」


 俺は商業ギルドを出て、教会へと向かった。


__________

イメージ


銅貨(100円)

銀貨(10,000円)

金貨(1,000,000円)

白金貨(1億円)

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