第5話 SP溜まっちゃうぅぅぅ!!!!

「成功したのか? モン娘化が……」


「がうがう!!」


「え!?」


 突然、女の子が俺に飛びついてくる。そのまま押し倒されると、彼女は俺の胸を枕にして、顔を擦り付け始めた。


「ちょ……やめ……」


「がうがうがう!!」


「どこ触って……」


「がうがう!!」


「あわわ!……」


 ま、まずい。モン娘化した少女は生まれたままの姿。対する俺も布一枚のほぼ生まれたままの姿……。

 この状況は非常にマズイ。側から見れば、完全にそういう行為にしか見えないだろう。


「本当に……やめて……ください……」


「ぐるる!」


 必死に抵抗するが、彼女の力は想像以上に強く、振りほどけそうになかった。それどころか、抵抗すればするほど、さらに力強く抱きしめられる。


「ちょ……まじで……」


「がるる……」


「ひぃ……」


 ダメだ……これじゃあ身動き一つ取れない……。

 そうこうしているうちに、少女の顔はどんどんと近づいてきて……そして……


「はむ……」


「あぁ……」


 首筋に噛みつかれた……。痛くはないけど、なんかゾワゾワする……。


「ぺろぺろ……れろぉ……」


 今度は舐められた……。

 ぬるりとした感触が、なんとも言えない快感を産んでいく……


「はぁ……はぁ……」


 それよりも、いやらしいのが胸の辺りで暴れている少女のツヤツヤとした髪の毛だ。くすぐったくて……変な気分にさせてくる。


「あっ……んぁ……」


 どうして……。髪が擦れてるだけなのに……これがサキュバスのカラダなのか……。


「がうぅ……」


「あぁ……」


 なんだか頭がボーっとしてきた……。体が熱い……。力が入らない……。


「がうがうがうがう!!」


「んっ……はぁ……! だめ!」


「がうがうがうがうがう!!」


「あっ……ああ……!」


 まずい……このままだとSP溜まっちゃうぅぅぅ!!!!


「お、モン娘化に成功したのか……って、うわぁ……キサマ、サキュバスだからってモン娘化したばかりの女子おなごに手を出すとは……しかも幼子おさなご……」


この声は……イズナ!


「だ、出してねぇよ! むしろ襲われてんの!」


「ふぅん……そうなんじゃな……」


「ニヤニヤしながら見てんじゃね! 早く助けてくれ!」


 イズナは口元を抑えて笑いを堪えていた。その顔は実に楽しそうである。


 ひとしきり笑うと、「仕方がないのう」と言いながら、イズナは一歩を踏み出す。しかし…………


 ザシュッ


 近づいてくるなと言わんばかりに、少女の爪がイズナの頬をかすめた。


「グルル……」


「……ちょ、ちょっと待て。お、落ち着くのじゃ」


「がう! がう!」


「へーそうかぁ……まださっきのことを根に持ってるんじゃなぁ……」


「グルル……」


「じゃ、じゃあなアオイ。あとは二人で楽しんでくれ」


 ビクビクと体を震わせながら、イズナはこちらに背を向ける。


「待てまて待て!! なに逃げようとしてんだ!」


「ダッテ ゼッタイ ソイツ ワシ コロス」


「モン娘は全員、眷属なんじゃなかったのかよ!」


「ああ……あれはまあ、KPがある時の話で……今は無理じゃ……」


「はぁ?」


 なんてことだ……。唯一使えると思っていた能力も使えないなんて……一体コイツにはなにができるんだ!?


「まあ、殺されるわけじゃなさそうじゃし、ことが終わったらワシを呼んでくれ」


「おいぃ! 待てぇぇ! 助けろ!」


 俺の悲痛な叫びに、イズナはただ一言、小さな声で返した。


「…………………………がんばれ♡」


 それだけ言い残すと猛スピードでイズナは走り去っていく。


「く、クソ! この裏切り者!」


「がうがう!」


 しかし、そのスピードを上回る速さで、少女はイズナの背中を追いかけていった。


「な、なに!? こ、こっちに来るな! こら! やめ……ぎゃあああ!!」


 森に響き渡るイズナの断末魔。

 死んだのではないかと思ったが、現場にはボロ雑巾のように転がっているイズナの姿があった。まだ息はあるようだ。


「ぐは……神になんてことを……神罰が下るぞ……」


「神罰を下すKPもないだろうが」


「うるさい! とにかく……助け……グフッ!」


 自分は助けようとしなかったくせに……都合の良い奴だ……。


「その人……一応利用価値のある人なんだ……命だけは見逃してあげてくれないかな……」


「がうがう……」


「うん……ありがとう……」


 渋々といった様子だが、どうやら納得してくれたらしい。

 少女はイズナの首元から手を離すと、こちらに向かって歩いてくる。


「なんか、とてつもなく酷い扱いをされた気がするのじゃが……」


「気のせいだよ」


「ぐぬぬ……」


「それより、早く街を探そう」


「そ、そうじゃな……」


 俺たちは再び歩き出そうと腰を上げる。すると、少女がまるで着いてこいと言うように振り返り、小さく鳴いた。


「がう!」


「え? ついて来いって?」


「がうがう!」


「それ、言葉は通じてるのか?」


「たぶん……どうする?」


「まあ、犬は賢いというからのう。ついて行ってみようではないか」


「そうだな……」


 言葉が通じているのだと信じ、俺たちは四足歩行の少女を追った。

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