第6話 実家に帰省するミッション:妹からの電話

 家に帰って夜ご飯の準備をしていると携帯に一本の電話が入った。


 電話の相手は妹だった。


 俺は火を止め、電話に出る。


 「もしもし、どうした?」


 「もしもしお兄さん。元気にしてた?」


 「もちろん。かえでは?」


 「元気にしてたよ!」


 今更だが、俺の家族を紹介する。


 両親に、俺が長男で高校1年生の妹と中学2年生の弟がそれぞれいる。


 電話をかけてきたのは妹の楓であった。


 「それで?どうした?」


 「お兄ちゃん最近帰ってきてないでしょ?颯太そうたも寂しそうにしてるよ」


 颯太とは俺の弟だ。


 「帰りたいんだけどな……。仕事増えちゃって中々帰る暇がないんだよな」


 俺が冒険者になったのはほんのきまぐれだった。


 両親は共働きでお金の心配もない。


 今は俺の稼ぎを家に入れているため、母親が仕事を辞めようとしているくらいだ。


 「電話でもいいけど、顔も見て話したいよ」


 「そうだな〜。もう少ししたら都合つけて帰るからそれでいいかな?」


 「今回はそれで見逃してあげる」


 美咲が友達を連れてきた時に俺がいなかったらダメだろう。


 『転移』スキルは創造して作ったが、魔力酔いして1日ダウンしてしまうことが判明しているので、使えない。


 実家は石川県なので新幹線で2時間30分位で着く。


 「ごめんね。なるべく顔を出すようにするよ」


 「はいはい〜期待せずに待ってます〜」


 実家に帰る帰る詐欺しすぎたせいで信頼は底についている。


 「じゃあ、帰る時また連絡するね」


 「わかった!ばいばい〜」


 「おやすみ」


 電話を切ってご飯の準備を再開させる。


 急遽、実家に帰るというミッションが発動したが、家族は大切にしたい。


 メンバーが揃ったら落ち着くと良いな。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 「おやすみ」


 そう言って電話が切れた。


 「姉ちゃん。兄ちゃんなんて?」


 「時間作って帰ってくるって」


 颯太は、お兄ちゃん大好きっ子である。


 「ほんと!?やったね!」


 嬉しそうに台所にいるお母さんに報告しに行った。


 お兄ちゃんは、ダンジョンができ、一般開放されたあの日、急に東京に行くと言い出した。


 幼馴染の奏お姉ちゃんと一緒に東京に向かい、2年たったある日から家にお金が沢山入るようになった。


 両親もお兄ちゃんから詳しく話を聞いていない様子で、S級冒険者になったと聞いたのはつい最近だ。


 私たちにも構ってあげれなくてごめんって言いながら学費や今後の必要経費まで振り込んでくれている。


 家庭を顧みず、仕事ばかりする夫のような振る舞い方だが、お母さんが仕事を辞め、一緒にいる時間が増えたことは嬉しい。


 颯太は、「おにいちゃんかっけ〜」とずっと言い続け、将来冒険者になることを夢見ているんだとか。


 私もお兄ちゃんと一緒に仕事がしたいなぁ……。


 最近では女性が戦闘スキルを授かる確率が低いことや、戦闘スキル持ちが優遇されていることなどから、女性の冒険者率が減っているらしい。


 私の同級生も冒険者は忌み嫌っている。


 しかし、お兄ちゃんが非戦闘スキル持ちしか入れないクランを作ったって聞いた。


 流石私のお兄ちゃん!優しい!


 私が冒険者になりたいって言ったらお兄ちゃんは何て言うだろうか……。


 それより両親を説得できるだろうか。


 不安でいっぱいだが、最悪お兄ちゃんを頼ろう!


 日本で1番強い人の元に行くから安心、安全だって言えば納得してくれるのではないだろうか。


 しかも身内だし。


 冒険者になりたいなんて思わなかったけど、やる気が湧いてきた。


 まずは、両親を説得するところから頑張ります。

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