第7話 S級の仕事:クランメンバー集まる!
妹の楓から電話がかかってきた翌日、起床すると、冒険者受付嬢の奏からメッセージが入っていた。
内容として、美咲が友達を連れてくるということだった。
現状、非戦闘スキル持ちはダンジョンに見向きもしていない。
美咲の友達がどのような反応をしたかは定かではないが、よく決断したものだ。
顔合わせは夕方からになるそうで、午前中はダンジョンの巡回を行う。
ダンジョンの巡回とは、『間引き』とも言われ、ダンジョン内の魔物を一定数倒すことが求められている。
ラノベやアニメを参考にしたそうだが、世界共通で間引きを義務化することが功を奏したのか、スタンピードはまだ起こっていない。
日本冒険者協会が開発・運営しているアプリには、ダンジョンに関するニュースや、クラン対抗戦に関する情報など、様々な情報が載っている。
その中に、『ダンジョン攻略度情報』があり、日本にあるダンジョンの攻略情報がリアルタイムで見られるようになっている。
俺のS級の仕事の1つに攻略が進んでいないダンジョンに潜り、一定数攻略することが挙げられる。
他にも細々とした仕事はあるが、主な仕事はダンジョンの間引きだ。
さっそくアプリで見てみると『瀬戸内海ダンジョン』が最も探索が進んでいないことがわかった。
瀬戸内海ダンジョンは、水中にあるダンジョンで、酸素ボンベのようなアイテムを持っていないと探索できない。
他にも、水中での戦闘訓練を受けないとあっさりと死亡する危険もあるA級ダンジョンだ。
ダンジョン内で獲れるアイテムや魔物の素材は人気が高く、A級ダンジョンということもあり、高値で取引される。
過去に何度か潜ったことがあるので、何の問題もないだろう。
・
・<ダンジョン内で無双しています>
・
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
何事もなく無事に間引きが終了した。
ちなみに移動は、短距離転移を数回行い、適宜休憩しながら移動した。
いい加減、転移酔いに慣れないといけないと自負していることから、積極的に使うようになった。
ダンジョン内で獲れた素材を『瀬戸内海支部』に売り、遅めの昼食をとりつつ、東京に帰還した。
これから美咲の友達と顔合わせを行う予定だ。
ご飯を食べ、シャワーを浴びて新宿支部へ向かう。
新宿支部についていつもの会議室に入ると、もう皆揃っていた。
中に入ると、奏と美咲、美咲の友達であろう、眠たげな顔をした少女が座っていた。
「ごめん。遅れた」
「ええ。大丈夫よ。はじましょう」
まず初めに、美咲の友達が口を開いた。
「……友美」
え?それだけ?と思ったのも仕方がない。
美咲がすかさずフォローに入ってくれた。
「この子は友美って言います。口数は少ないですけど、いい子なんです!」
猫っぽい子だなとは思うが、口には出さない。
「それで、スキルは聞いても良いのかな?」
「……『分身』」
「ほぉ……」
思わず唸るほど珍しいスキルだった。
『分身』スキルは文字通り分身するスキルだが、2人にしか分身できない上に攻撃は自力でするしかない。
ロマンはあるが、ダンジョン内において実用性はないスキルである。
「ど、どうですか?」
分身スキルは、鍛えれば化ける。というか、スキルは鍛えてレベルが上がれば化ける物ばかりだ。
しかし、非戦闘スキルは足手纏いとしてダンジョンに潜れず、データが揃っていないのが現状である。
「もちろん。友美ちゃんがよければぜひ入ってほしい。歓迎するよ」
「……感謝」
ぺこりと軽く頭を下げ礼を述べる友美。美咲はホッとした様子だった。
「では、これで目標人数に達したことになるわね」
「ああ。思ったより早かったよ」
クラン『影に潜む者』
・リーダー:俺『創造』
・メンバー:美咲『付与』
穂乃果『変身』
友美『分身』
・サポート:奏『鑑定』
以上が、初期メンバーである。
「今後はどうするの?」
「できれば後1人募集したいけど、最悪奏に入ってもらって……」
「そうねえ。楽しそうだけど、私スキルレベル高いでしょ?だからこの子たちを先に鍛えておいて。引継ぎ終わったら入っても良いかしら?」
「え?いいの?この前ダンジョン潜る気ないっていってたけど……」
「ええ。安定職に就くと賭けに出るのも不安になるの。でもあなた達を見てるとなんだか可能性ありそうだし、なによりダンジョン初期組として潜りたい気持ちも高いの」
「そっか。ならよろしく頼むよ」
「任せてちょうだい」
奏が入ってくれれば、安心だ。女性しかいないパーティーに相談役として不足ないし、頼りになる。
「今後だが、顔合わせも含めて歓迎会でもしないか?」
「え、いいんですか?」
「……したい」
「もちろん。ご家族も連れてきてもらってもいいぞ。挨拶しておきたいし」
親としても不安であるだろうし、美咲の場合は祖父母だ。
孫は可愛いだろうし、少しでも不安は解消させておきたい。
「賛成よ。場所はどうするの?」
「使ってないあの屋敷でいいだろ」
「ああ。あの屋敷ね」
2人は首を傾げて不思議そうにしていたが、いわゆる報酬でもらった家である。
「場所は追って連絡するよ。2人とも大丈夫そう?」
「だ,大丈夫です!」
「……ん」
2人とも頷いているので大丈夫だろう。
「じゃあ友美ちゃん。これからよろしくね」
「ん……よろしく」
そうして、クラン『影に潜む者』は異色の非戦闘スキル持ちクランとしてスタートを切ったのであった。
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