第4話 スキルの仮説:今後の展望

 美咲がクランに加入することが決定した。


 さらに、友達も連れてきてくれるみたいだ。


 太陽が沈みかけ、辺りが暗くなる前に美咲を家に帰し、奏と今後の話をする。


 各クランには所属本部または支部の全面的なバックアップがつき、依頼の受付、クランメンバーの勧誘などのクラン運営をサポートしてくれる。


 俺のクランには奏がついてくれるそうで、ありがたい限りだ。


 「さて、今後の話をしていきましょ」


 「そうだな。現状、美咲のようにお金を必要としている子がスキルのせいでダンジョンに入れない子がたくさんいると思う」


 「その通りね。ダンジョンという宝の山。ダンジョンにきてスキルを取ろうとした子が今更一般職に就くとは考えにくいわ」


 「ああ。ダンジョンに入ることは強制ではないからな。何らかの事情でダンジョンに入ってお金を必要とする子がいざダンジョンに入ると非戦闘スキルで路頭に迷っている子も大勢いるだろう」


 今では、世界長座番付において冒険者がトップ10を占めているのが現状だ。


 謎のJapanese boy として世間を賑わしている俺もその1人だが……。


 「何か考えがあるの?」


 「俺の目的は非戦闘スキルの名誉と地位向上だからな。動画配信サイトで戦闘中の動画を公開することは考えている」


 今や、動画投稿サイトにはダンジョン探索系の動画しかないといった具合に、人気がある。


 「まあ、動画を投稿するとなるとメンバーを揃えて、尚且つ戦えるようにならないと始まらないがな」


 非戦闘スキルは名の通り非戦闘。攻撃するスキルではない。


 ……とされている。が、これは間違いだ。


 スキルレベルを上げると、上位スキルとなり、攻撃力や使用MPが減少したりするのが一般的だが、非戦闘スキルも同様に上位スキルが存在する。


 スキルレベルを上げる方法は、まだ解明されていない。


 魔物を多く倒せばスキルレベルは上がるという最もらしい仮説をWDMOは公表しているが、効率的ではない。


 俺の仮説は、自分のレベル*2以上の魔物を倒せば必ずスキルレベルがあがること。また、使用回数も大きな要因となっている可能性もある。


 俺は『創造』スキルで『鑑定』スキルを持っているため、魔物のレベル等を認識できるが、他の冒険者は鑑定スキル持ちをダンジョンには連れて行かないため、正確なデータがない。


 俺の仮説が正しければ、最短で強くなれると確信している。


 このことを奏に説明すると……。


 「……とんでもない話ね。俄かに信じられないわ」


 「まあ、鑑定スキル持ちがいないと話にならないからね」


 「このこと公表すれば一定の地位向上が見込めそうじゃない?」


 「鑑定スキルはな。だが、俺は非戦闘スキル全体を対象としている。それではだめなんだよ」


 俺は、ソロで何度も強敵と戦ってきた。もちろん倒すのは戦闘スキルだが、魔物の調査、ダンジョン内の罠の感知等、長いダンジョン探索において非戦闘スキルの重要性を理解したし、助けられたりした。


 俺がS級冒険者で、非戦闘スキルは必要だと世間に伝える方法もあるが、それでは意味がない。


 第3者、複数人が戦えてその有用性を見せつけることこそ世論をひっくり返す最高の手段と考えている。


 「奏も俺が持ってきたアイテムを鑑定しまくってたらレベルが上がっただろ?」


 「ええ。鑑定スキルがここまで有能だったとは思わなかったわ」


 「奏は最初のダンジョンに潜って以降ダンジョンに入っていないのに、レベルが上がっている。このことを考えたら非戦闘スキルは日常でもスキルレベルを上げる方法が他にもありそうだな」


 「ええ。一緒に考えて行きましょ」


 「ああ。頼りにしてるよ」


 そこから、奏と今後について話し合った。


 決まったことは……。

 ①メンバーを美咲+3人集めること。

 ②非戦闘スキル持ち専用掲示板作成(奏主導)

 ③ダンジョン探索(俺の仮説検証)

 ④動画配信


 「そして、クラン対抗戦に出場して注目を一気に集めよう!」


 「ええ。今から楽しみだわ」


 基本的な方針を定めた所で、メンバーを勧誘するため、E級冒険者ボブとしてダンジョンを探索することとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る