第1章 クラン創設編

第1話 夢への第一歩:クラン創設

「ついにこの時がきたわね」


 『新宿』支部に入り、声をかけてきたのは、幼馴染の『佐藤さとう かなで』である。


 肩まで伸ばした黒い髪に、はっきりとした二重まぶた。薄化粧でも美しい人気受付嬢である。


 彼女は、スキル『鑑定』を授かり、受付嬢の道を歩んだ。


 いや……歩まされたと言った方が適当かもしれない。


 ダンジョンから持ち出された魔物の素材、宝箱から出てくるアイテム、スキル書etc.。どれも未知の物でどれほどの価値があるのかも見当がつかないことから、国はスキル『鑑定』を持った者を冒険者本部に囲い入れた。


 ダンジョン解放から、5年たった今現在では、鑑定者の数も揃い、囲むこともなくなったのだが、奏は、ダンジョンに入れるようになったと同時に鑑定スキルを授かったので、受付嬢として働いて今に至る。


「ああ、ようやく非戦闘スキル持ちが日の目を浴びることができるようになるぞ」


 S級に到達した今、お金も困ることなく普通に生活を送れるようになった。


 また、最高ランクとして国の顔とも言える立場にあるので下手な横槍も入ることも減るだろう。


 そこで俺は、『非戦闘スキル』所持者のみで構成されたクランを創設し、世間・世界の価値観をぶっ壊すことを次の目標に定めた。


 今日は、そのクランを創設するために冒険者支部にやってきたのである。


「じゃあ、クランの説明をするわよ」


「頼む」


――――――――――――――――――

 クランとは、B級以上になった冒険者が、創設することができるコミュニティである。


 冒険者本部は2組、支部は1組しか創設することができず、一種のステータスとなっている。


 目的として、気のあった人物を勧誘したり、将来見込みのある人物を勧誘したり……。


 その中でも1番の理由が『クラン対抗戦』である。


 クラン対抗戦は、国が主導で開催される、お祭りである。


 クラン側は、その場でアピールし、企業等から仕事を依頼されたり、クラン加入者を募ったり……。


 国としては、賭博が行われ、その一部手数料を受け取ったり、対外に戦闘力をアピールし、牽制したり……。


 双方メリットが大きいことから、開催される運びとなった。


 クランにも階級があり、D級からA級までの中で、普段のダンジョン攻略の功績や、クラン対抗戦の実績等を踏まえ、階級が上がっていく。


 逆に、功績も、対抗戦実績も芳しい場合、クラン解散が言い渡され、不名誉な情報も付き纏うこととなる場合もある。

――――――――――――――――――


「理解できた?」


「ある程度は理解できたぞ」


「そう?ならクラン創設しましょうか」


 ここ、新宿支部では1組しかクランを創設することができない。


 東京で唯一クランを創設していなかったのが新宿であったことから、上から早くしろと言われ続けられていたらしい。


「奏も入るか?」


「いえ、私は今の生活に慣れちゃって。今からダンジョンに入って戦うのも怖いしやめておくわ」


「そうか……」


「だけど、大丈夫なの?非戦闘スキルだけじゃ戦えないと思うのだけど?」


「その心配はいらないぞ。俺が身をもって戦えることを証明することができたからな」


「あなたのスキルは本当出鱈目よね……」


「ああ、『創造』スキルな」

――――――――――――――――――

『創造』

 ・MPマジックポイントを消費して新たなスキルを創造することができる。

――――――――――――――――――


「あなたが国に囲まれなかったのが本当によかったわ」


「すぐに『偽装』スキルを創造したおかげさ」

――――――――――――――――――

『偽装』

 ・ステータスを任意に操作することができる。スキルレベルが低いと看破される。

――――――――――――――――――


「いわゆる“チートスキル”ってやつだな」


「本当ね。羨ましいわ」


「まあ、これからは非戦闘スキル持ちの人たちにも夢とか希望を持たせられるように頑張るさ」


 奏のように、国に囲われ職を手にできた鑑定スキル持ち以外の人々はどうなったのか……。


 スキルはアイテムを手に入れない限り1つのまま。さらにダンジョンにはパーティーで入ると魔物を倒してもらえる経験値が均等に与えられることとなっている。


 戦闘もしないで鑑定だけする人をゲームならまだしも、現実世界で命をかけて戦っている者たちからすると忌み嫌うのも当然である。


 よって鑑定スキルも冷遇扱いされているのが現状だ。


「頼んだわよ。精一杯サポートさせてもらうわ」


「ああ、よろしく頼むぜ」


 非戦闘スキルは、鑑定スキル以外にも沢山ある。


 現状、戦闘スキル所持者のみが富と名誉を得ており、非戦闘スキルは心に傷を負って冒険者を辞めていった者が多く存在する。


 常に強敵と戦って勝利してきた雅人は、下剋上することが快感となっており、熱い想いを持ってクランを創設することを心に決めた。


「クラン名はどうする?」


「そうだな……。『影に潜む者』でいいよ」


「なんだか悪の組織のような名前ね」


「俺にネーミングセンスを求めるんじゃない」


「あら。ごめんなさい」


 そうして、非戦闘スキルが地位向上、名誉挽回を目指すクラン『影に潜む者』が創設され、雅人の夢への第一歩を歩み始めた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

<主人公簡易ステータス>

【名前】天豪 雅人


【年齢】23歳


【レベル】618


【HP】3058/3058


【MP】10476/10476


【固有スキル】創造


【スキル】鑑定Lv.10

     偽装Lv.10

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ステータスは登場した物のみ、随時更新、反映させていただきます。

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