第2話 『変身』スキル:E級ボブとして潜入
非戦闘スキル地位向上へ向けてクランを創設した俺が今何をしているのかというと……。
「おい!
「は、はいっす」
「お前は万年E級のクソ雑魚ボブなんだから、コキ使って貰えるだけ感謝するんだな!」
「は、はいっす」
さきほどから「は、はいっす」と言いながらコキ使われているのが、今俺がスキル『変身』で姿を変えている、帆武尾こと『ボブ』である。
ボブはスキル『アイテムボックス』を持っており、荷物運びをメインとして『新宿ダンジョン』を探索している。
アイテムボックスは初期の頃、有能スキルとされていたが、宝箱から『マジックバック』が出現して以降、冷遇され、マジックバックを買えない主にE級〜C級のパーティーの荷物持ちとして活動していることがほとんどである。
マジックバックは、最低50万円〜とされており、武器のメンテナンスや、家賃等生活必需品など必要出費が嵩むことから、階級がB級にならないと、買えない代物となっている。
さて、なぜS級の俺がこんなことをしているのかというと、非戦闘スキルもちの捜索と、人物調査のためである。
鑑定スキルで非戦闘スキル持ちを探し、荷物持ちでパーティーに同行し、非戦闘スキル持ちの人物像を調査する。
そう、クランの勧誘の為である。
また、戦闘スキル持ちにおいて、ダンジョン内で危険行動等、素行の悪い者の調査を行い、冒険者支部に報告するためでもある。
未だ解明されていないが、初期スキルにおいて非戦闘スキルを授かるのは女性が多い傾向がある。
普段の生活行動の影響なのか……。
ダンジョンに対する想いなのか……。
真相が明かされるのはまだまだ先の話であろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
新宿ダンジョン内では特にトラブルもなく、新宿支部に帰還した。
「ほらよ。今日の報酬だ」
「は、はいっす」
今日同行したパーティーのリーダーから手渡されたのは2,000円である。
荷物持ちとして同行した場合、多くて全体の1割、基本的に1,000円や2,000円といった固定金額をもらうことが多い。
「気持ち悪いやつだぜ。じゃあな。万年E級のボブよ」
「は、はいっす」
男はそう言い残し去っていった。
俺は、物陰に隠れ、変身スキルを解いた。
「ふぅ。疲れたな」
「お疲れ。どうだった?」
声をかけてきたのは、幼馴染で新宿支部で受付嬢をしている奏だ。
「うーん。言葉は荒いけど、普通の男だったよ。真面目に挑めばC級くらいまでいけるんじゃないかな」
「そう。非戦闘スキルの子は?」
パーティーには、『剣士』スキル持ちのリーダー、『火魔法』持ちの魔法使い、『罠感知』持ちの非戦闘スキル持ちがいた。
「うーん。悪い子ではなさそうなんだけど、リーダーの女じゃないかな?」
「あー。なら望みは薄そうね」
「だねー」
「あ、そうだ。クラン創設したこと、公表しないといけないんだけどいいよね?」
「うん。非戦闘スキル持ちのみ募集することもちゃんと明記しておいてね」
「もちろん。階級は伏せとく?」
「んー。俺目当てでここが迷惑かかるのも嫌だし、まだ隠しておいていいよ」
「そう。わかったわ。じゃあそろそろ仕事戻るわね。お疲れ様」
「奏もお疲れ様」
そうして、奏は受付へと戻っていった。
「うーん。そもそも非戦闘スキル持ちはダンジョンに潜ってすらいない可能性の方が高いかもな」
ダンジョンが一般解放されて5年。非戦闘スキルはいらないという情報がネットを通じて広がっている。
わざわざダンジョンにくる必要もないのだ。
「これは何か募集する案を考えないと……」
冒険者支部がクランの情報を出して人が集まってくれればいいけど……。
俺は、当分ボブ生活をしながら人材が集まってくるのを待つのであった。
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