第9話 科学部始動の為の準備
何というか.....この部屋だが。
科学に満ちている。
何というか科学用品は僅かしか無いが.....でも論文が磁石でくっ付けてあったりしたりしている。
そんな光景を見ながら俺はユニを見る。
ユニは憂ちゃんがかなり詳しい事を歓迎している様だ。
「ユニさんがこんなに科学の文献に詳しいとは思わなかったです」
「私もビックリだね。.....こんな事を同じ目線で話せる仲間は居なかったからね。正直、居なくなった仲間も.....私と話が合わなかったから逃げて行ったんだろう。だから本当に心から感謝している」
「.....」
そうか.....ユニは頭が良過ぎるんだな。
それ故の孤独。
つまり逃げられたという事だろう。
俺はそんな事を考えながらユニを見る。
するとユニは、小路。部員としてどう思う。彼女を、と言ってくる。
いや。やっぱり入った前提かよ。
「良いとは思うけど.....良いのか?憂ちゃん」
「.....うん。私は入ってみたいです。おにーさん」
「.....そうか.....なら入ったら良い。きっと楽しいと思う」
「はい」
「.....所で何故に君はおにーさんと呼んでいるのかね?憂さん」
「.....私からしてみればおにーさんの立場かなって思ったんです」
それから俺を見て笑みを浮かべる。
どういう事だ?
俺は?を浮かべながら憂ちゃんを見る。
すると憂ちゃんは、私はおにーさんが年上に見えるからです、と答えた。
そして柔和になってくる。
「成程。.....まあそれは憂ちゃんの自由だと思う。.....良い事だと思う」
「.....有難う」
「.....私も義兄が居るが.....話が噛み合わないからね。.....君達が羨ましく感じる」
「.....ああ。居たな。確かにお前さんには」
「そうだね。とは言え私にはあまり干渉して来ない。それは良い事なのかもしれないが.....話をしたい時に話せないのもあるから寂しさも感じるね」
成程な、と思いながら俺はユニを見る。
そして憂ちゃんを見る。
憂ちゃんは、それはそれで確かに寂しいですね、と悲しげな顔をする。
関係無いかもしれないですけど兄は2回目であって.....冷たかったし.....それに何だか歪でした、と答える憂ちゃん。
「.....君は兄は2回目なのか」
「盗撮とか酷かったですけどね。まあ.....でもおにーさんは話が別です。.....私が好きになるぐらいなので」
「.....そうか。.....君は本当に大切にされているね。小路」
「まあ.....うん。ちょっと恥ずかしいけどな」
「.....その恥ずかしさは大切にした方が良いと思うな。.....君が愛されている証だ」
俺はそんなユニの言葉に苦笑いを浮かべる。
それからユニは、では入ってもらっても良いのかな。憂さん、と聞く。
すると憂ちゃんは、はい。勿論です、と頷いた。
そしてユニと笑顔で握手をする。
ユニは控えめな笑みで手を繋いでいた。
「.....ユニ。良かったじゃないか。分かち合える様な人が出来て」
「そうだな。.....私は望んでいたのかもしれないな。.....彼女の様な人材をね」
「.....そうか」
「.....さて。しんみりしていても仕方が無い。先ずは顧問の先生の所に行こう」
「.....そうですね」
「確かにな。.....ってか顧問って誰だ?」
女性教諭だよ。
因みに科学とは無縁の存在でもある、と回答するユニ。
俺は?を浮かべてユニを見る。
するとユニは、元は文芸部の先生だからな、と言った。
ああ成程な。それは無縁だな。
「.....じゃあユニさん.....その先生は素人ながらも手伝ってくれたって事ですか?」
「.....そうだな。その女性顧問には.....本当に頭が上がらないと思っている」
「.....ユニに付き合ってくれるなんて良い先生だな」
「オイ君。それはどういう意味だい」
「え?.....あ.....わ、悪い意味じゃないぞ」
それから慌てながら俺は否定する。
ユニはその俺の姿を見ながらクスクスと笑う。
俺はその姿を見ながら溜息を吐いた。
そして俺達は移動してから職員室にやって来る。
そうしてからドアを開ける。
「あ。.....ユニさん.....と?」
「.....初めまして。長道小路です」
「私は長道憂です」
「.....ああ!長道くんと義妹さんね」
そこに20代ぐらいの女性の教師が居た。
丸メガネをかけている美人だ。
俺はその先生の姿を見ながら、確かに文芸部っぽいな、と思った。
だけど文芸部じゃ無いと言っても通用するような?
「初めまして。顧問の江口美空(えぐちみそら)って言います。現文専門です.....」
「え?文系専門って事は.....」
「はい。科学は分かりません.....」
「.....」
「.....」
これは先が長そうだな.....。
涙目になる先生。
可愛らしいその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。
するとユニが腰に手を当てる。
それでは早速だが.....中間テスト後に科学館に行こうと思う、と切り出す。
「.....え?早速だな」
「それはまあ科学に浸ってもらう為だよ。ははは」
「名案ですね。ユニさん。宇宙理論とかに興味湧きます」
先生はビックリしながら俺に耳打ちしてきた。
もしかして憂さんは頭が良いんですか?.....的な感じで。
俺は、そうですね。まあどうやらそうみたいです、と答える。
ユニは.....本当に楽しそうに頷いていた。
こうして.....俺達は正式に部員となる事になった。
科学なんぞ全く分からないが、だ。
取り敢えず俺は雑用として働こう.....。
そんな事を考えながら居ると。
ユニがこう切り出した。
「だがまあ.....先ずはお付き合いを始めさせる事か。私がやるべき事は」
「.....はい?」
「小路。君には感謝している。.....何時も何時も。だからその分お礼がしたい」
「.....何のお礼だ.....?」
「つまりは憂さんを好きになる様に君にあれこれ人間科学的に仕組ませてもらうよ」
「.....いや。.....あのな?.....余計な事をするなよ?ユニ.....?」
そんな言葉を話しながら俺はタラタラと汗を流す。
嫌な予感しかしない。
思いながら横に居る憂ちゃんを見る。
憂ちゃんは目を丸くしていたが.....理解して赤面した。
ちょっとだけ。
「青春ですね」
「.....先生も止めて下さい.....」
「いえいえ。.....あはは」
そしてクスクスと笑って笑顔を見せる江口先生。
それから俺達は4人で部室に戻る。
片付けをする為に。
その間.....ユニを監視していた。
嫌な予感がしてならない.....。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます