第8話 おにーたん♡
「おにーさん」
「な、何だ?」
「おにーたん」
「.....止めろ。何やってんだお前はユニ」
放課後の事。
そんな感じで呼び止められた俺。
何事かと思いながら背後をジト目で見る。
ユニはともかく憂ちゃんは何用かな。
「ユニさんの部活が面白そうなので付いて行くんですけどおにーさんも来ますか」
「.....は?ユニの部活?.....ユニの部活って何.....?」
「私の部活は科学部だよ。君は知らないのかい小路」
「.....知らん。初耳だぞ.....」
「.....そうか。君に話してなかったか。.....この前創設した」
それも初耳だ。
俺は???を浮かべながらユニを見る。
ユニは顎に手を添えながら俺に、そこで、だ。.....科学部に君も入ってほしいのだが、と言ってくる。
俺は、いや。何でだよ、とツッコミを入れる。
馬鹿と天才だったら化学反応が起こるぞ.....嫌だ。
「安心したまえ。君にはざt.....じゃなかった。.....天才的な事をさせてやろう」
「雑用って言わなかったかお前」
「.....ふむ。そんな事は言ったつもりはないが」
「.....」
俺はユニを見る。
まあ確かにコイツはマジに頭が良いもんな。
考えながら、入るか入らないかは別にして見せてくれよ。部活、と聞いてみる。
すると、私も行きます、と笑みを浮かべる憂ちゃん。
そうか。有難う、とユニは言う。
「.....場所は何処だ?ユニ。やっぱり理科室か?」
「ふむ。そんな大それた場所ではないな」
「.....え?科学部だろ?」
「まあ科学部ではある。.....だが教室は貸してくれなかった。.....なので滅んだ文芸部の教室を借りている」
「え?それって実験出来るんですか?」
科学は未知数だ。
だから何処でも研究は出来る、と胸を張るユニ。
それで良い気はしないが.....良いのか。
思いながら俺はユニを見てみる。
ユニは、君は何か考えているね?これでは無謀だと、と言葉を発した。
「.....大丈夫さ。.....科学部は論文を読んで研究するのもアリだと思うから」
「いや。俺にはさっぱり分からんぞ。論文とか。やっぱり役に立たない.....」
「それってどんな論文ですか?」
「.....おや?君は興味があるのかね?憂さん」
予想外の言葉を憂ちゃんが発した。
俺は憂ちゃんを見る。
すると、大学院生が書いた論文だ。宇宙工学の教授が書いた論文などもある、と話をし始める.....2人。
まさかの展開だった。
というか憂ちゃんてまさ.....か?
「憂ちゃん。君頭が良いの?」
「頭が良いって程ではないですよ。おにーさん。.....まあ学年1位ではありましたが。たかがそれだけです」
「ユニ.....良かったな。俺はもうおさらばだぞ。頭の良い奴らで付き合え。俺は無理だ絶対に」
「.....ふむ?君は何を言っているのかね。ばか.....じゃなかった。.....そういうムードメーカーも必要だと思うんだがね」
「馬鹿って言ったな。お前.....」
まあそう言ってしまったのは失礼に値するね。
酷い事を言ってしまったすまない、と頭を下げるユニ。
そして、でも良いじゃないか。.....女子が2人だぞ。男子は君だけだぞこの部活には。まさにハーレムじゃないか。絶対にオススメするが、と言ってくる。
うん?ハーレムってか.....え?
「出来立ての部活だよな?立ち上げたての。.....何でお前しか居ないんだ?他は?他には3人は居るだろ。何処に行った?」
「.....うーむ。他の部員には逃げられてしまってね。.....私が頭が良すぎるという事でね.....だからショックには近いね」
「ああ.....それはご愁傷様だな.....」
「.....そうだな.....だから君達に入ってほしい」
「ユニ。それとこれとは.....」
「おにーたん♡入って♡」
「.....ユニ。お前.....」
何でもかんでもそうすれば良いってもんじゃーない。
俺は考えて言いながら.....ジト目でユニを見る。
ユニは、ふむ、と煌めいた顔を止めた。
それから、君は外道かね。こんな事をさせても入らないとは、と言う。
外道って.....。
「おにーさん。入ってあげましょうよ。可哀想ですユニさんが」
「.....まあそうだけど.....俺部活苦手なんだよ」
「おにーたん」
「.....ユニ.....お前は.....」
肝心な時におにーたんは止めろ。
無駄に可愛いしな!!!!!
俺は頭を掻きながら、分かった。入るよ、と言う。
半ばもうヤケクソ気味だった。
するとユニは、流石だ。それでこそ君だ、と話す。
「そうなると.....憂さん。君はゆっくりで良いから」
「はい」
「.....え?おかしくね.....?」
「何もおかしくはないぞ?何がおかしいんだ」
「.....」
何で憂ちゃんはゆっくりで。
そして俺は今この時に強制的に決めさせられた.....?
意味が分からんぞ。
シュプレヒコールに値する。
思いながら眉を顰めていると。
「.....君は私の唯一の友人だから、だ。そういう事だよ。小路」
「.....納得がいかない.....」
「まあまあ。良いじゃないか。ははは」
そして俺達はそのまま部室にやって来る。
所謂椅子が、机が折り重なった内部だった。
廃部しただけあるな、とそんな思いが湧いてくる。
そんな教室の一角に.....科学用品が置かれていた。
漫画じゃなくて印刷した論文なども.....だ。
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