第4話 兄妹らしい事

憂ちゃんは.....結構複雑な人生を歩んで来たんだな、と思う。

俺は考えながら憂ちゃんの仕事を手伝ってからリビングで勉強する。

時折、ラノベも読んでいると。

おにーさん、と優しげな声がした。


「何を読んでいるんですか?」


「何かといえばそうだな.....恋愛もの?だな」


俺はカバーを嵌めているラノベを見る。

それから憂ちゃんを見た。

憂ちゃんは隣に座る。


髪の毛の.....というか女子の良い香りが鼻についた。

うぐ。

俺は赤面するのを必死に抑える。

そうしていると憂ちゃんはとんでもない事を言った。

ニヤッとしながら。


「なるほどなるほど。おにーさんはもしやえっちなものを読んでいるんですね?」


「ラブコメの全てがそうだとは限らんぜよ」


「まあ確かにそうですが。でもおにーさんはえっちなものを読んでいそうですから」


「そりゃ偏見だ」


おにーさんですもの。

極端なえっちなものを考えてそうです、とニヤニヤする憂ちゃん。

それから口元に手を添える。


俺は、揶揄うなよ、と言いながら憂ちゃんを見ていると。

憂ちゃんがいきなり俺のラノベを、えいっ、と取り上げた。

それから慌てる俺を他所に憂ちゃんは、どれどれ?、と読む。


内容としては記憶障害の少女と少年の結婚までを綴った小説である。

特にえっちではない小説。

憂ちゃんは目を丸くしながら熱心に読み始めた。


俺はその姿を見ながら、興味あるの?、と聞いてみる。

すると憂ちゃんは、面白いラノベは興味が沸きますね、と答える。

それから、でも意外ですね。えっちなもの大好き好き好きなのかと思っていました、と笑みを浮かべる憂ちゃん。


「私は.....あまりえっちなもの、事は好きでは無いのです。以前の人がまあ盗撮魔だったのもあるので」


「そうなんだ.....」


「はい。でもまあおにーさんなら話は別ですよ?アハハ。だって私を大切に思ってくれたりしてくれますしね。とても.....居心地が良いです」


「.....」


「.....おにーさんは一緒に居て心地良い存在です」


ボッと赤面しながら言葉に反応する。

憂ちゃんは笑顔を浮かべながら俺を見ていた。

そして、兄妹の関わりってのはこういうのを言うのかもですね、とラノベを手元に置いてから.....俺を柔和に見てくる。

俺はその言葉に、そうだな、と同じ様に笑みを浮かべる。


「おにーさん。これから宜しくです」


「.....此方こそ。宜しくね」


「.....ところでおにーさん。.....お風呂の順番ですが.....どうします?」


「.....あ.....それは.....どうしたものかなやっぱり君に先に.....」


「ほほう。私の入った残り汁で.....何かしたいと?」


「.....」


俺はワタワタする。

それから憂ちゃんを見る。

憂ちゃんは、冗談です、とニコッとした。

そして立ち上がる。

そうしてから俺をニヤッとして見てくる。


「それか兄妹として一緒に入りますか?」


「.....な!?」


「勿論それも冗談です。.....会ったばかりの人にそんな事しないですよ」


「そ、そうだね.....良かったよ」


それからニヤニヤする憂ちゃんを見る。

俺は後頭部を掻いた。

そして憂ちゃんは、ちょっとだけ片付けをしてきますね、とウインクする。

その姿にドキッとしながら俺は、やれやれ、と思った。



(ゴメン。クロイツ)


(遅いねぇ。もしかして例の人と話していたの?)


(そうだね。ちょっと疲れるけど)


(それはどんな風に?)


それはえっと。言えないかもしれない、と書く。

すると、えー。ギル怪しいなぁ、と文章が打たれた。

俺はその言葉にダラダラ汗を流す。

そうしていると、まあ良いけど、と文章が打たれる。

そして、じゃあまた狩りに行こうか、と文章が打たれる。


(曖昧ではぐらかされた部分もあるけど)


(そ、そうだね。さっきはすまない)


(そうだねー)


(.....クロイツ。おこなのか?)


(別にー。怒ってないけど?)


そんな感じで会話をしながら俺達は宿から外に出る。

それからいつもの通りタワー攻略に出る為に街の門が開くのを待っていると。

ギルは、と文章が打たれた。


そうしてから、僕と結婚して良かった?、と書いてくる。

俺は、うん。当たり前だよ、と書く。

何を聞いてくるんだ。


(それってどれぐらい良かった?)


(え.....えっと.....宇宙一)


(そっか。有難うね。ギル)


(.....いや突然何を聞いてくるんだ?)


(ううん。.....気になったから。僕と結婚なんかして良かったのかな、ってね)


(後悔はないよ。.....全然ね。.....寧ろクロイツは?)


その言葉に柔和になるクロイツ。

僕は勿論良かったに決まっている。

だからこそ君と幸せになりたい。

君の事を尊敬しているし.....感謝の日々だって思うから、と話すクロイツ。

俺は平然と話すその姿に少しだけ赤くなる。


(クロイツ。本当に有難うな。これからもずっと宜しくな)


(そうだね。.....これからも宜しく。ギル)


それから笑みを浮かべるクロイツを見る俺。

全く良い女性だと思うよ。

正直.....ゲーム内で女性アバターだったらマジに直ぐに拾われていただろう。

思いながら俺は気付かれない様に門が開かれて俺を見てくる相棒を見た。

クロイツは俺に手を広げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る